大分県立芸文短大講師の白石さん、日本彫刻会展で最高賞【大分県】

日本彫刻会展で最高賞を受賞した白石恵里さん=大分市上野丘東の県立芸術文化短期大
日本彫刻会展で最高位の西望賞に選ばれた作品「群烏」

 【大分】大分市の県立芸術文化短期大講師、白石恵里さん(36)の作品が、東京都美術館で19日から始まる第52回日本彫刻会展で最高位の西望賞を受賞した。国内最大の彫刻公募展。主催の日本彫刻会は「県在住者の西望賞は初めてではないか」という。期待の若手作家として注目されている白石さんは「彫刻は直接触れることのできる芸術。もっと身近な存在として楽しんでほしい」と願う。

 全国から261点の応募があった。受賞作「群烏(むらがらす)」は高さ約1.8メートルの塑像。審査員は「両手を額に当てたポーズと、その上になぜか鳥が舞い降りているというモチーフのユニークさ。優れた表現力がなければ彫刻としては成立し得ない造作で、力量の確かさを納得させた」と講評した。

 吉報は先輩彫刻家から電話で届いた。「自分はまだまだと思っていたので、おめでとうと言われ、何のことですかと聞き返してしまった」と苦笑する。出品するからには、いい作品にしたいという思いはあった。

 人間と動物が霧のように境界なく溶け合っていく―そんなイメージを立体でどう表現するか。作っては壊しを繰り返し、スランプに陥った。「試行錯誤の過程で生まれた造形。受賞に驚くと同時に苦しんだかいがあったとホッとしました」。展示は5月2日まで。

 福岡県鞍手町出身。実家の田んぼや畑で土遊びに熱中したのが彫刻の原体験。高校の芸術コースで油絵を学び、佐賀大、同大学院で彫塑を専攻した。

 卒業後はアルバイトをしながら実家の軒先で制作に励む日々。福岡県内の小中高校の非常勤講師や大学の助手を経て、2021年に大分県立芸文短大へ。昨年は同短大専攻科の学生を日展の特選に導いた。自身も28歳までに2度、異例の若さで日展特選を受賞している。

 現在は同短大の長期休暇中に集中して制作。はかなげな表情を見せる思春期の少年少女、筋骨隆々の男性など作風は多彩だ。「粘土をこねているとワクワクする。自分の課題と向き合いながら挑戦を続けたい」と思いを新たにしている。

<メモ>

 日本彫刻会は1947年、豊後大野市朝地町出身の朝倉文夫、長崎市の平和祈念像を手がけた北村西望らを中心に日本彫刻家連盟として発足。西望賞は、北村が寄贈した基金により創設された賞で、最も優れた作品に贈られる。

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