51号車にブレーキトラブル発生。フェラーリ、ダブル表彰台逃すも「ポジティブに捉える」/WEC第2戦

 フェラーリのGTおよびスポーツカーレース&テストマネージャーは、フェラーリ・AFコルセがWEC世界耐久選手権第2戦『ポルティマオ6時間レース』で1台のマシンにブレーキトラブルを抱えダブルポディウム・フィニッシュの可能性を逃したものの、もう1台が2位になったことについて「ポジティブに捉えるべき」だと評価した。

 ミゲル・モリーナ、ニクラス・ニールセン、アントニオ・フオコがドライブする50号車フェラーリ499Pは、4月16日(日)にポルトガルのアルガルベ国際サーキットで行われたWEC第2戦で総合2位となり、開幕戦セブリング1000マイルでの総合3位を上回るリザルトを得た。

 フェラーリ・AFコルセは、このポルティマオ6時間のレース中にライバルの7号車トヨタGR010ハイブリッドがトルクセンサーのトラブルによるドライブシャフト交換を強いられたあと、2台のフェラーリ499Pで表彰台の2枠を確保する構えだった。

 しかし、アントニオ・ジョビナッツィ、ジェームス・カラド、アレッサンドロ・ピエール・グイディがドライブする51号車は、BBW(ブレーキ・バイ・ワイヤ)システムに問題が発生したため3番手のポジションを失った。

 この問題は3時間目に発生。以後レース終了まで解決されることがなかったため、フェラーリと順位を争っていたポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963は、WECハイパーカークラスで初となる表彰台を獲得することができた。

「私たちは2台のクルマが揃ってレースを終えるために保守的なアプローチをとっていた」と語るのは、フェラーリのGTおよびスポーツカーレース&テストマネージャーを務めるジュリアーノ・サルヴィだ。

「この問題がなければ、(2台とも)表彰台に上っていただろう。それは2位・3位という、並外れた結果になっていたはずだ」

「残念ながら達成できなかったが、私たちは50号車の2位というポジションをポジティブに受け止めるとともに、信頼性の問題を解決する必要がある」

 サルヴィは、51号車のブレーキ温度が予想外に上昇したため、フェラーリがブレーキ・バイ・ワイヤシステムを停止させたと説明した。

「ブレーキ・バイ・ワイヤが作動していない部分を回復させるために、油圧システムをより多く作動させたんだ」とサルヴィ。

「我々はクルマの中でできることをやろうとしていた。その結果、ブレーキに負担がかかり、ピットストップではブレーキダストが目立つことになった」

 このトラブルのなかでジョビナッツィはペースを失い、6号車ポルシェのケビン・エストーレに追いつかれてしまう。そして残り2時間半の段階で、3番手の座をライバルに譲ることとなった。

 レース後半、ピエール・グイディはヘアピンのブレーキングゾーンでトラブルに見舞われ、ターン5のランオフに深く突っ込んだ。この時点で51号車のブレーキの一部は限界に達していたが、GTEプロチャンピオンはその後も走行を続け6位でチェッカーフラッグを受けた。

 サルヴィは「セブリングは信頼性という点ではクリーンなレースだったが、(今回は)残念ながら51号車のブレーキシステムに問題があった」と語った。

「そのため、私たちは3時間目から(ブレーキシステムを)マネジメントする必要があった」

「正直に言って本当に大変だった。当時は完走のチャンスがあるかどうかさえもわからない状態だったんだ。しかし、そんななかでもチームは非常にうまく機能した。なぜなら、私たちは戦略やリカバリーシステムをすべて使ってフィニッシュまで導いたからだ。グループとして、とてもうまく機能していた」

「最後にアレッサンドロ(・ピエール・グイディ)はブレーキの限界に達していたが、それは彼のミスではなかった」

トヨタ7号車の脱落後、総合2・3番手を走行していた2台のフェラーリ499P 2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レース

■セブリングと“正反対のアプローチ”

 WECハイパーカーのニューカマーであるフェラーリは、セブリングでレースペースに苦しんだ後、デビュー2戦目となったポルティマオでのレースでタイヤマネジメントの分野で以前と異なるアプローチをとった。

 フェラーリ・AFコルセは、2台ともミシュランのハイパーカー用コンパウンドの中でもっとも硬いミディアムのみを使用してレースを終えた。これはスティント中のペースをより安定させるというターゲットの一環に基づいて採られた戦略だ。

 サルヴィは「(グリップ性能の)崖のようなものを作ったり、タイヤを諦めたりしないようにした」と述べた。

「私たちはノーデグ(デグラデーションを起こさないこと)を実現するために、以前とまったく逆のアプローチを採ることにした。今にして思えば、最初からそのことを理解する必要があったのかもしれないが、我々は反対側に進んでしまった」

「クルマを走らせるたび、我々は何かを学ぶことができる。セブリングでは、おそらくタイヤを充分に労ることができなかった。ここではレース中にもっとプッシュできたかもしれない」

「我々はポルティマオのトラックで非常に重要な左フロントをケアしようとしていた」

「最終的には、もう少しプッシュできたかもしれない。確かにシステム面ではまだまだ改善しなければならないことがたくさんある」

 フェラーリの競争力を評価したサルヴィは、「2位は素晴らしい結果だ。我々はトヨタのレベルには達していないが、マシンを学び改善する必要があることは分かっている」と続けた。

「このクルマは本当に若い。セブリングに比べるとまた一歩前進したと言えるだろう」

2位表彰台を獲得した50号車フェラーリ499Pのアントニオ・フォコ/ニクラス・ニールセン/ミゲル・モリーナ組 2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レース

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