金沢市内に自生している春の野草をかき集めて天ぷらを作ってみた

世界的な食糧危機が叫ばれる昨今、フードロスや昆虫食などの問題が世間をにぎわせています。なかでも深刻なのが物価上昇に伴う農産物の価格高騰。果たしてスーパーの野菜売場で値札とにらめっこする日々はいつまで続くのか。もしかすると近い将来、犬の小便がかかった野草でさえも奪い合う日が来るのではないか。そんなサバイバルな未来を危惧するヨシヲカが「食べられる野草」を探す旅に出ます。

街チカにある森の中でハンティング開始!

こんにちは、ライターのヨシヲカです。みなさん、ここがどこだか分かりますか?

僕は分かりません!

なぜなら自然に詳しい友人に「食べられる野草を探しに行きたい」と申し出たところ、この場所に連れて来られたからです。ただ、兼六園あたりから車で20分位だったので、そんなに山奥ではないはず。近くには集落も見えました。それにしても空気が澄んでいて、気持ちが良いなぁ〜。

伊奈:あっ、タラの芽だ。これ美味しいっすよね〜。

こちらが自然に詳しい友人の伊奈氏。ガキの頃から植物と昆虫好きだったのがコロナ禍でさらに拍車がかかり、ひまさえあれば野山に入って野草や昆虫をディグする日々。キャンプ場で捕まえたバッタを「エビっぽくて美味いんですよね」なんて言いながらバリボリ食べる野生児です。今回は助っ人として同行してもらいました。

伊奈:ちょっと1週間早かったかも知れないっすね。

ヨシヲカ:4月の上旬にしては、ちょっと肌寒いもんね。君は半袖だけど。

伊奈:野草採りは来週あたりがベストな気がします。ほら、これとかも今から芽吹く感じだし。

ヨシヲカ:春の訪れって感じだね。

伊奈:それでもタラの芽は結構生えてますね。天ぷらにするには十分採れると思いますよ。

ヨシヲカ:ほかにも食べられる野草は採れないかな?

伊奈:あっ、これも食べられますよ。

ヨシヲカ:これはなんて植物なの?

伊奈:カンゾウっすね。おひたしにすると美味しいんですよ。

ヨシヲカ:カンゾウってあの漢方に使うやつ?

伊奈:それは甘草っすね。名前は一緒だけどまったく別物です。

ヨシヲカ:そうなんだ。

伊奈:あっ、アッチにもなにかある。

ヨシヲカ:これは?

伊奈:ニワトコっすね。たくさんの量だと腹をこわすけど、これも食べられます。

ヨシヲカ:ほぇ〜。それだけ知識があると、食いっぱぐれる心配はなさそうだね。

伊奈:まぁ、歩く分カロリーは消費しますけどね。

ヨシヲカ:たしかに反芻動物でもない限り、野草だけで暮らしていくのは無理か。

伊奈:でも、趣味としてはいいっすよ。お金もかからないし。もうちょっと温かくなったら河川敷とか近所の公園とかにも食べられる野草が生えてくるんで、探してみてくださいよ。

ヨシヲカ:そういえば軍手とスーパーの袋しか持ってきてないけど良かったかな?

伊奈:大丈夫っす。お金だけじゃなくて準備もいらないのが野草採りの魅力なんで。

ヨシヲカ:コスパだけじゃなくてタイパも兼ね備えてるのか。それにしてもなんでこんな場所知ってるの?

伊奈:このあたりを自転車で走ってたら、山菜生えてるのが見えたんですよ。

ヨシヲカ:これが本当のエクストリーム山菜採りってやつか(笑)

エクストリーム山菜採りとは?…自転車ロードレース中の山岳ステージでコースアウトすることを指す。下り坂でスパートしている最中に起きやすい(出典:ニコニコ大百科

食べると危険!摘み取る野草選びは慎重に

ヨシヲカ:あっ、ゼンマイだ!しかもたくさん。

伊奈:……(調査中)。

ヨシヲカ:やった〜!採ったど〜!

伊奈:う〜ん、たぶん違いますね。

ヨシヲカ:えっ、そうなの?

伊奈:ゼンマイと同じシダの一種なんですけど、ゼンマイでは無いですね。コゴミでも無さそうだし、よく分からないんでやめときましょ。きっと食べてもマズいっすよ

伊奈:これとかもタラの芽に似てるけど、ヤマウルシといって毒性があるんですよ。

ヨシヲカ:ウルシって漆のことだよね?口の中がかぶれそう…。

伊奈:試しにかじってみます?

ヨシヲカ:いや、やめておきます。

伊奈氏曰く、図鑑などの正しい知識をもとに採取して、判別が難しいものは無理せずスルーするのが吉とのこと。野草採りにおいて自然毒に対するリスクマネジメントは必要不可欠。皆さんも採取に出かける際はくれぐれも自己責任でお願いします。

ヨシヲカ:これはなんだろう。食べられるのかGoogleレンズで調べてみよっと。

伊奈:どうでした?

ヨシヲカ:う〜ん、なんか色々と出てきたけど、これとは違う植物のような…。

伊奈:僕も試してみたことあるんですけど、実際の植物名とは違う検索結果が出ることが多いんですよね。

ヨシヲカ:さすがのGoogle先生でも、完全に信頼するにはまだまだ精度に不安ありか。

伊奈:口に入れるものなので、そこらへんはシビアにいきましょう。

場所を移動して更なる収穫を目指す!

先ほどの森で山菜は十分すぎるほど採れたので、食べられる野草を狙って場所をチェンジ。伊奈氏もちょいちょい訪れるという、山環沿いの遊歩道を散策してみました。

伊奈:あっ、さっそく見つけた〜!

ヨシヲカ:えっ、なにこれ。ネギみたいな匂いがする。

伊奈:これはアサツキっすね。そばとかの薬味に使われることが多いかな。

ヨシヲカ:スーパーでも売られてるやつだ。こんなのが道端に自生しているなんて驚きだよ。

伊奈:あっちにもっと驚くのが生えてますよ。

伊奈:ダイコンっす。

ヨシヲカ:うわー!なんでこんな所にダイコンが生えてるの?

伊奈:どうしてでしょうね?このあたりの畑から種が飛んできてるのかな?浜大根にしては海から遠い気がするし。

ヨシヲカ:ダイコンは”すずしろ”といって、春の七草にも数えられるれっきとした野草なんだよね。

伊奈:それにしても立派なサイズっすね。

ヨシヲカ:こんなにでっかいダイコン持って歩いてたら畑泥棒と間違われちゃうよ。早く帰ろう!

そんなわけで今回収穫した野草と山菜がこちら!

左上から…

・ニワトコ

・アサツキ

・カンゾウ

・カタハ(ミズブキ)

・タラの芽
・ワラビに似たなにか

・ダイコン

・セリ

・クレソン

・コシアブラ
・タンポポ

あくまで我々の見立てなので、間違ったものもあるかもしれません。それにしても時期が早かったにも関わらず、2時間弱の散策でこれだけの野草と山菜が採れるとは、大成功と言っても良いでしょう。それではさっそくこれらの11種類を天ぷらにしてみたいと思います。

いよいよ実食!その味やいかに?

トップバッターは山菜の王様・タラの芽。揚げる前に食感の悪い袴(はかま)の部分を手でむき取っています。根元に十字で切れ込みを入れると、火の通りが均一になって美味しいみたいですね。

180℃ほどの油でカラッと揚げるのがポイント。あまり揚げすぎるとせっかくの食感と風味が台無しになるので、泡が小さくなる1分半を目安に揚げてください。ちなみに天ぷらの衣は市販のものを使っています。

続いてはかき揚げにチャレンジ。ダイコンの葉っぱ、ニワトコ、セリ、クレソン、タンポポを衣にくぐらせて、これまた180℃ほどの油に落とし入れます。おたまを使ってさっと滑らせるように一気に落とすと、形が崩れにくいですよ。

輪切りにした大根やコシアブラなども揚げていきます。

そして、完成したのが…。

どーん!

ホクホクと美味しいタラの芽に、辛味の効いたワイルドな味わいの大根、野趣あふれまくりのかき揚げと、そこらの道端でかき集めたものとは思えない天ぷらの盛り合わせ。これがほぼ材料費ゼロで楽しめるなんて、自然の恵みに感謝ですね。

ちなみに筆者が一番美味しいと感じたのはコシアブラ。タラの芽よりもあっさりと爽やかな春の訪れを感じる味わいで、さすが山菜の女王と呼ばれるだけあります。

カンゾウとカタハの茎はおひたしにして酢味噌でいただきました。ともにクセのないさっぱりとした味で、純米酒のアテにちょうど良い塩梅です。

まとめ

今回の検証で確認できたのは、金沢市内でも思った以上にたくさんの野草が採れるということ。そんでもって普通に美味しい!今のうちに野草の知識を蓄えておけば、サバイバルな未来を豊かに生き抜ける気がして安堵したのでした。

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(撮影/林 賢一郎)

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