TGR WRCチャレンジプログラム2期生がイタリアのターマックラリーに参戦。山本雄紀が6位完走

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である山本雄紀、小暮ひかる、大竹直生が4月14~15日にイタリアで開催されたターマック(舗装路)ラリー『ラリー・レジオーネピエモンテ』に参戦した。ラリー4クラスに参戦した3名は、山本がクラス6位、大竹は同15位でフィニッシュ、小暮はリタイアという結果になっている。

 山本、小暮、大竹の3名にとって、2022年9月にイタリアで参戦した『ラリー・サンマルティーノ』以来3度目のターマックイベントへの挑戦となった今回の『ラリー・レジオーネピエモンテ』。これまでは『ラリー・ディ・アルバ』という大会名で知られていたこのラリーは、今回イタリアラリー選手権およびTERツアー・ヨーロッパ・ラリーシリーズの1戦として開催され、3人の若手ラリーストはより一層厳しい競争を戦い抜くこととなった。

 今大会はイタリア北西部のピエモンテ州を舞台に2日間で計8本、都合101.02kmのスペシャルステージ(SS)で争われることになっていたが、スケジュールの遅れにより、ラリー4クラスの車両は最後のふたつのステージを走行せず競技終了となっている。

 金曜日の短いSS1をクラス11番手でスタートした山本/ミイカ・テイスコネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)は、土曜日に行われたSS2で21台のラリー4マシンが走行するなか、クラス6番手まで浮上。その後のステージでも一貫したペースで常に7番手以内のタイムを記録し、クラス6位のポジションをフィニッシュまで守り切ることに成功した。

 一方、初日のSS1で3組中トップのクラス7番手でラリーをスタートした小暮/トピ・ルフティネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)は、SS3までクラス7番手をキープし山本のすぐ後ろにつけていたものの、SS4でパンクに見舞われてしまう。その後ステージの途中で発生したドライブシャフトの破損によりラリー続行を断念。リタイアを余儀なくされた。

 大竹/マルコ・サルミネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)はデイ2のSS2終了時点で山本、小暮に続くクラス8番手につけていたが、その後パンクに見舞われたことで約4分のタイムロスを喫した。同ペアはこのトラブルに屈することなく、その日の午後にはペースを取り戻し、SS5、6ではクラス9番手タイムを記録。最終的にクラス15位でフィニッシュしラリーを走り切った。

 久しぶりのターマックラリーに対してクレバーなアプローチができていたと語ったのは、プログラムのチーフインストラクターとして山本、小暮、大竹の3名を指導しているミッコ・ヒルボネンだ。WRC世界ラリー選手権で通算15勝を挙げているフィンランド人は3人の生徒たちの戦いを次のように評価している。

「山本は冬のラリーに引き続きとても良いラリーになったね。地元のドライバーは道を熟知していてとても速いから、彼らに対抗するのはとてもタフなんだ。それでも山本は競争力あるスピードで最後まで走り切った」

「小暮は不運だった。サーキットでのバックグラウンドがある彼はターマックラリーをとても楽しみにしていたし、我々も彼の自信を感じ取ることができたんだ。リタイアを余儀なくされたのは残念だが、走れたステージではスピードを見せてくれたし、今回のラリーでより自信をつけてくれるといいね」

「大竹も少し不運だったが、パンクの後は戦いに復帰して全ステージを走り切ることができたので良い経験になったはずだ。遅延によるステージキャンセルで望んでいた走行マイレージは得られなかったが、ドライビングについては3人とも非常にポジティブな週末だった」

ドライブシャフトの破損によりリタイアを余儀なくされた小暮ひかる/トピ・ルフティネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)
大竹直生/マルコ・サルミネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)はパンクに見舞われながらもクラス15位で完走を果たした

## ■TGR WRCチャレンジ2期生コメント全文

●山本雄紀(ルノー・クリオ・ラリー4/クラス6位)

「とてもポジティブなラリーとなりました。また新しい経験でしたが、良いペースで走れたのでよかったです」

「今回のラリーではインカットが必要なコーナーがたくさんありましたが、自分たちが昨年参戦したラリーではあまりそのような場所がありませんでした。自分のペースノートに『カット』が入っていなかった場所にも前走車のカットしたラインがあり、そこに自分のラインをいかに合わせていくのかが一番のチャレンジでした」

「今回は序盤からペースはかなり良かったので、そのペースを貫きナチュラルなドライビングを心がけました。うまくいってとても嬉しいです」

●大竹直生(ルノー・クリオ・ラリー4/クラス15位)

「久しぶりのターマックラリーで、自分にとってはまず完走することが一番だったのでそこについては満足しています。土曜日の朝、最初のSS2に入る前のロードセクションでスローパンクチャーがあり、タイヤ交換をしました。そしてステージ上でまたパンクをしてしまい、SS3ではその前に交換したタイヤを再度使わざるを得ませんでした。ですが、そのタイヤではSS3の最後までもたず、多くのタイムを失うことになりました」

「それ以降のドライビングに関しては悪くなかったと思います。リスクとタイムの良いバランスを取ることが難しく、少し慎重になりすぎたセクションもありましたが、良いセクションもあったと思っています」

「インカットするコーナーでとても大きい石があって注意が必要な場面もありましたし、今回は路面のコンディションをどのように感じとるべきかを多く学び、良い経験になりました」

●小暮ひかる(ルノー・クリオ・ラリー4/リタイア)

「たくさん雪の路面を走ってきたあと、ふたたび舗装路のラリーを走ることをとても楽しみにしていました。事前テストでとても良いフィーリングを得られ、シェイクダウンや序盤のステージもそれが続き、ペースノートやすべてのことが順調でした」

「残念ながらSS4の途中でパンクをし、その数百メートル後にトラブルが発生してリタイアとなりました。それほど高速ではなく、テクニカルなセクションがあるなど、日本のステージと似ていると感じたので自信を持って走ることができました。ただ、いくつかのコーナーで内側に尖った石があり、インカットすべきかどうかの判断が難しかったです。とても良い学びの機会となりました」

 TGR WRCチャレンジプログラムは次戦、トレーニングの場を未舗装路へ移し2023年初のグラベル(未舗装路)ラリーに挑む。プログラム2期生の3名は、5月19日~21日に開催されるERCヨーロッパ・ラリー選手権の一戦『ラリー・ポーランド』に参戦予定だ。

クラス6位完走を果たしたTGR WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀 2023年ラリー・レジオーネピエモンテ

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