倉敷発の人工魚礁 メキシコ設置へ 生態系再生図る「興味深い試み」

海上に浮かぶブイの上から人工魚礁を視察するメキシコの漁業関係者ら=19日、笠岡市・白石島

 漁獲量の減少が深刻なメキシコのカリフォルニア湾に5月、倉敷市の企業が開発した人工魚礁200基が設置されることになった。網かごに貝殻を詰めた構造で、魚介類のすみかをつくって生態系の再生を図る。海外での採用は初めて。設置を控えた19日、同国の漁業関係者らが岡山県内の設置場所である笠岡諸島・白石島沖を視察した。

 人工魚礁は、カキ殻などを詰めた際にできる隙間にゴカイやカニといった魚の餌をすみつかせ、多様な生物を育む仕組み。設計・製造する海洋建設(倉敷市大畠)が1994年に開発し、国内各地の海に計1万5千基を設置している。

 今回導入するのは同湾に面したラパス市の沖。国際協力機構(JICA)の途上国支援事業に採択されており、2017年からの実証試験が良好だったことから本格採用となった。一辺75センチの立方体型で、貝漁が盛んなラパス市で廃棄されるホタテやカキの殻を詰める。事業費は約1億円。

 JICAによると、同市がある州では、乱獲や気候変動などの影響でイワシやブリなどの水揚げが08~14年の6年間で27%も減少。約800種ある魚類の約1割が絶滅の危機にひんしているという。

 視察には7人が訪れ、環境保護団体代表のアレッハンドロ・ロブレス・ゴンザレスさん(64)は「非常に興味深い試みで、ラパスの海にも合うはず」と述べた。案内した海洋建設の片山真基社長(48)は「新たな生態系保護のあり方として広く発信したい」と話した。

海洋建設が製造する人工魚礁。メキシコには部分改良して設置する

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