陸自ヘリ事故2週間 不安抱えつつ捜索活動を尊重 県、究明要請は慎重姿勢

 宮古島市沖で発生した陸上自衛隊ヘリコプター事故から20日で2週間が経過する。県内でも死亡が確認された隊員らしき5人を悼み、いまだ行方不明の隊員らの早急な捜索を望む声が大きい。一方、事故そのものに対する不安の声もある。県は人命や捜索活動を尊重する観点から、原因や再発防止を求める必要性は認識しつつ、そのタイミングを慎重に見極めている。

 事故を起こしたヘリコプターは6日午後3時46分に航空自衛隊宮古島分屯基地を離陸して10分後にレーダーから消失した。その2分前には下地島空港の管制と平常時の交信をしていたことから、防衛省は急激なトラブルがあったとみている。

 ヘリがレーダーから消えたのは伊良部島からわずか約3キロの地点で、宮古島や池間島にも囲まれた海域だった。それまでの間も、宮古島や池間島を海岸線に沿って飛んでいたとみられている。地元の小学校に設置された防犯カメラには低空で飛ぶヘリが映っている。急激なトラブルが民間地を飛んでいる時に発生した可能性はなかったのか、検証が求められる。

 ヘリが離陸した空自宮古島分屯基地は宮古島の中央にある。市民の一人は「ど真ん中にあるから、海に出ようとしたら陸地を飛んでいかないといけない」と不安を口にした。2019年に新設された陸自の宮古島駐屯地には離着陸帯がなく、陸自が航空機を使う際にも空自の分屯基地を使っている。

 県は従来、沖縄周辺で軍用機が事故を起こした際には抗議したり、遺憾の意を示したりしてきた。今回の事故について、玉城デニー知事は14日の定例会見で「一刻も早く搭乗者が発見・救助されることを心から祈っている」とし、政府への要請は「捜索の進展を見守りながら検討する」と慎重な姿勢を見せた。

 県幹部は事故の懸念や再発防止について「事故が大きすぎて言いづらい」と対応の難しさを口にした。

 県政与党県議の一人は「幹部も乗っており慎重に慎重を重ねて飛行していたはずで、それでも事故は起きた。陸地で事故が起きていれば、被害はさらに広がっていた」と指摘した。「南西諸島では弾薬を積んだ航空機が飛ぶことも想定される。考えれば考えるほど怖い。今はまだ、言いづらいが、事故を通じて懸念が高まったのは紛れもない事実だ」と危機感を示した。

 防衛省関係者は「現在は(隊員らを)心配してくれている人が多いが、落ち着いてくれば『何だったんだ』という不安の声は当然、出てくるだろう」と語った。地元感情への影響は事故の内容に左右されるだろうとの見方を示した。「不安の声に応えるためにも事故の実態解明につながる機体の引き上げや関連物の回収を急ぎたい」と話した。

 (明真南斗、知念征尚)

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