リアム・ギャラガー、AI生成の自身の声が使用された『AISIS』について好意的な反応

もしも英ロック・バンドのオアシスの、1995年から1997年にかけての初期メンバーが解散せずに音楽を作り続けていたとしたらどうなっていただろう?そんな疑問に、Breezer(ブリーザー)という英バンドが、新型コロナのパンデミック中に正面から向き合った『AISIS』(エーアイシス、Oasisは英語では“オーエーシス”と発音される)と題されたプロジェクトが話題だ。

ブリーザーは、オアシスの記念碑的な最初の3枚のアルバム、『デフィニトリー・メイビー』(1994年)、『モーニング・グローリー』(1995年)、そして『ビー・ヒア・ナウ』(1997年)が持つ、あらゆるものを一挙に取り込んだかのような象徴的なサウンドと激しさを不気味なほど模倣した8曲を書いて録音し、あとからオリジナルのシンガーの声をオアシスのボーカリスト、リアム・ギャラガーの声にAIで生成して置き換えた。

現地時間2023年4月14日にYouTubeに投稿された音源に添えられた説明文には、「“AISIS”は、(オアシスの)95年から97年のメンバーが音楽を書き続け、あるいは数年後に全員が集まって最初の3枚のアルバムのようなレコードを書き、そのセッションのマスターDATテープが表面化した、という代替現実コンセプト・アルバムだ」と書かれており、「オアシスの再結成を待つのに飽きたので、AIでモデリングされたリアム・ギャラガー(@JekSpekにインスパイアされた)に、2021年のロックダウン中に書かれた、短命だが大いに愛されたバンドBreezerの楽曲を手伝ってもらうことにした」と続いている。

今週、偽物のドレイクとザ・ウィークエンドによる楽曲がバズったものの、すぐにストリーミング・プラットフォームから削除されるなど、一部のレーベルやアーティストが自分たちの音楽のAIバージョンを止めようと慌てている中、気難しいことで知られるリアムは19日にファンから『AISIS』を聞いたか、どう思うか、などの質問に対し、意外にも好意的に答えた。リアムはTwitterで、「アルバムじゃなくて1曲だけ聴いたけど、世に出ている他の曲よりはいい」とファンに返信している。

さらに、コンピューターで作られたリアムについてのどう思うかとの質問に対しては、「ヤバいな、俺の声最高だな」と彼らしい答えを投稿している。彼の言葉どおり、オープニングの「Out of My Mind」や「Time」などの曲は、渦巻くギター、享楽的な激しさ、リアムの鼻にかかったボーカルなど、絶頂期のオアシスの特徴を完璧に捉えている。サイケデリックで騒がしい「Forever」と広がりのあるバラード「Tonight」では、ソングライター/ギタリスト/シンガーのノエル・ギャラガーによる詰め込み型アレンジとザ・ビートルズ・フェチが的確に再現され、潮騒の音やシタールのレイヤーや、モット・ザ・フープルによる故デヴィッド・ボウイ作の1972年の大ヒット曲「すべての若き野郎ども」への歌詞でのオマージュなど、全体的に完成度が高い仕上がりだ。

オアシスのファンなら誰でも知っているように、2009年にリアムが脱退して解散したバンドの実際の再結成は限りなく不可能に近いことから、もはやこの『AISIS』で満足するしかないのかもしれない。解散後、ノエルとリアムのギャラガー兄弟はそれぞれがソロ活動を続けているが、二人の険悪な関係は10年以上改善の兆しが見えていない。

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