漫才師に憧れNSC→1カ月で上半身裸「ウケたからいいや」 奇才・キャツミの展望「クセに頼りたくない」

お笑い芸人・キャツミ(23)が吉本興業のGWイベント「よしもと放課後クラブ in 万博記念公園」(5月5~6日、大阪・万博記念公園)に出演する。体を張った“チャレンジ芸”のほか、独学で習得したピアノ演奏など常識はずれの笑いを生み出す奇才。漫才師に憧れた若者はなぜ、現在の芸風に行き着いたのか、そして芸人人生のこれからを聞いた。

上半身裸に黄色い海パン。繰り出されるのは、食品用ラップなどのビニール製品に口の吸引力で穴を開けるといった型破りな大道芸。チャレンジ芸と称される芸風のルーツはNSC在学中にさかのぼる。

2018年春、高校を卒業したキャツミは「自分はしゃべくりの人間で、漫才師になれると思っていた」と現在のスタイルとかけ離れた志を持ってNSCに入学した。しかし、相方探しはことごとく失敗し「しゃべくりは無理やな」と自覚。1カ月後には、上半身裸でピンネタを披露していたという。

ネタは実家近くの神社に小道具を持ち込んで考えるスタイル。ある日、ラップを持ち込み「顔に巻いたら苦しくなって、息吸おうと思ったら、パンッて破れて。それが面白いと思って」とチャレンジ芸が生まれた。しゃべくり漫才師を志したはずが、入学から半年ほどで現在のスタイルを確立。「あんまりプライドがないというか、ウケたからこれでいいやみたいな」と笑いが生まれる方へ突っ走った。

NSC卒業からほどなく、その才能が大御所芸人の目にとまる。19年秋、今田耕司(57)が主催する「大阪芸人掘り出しライブ」に出演。今田が芸風はもちろん、キャツミの落ち着きのない挙動や首を振るクセにどハマり。「めっちゃ面白がってくれて、いじってくださった」と振り返った。それがきっかけで「新春大売り出し!さんまのまんま」内で今田が明石家さんま(67)にオススメ芸人を紹介するコーナーに出演した。

今田とはそれ以来、食事に連れて行ってもらう関係。芸事に関する金言も数多く授かったが「教わったはずなんですけど、覚えてないですね」と苦笑い。その代わり、鮮明に覚えているのは「お酒をついだ時に氷が見えなくなったら、それはいい氷や」という一言。周りの景色も含めて鮮明に記憶しており「めっちゃ綺麗な丸い氷やったんで…」と頭をかいた。キャツミいわく、あまりの綺麗さに見とれ、金言は上書きされてしまったという。

琴線に触れた時の記憶力や集中力は常人離れしたものがあるキャツミ。それが意外な形で爆発したのが、コロナ禍の自粛生活で本格的に取り組み始めたピアノだ。

独学ゆえに指の動かし方もめちゃくちゃで、いまだに楽譜すら読めないが「記憶しているというか、指が覚えてて勝手に動く感じ」とクラシックを中心に次々と習得。TBS系「ラヴィット!」などで取り上げられ、注目を浴びた。現在は超難曲「ラ・カンパネラ」に挑戦中で、進捗(しんちょく)は50%ほど。今田からも「絶対に弾けるようになったほうがいい」とアドバイスを受けたことをなんとか思い出した。

芸歴は5年目。これまでの芸人人生を「30~40点」と振り返り「ネタを頑張りたい」と気合を込めた。しかし、いまだ届かない「R-1グランプリ」決勝が最大の目標かと思えば、それは少し違うらしい。

キャツミは「R-1はもちろん優勝したいですけど、それよりも、どうにかしてクセを直したいですね」と話した。世に出るきっかけにもなったクセ。今田含め、芸人の先輩からはそろって「直さなくていい」と助言されているが、「武器やとは今も思ってないですね。クセに頼りたくない」とキャツミの意志は固い。「5年後には『R-1優勝』と『クセ、直りました!』を今田さんに報告できていれば」とクセからの脱却を目論む日々が幕を開けている。

◆キャツミ 1999年5月20日生まれ。兵庫県宝塚市出身。吉本興業所属。高校3年生で突然思い立ち、芸人の道へ。2018年、NSC41期に入学。卒業後すぐに体を張ったチャレンジ芸が注目され、日本テレビ系「ウチのガヤがすみません!」などに出演。憧れの芸人は島田紳助さんや千鳥を経て、現在はハリウッドザコシショウ。特技はペン回し、ギター、ピアノ。身長166センチ。血液型A。

(よろず~ニュース・藤丸 紘生)

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