北海道大学発ベンチャー特集 AIに農業スーツに宇宙!?成長の原動力は?

今回は北海道大学発のベンチャー・スタートアップ企業を特集する。今、大学側が認定しているものとしては合わせて37の企業がある。

分野はさまざまで、実績を重ね、成長を続けている企業も多い。いくつかの事例を通じて大学発ベンチャーの可能性を探っていく。

【AI×デジタルサイネージで小売店を改善】

サツドラ北8条店。店に入るとまず目に入るのが、デジタルサイネージ。

よく見てみると…画面の上にカメラがついている。

このカメラを手掛けているのが、北大発ベンチャーの「AWL」。AIを使い、このカメラを通じて得られた情報から客の行動を分析し、店づくりに役立てている。

試しに中村アナがカメラの前に立ってみると…。年齢や、サイネージを見ているかどうかなどが分析されている。撮影した情報はプライバシー保護のため、分析後に消去される。

こうした分析を踏まえ、子どもが多い時間はお菓子の広告を多く流したり、店に並べる商品の種類を変えたりと店の改善につなげている。

AWLはAIカメラを使ったデジタルサイネージのシステムを広げる計画で、すでに東京の企業と提携し、全国の約1万台のエレベーターに導入することも決まっている。

AWLの土田CTOは、「AIカメラが活躍できる場面は多いと思う。最近話題の飲食店テロを防ぐことなどにも使えるかもしれない」と話した。

【体の負担を軽減する“スマートスーツ”】

北大大学院情報科学研究院の田中教授は、筋力の補助と体を安定化させる研究を行っている。そして生まれたのが、スマートスーツだ。

背中のゴムの収縮で筋力を補助し、その動きと連動して腰回りのベルトが締まり、体を安定させる。実際にスマートスーツを着用して介護現場を想定した動きをしてみると、その違いをはっきりと感じとることができた。

介護現場を想定した作業。腰に負担がかかる

ただ、筋力を補助する機能は、あえて25%程度に留めている。これ以上負担を軽くすると、体の筋力が弱まってしまう恐れもあるからだ。

スマートサポートの鈴木社長は「農業コンサルタントをしているが、農家は腰痛で困っている人が多い。何とかしたいと思った」と開発のきっかけを振り返る。

すると、農家だけでなく、介護現場や建設現場でもニーズがあると分かり、これまで1万着ほどを販売した。

高橋社長は「腰痛になってからではなく、予防としても使ってほしい。そういう意味ではユニフォームに組み入れることで、自然と広まりやすくなるのではないか」と話す。

【安全なプラスチックをエンジンの燃料に!?】

北大ベンチャーの「レタラ」。エンジンの燃料を開発している。事務所を訪れると、この部屋の中にその燃料があるという。

見せてくれたのは、白いプラスチック。ケンプス・ランドンCEOは「一般的なエンジンの燃料は危険性が高い。安全な燃料をつくりたかった」と話す。

安全性だけでなく、コストを抑えられる利点もあるという。すでに地上での実験には成功していて、今後宇宙空間でも使えるよう研究を進める考えだ。

【大学発ベンチャー 強みと課題は】

AWLの土田CTOは「大学には優れた技術がたくさんある。ビジネスとの組み合わせが重要だ」と話す。

番組コメンテーターの札幌新陽高校・赤司校長は「起業しやすい土壌づくりが重要だ」と話す。大学発ベンチャーとして横のつながりが生まれたり、身近な存在が成功していくことで心理的なハードルも下がるという。

優れた発想と技術力。北海道の大学発ベンチャーの数がより増えて、大きく成功する企業が多く生まれることに期待したい。
(2023年4月22日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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