公共施設に太陽光 企業が無償設置→自治体は電力賄い使用料 「PPA」各地に導入目指す/岡山

岡山県津山市山北に本社があるビル管理や新エネルギー事業「ガット」(美甘信吉社長)が同県新見市で進めている、太陽光のPPA(電力販売契約モデル)を導入して公共施設に整備した太陽光発電設備の稼働が始まった。2期目の事業もスタート。全国的に太陽光発電を導入する自治体は増えているが、PPAを導入する自治体はまだ少なく、同社は「モデルケースとして他の自治体への展開も目指したい」としている。

同社は新見市、新見公立大学と「ゼロカーボンに向けた協定」を昨年5月に締結。学校給食センターに整備した太陽光発電システムが3月に本格稼働を始めた。発電パネルは290枚を設置。年間約8万キロワットアワーを自家消費し、予測値で施設全体の電力の約18・6%をまかない、年間109万円の電気代(一般家庭22世帯分)削減につなげる。隣接するこども園にも電力を供給し、年間に使用する電力の約55・2%分をまかない、16・5万円の電気代を削減する。

新見公立大では体育館などに計613枚を設置。年間約26万キロワットアワーを自家消費する計画で、同大学で使用される電力の約3割を補い、電気代約250万円の削減につなげる。

2期目は浄水場・浄化センターにPPAを導入する。

「新見モデル」は環境省の「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備など導入推進事業」を活用しており、災害レジリエンス(回復力)対策を施し、施設の防災拠点としての機能を高めた。教育機関でのPPA導入は県内初で新見モデルを特徴づけた。

PPAは「電力販売契約」の意味で、企業や自治体の施設の屋根などを事業者が借り、太陽光発電設備を無償で設置。利用者が電気の使用量に応じて事業者にサービス料金を支払うビジネスモデル。電気料金と二酸化炭素(CO2)排出の削減が期待できる。

県北の自治体では、国の脱炭素先行地域の真庭市は27施設でPPAを導入予定で、今年度は2施設の着工を計画。同先行地域の西粟倉村はPPA導入に向け事業体を立ち上げる。

ガットは10年前から太陽光発電事業をスタート。カーボンニュートラル、社会情勢変化による電気代高騰への対応などを経営方針として打ち出し、最初の事業として脱炭素先行100地域入りを目指す新見市と包括連携協定を結んだ。

PPA事業を担当する廣瀬吉嗣経営戦略室長は「PPAは、単なる太陽光発電設備を導入するのではなく、地方活性化の基盤となる安定したエネルギー供給のための事業です。エネルギーを他の地域から高い値段で買うことなく、地産地消することで好循環をつくり、地域経済の発展につなげたい」。

美甘信吉社長は「ウクライナ情勢や円高による電気代高騰は、既存のエネルギー供給の仕組みのもろさを露呈した。二酸化炭素排出削減に寄与しながら、安定した電力基盤を提供できる。新見をモデルケースに、他の自治体での導入を目指したい」と話している。

新見公立大学での太陽光発電システム完成をテープカットして祝う関係者

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