グリーンとピンポジションへの充実感 石川遼が受け止めた欧州ツアーによる変化

石川遼は欧州ツアーによってセットアップされたコースの難しさを楽しんでいる(撮影/奥田泰也)

◇国内&欧州男子ツアー共催◇ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント! 2日目(21日)◇PGM石岡GC(茨城)◇7039yd(パー70)

「パッティンググリーンや練習場、このコースはJGTOのツアーでトップクラス。僕らからするとめちゃくちゃ良い環境なんです」。石川遼はクラブハウスの向こうに広がる光景に目をやった。青々としたドライビングレンジに芽の詰まった美しいグリーン。各種練習場へのアクセスにも優れたPGM石岡GCの施設は、全国を巡るツアープロの心も踊らせる。

昨年は2回も国内男子ツアー競技を実施した当地はことし、欧州ツアー(DPワールドツアー)との共催競技になり、“グレードアップ”されたという声が多い。行き届いたメンテナンスに、充実したホスピタリティ。芝の育成で言えば、コースは数カ月前から英国に本部を置く同ツアーに定期レポートで報告し、連携を密にしてきた。

ボールの転がりからまさに“世界基準”といえる仕上げだが、グリーンキーパーとして20年以上のキャリアを持つ松本竜太さんは、実際には「ほぼ、通常管理」と明かす。それは当コースの普段からの管理体制に胸を張るからこそだが、「(大会が)意図したグリーンにするためにいつもの倍の回数、芝を刈った」という。かかる労力がいつも以上だったのは疑いようがない。

そのグリーンは、欧州ツアー仕様のピンポジションでさらに国内の選手を奮い立たせた。多くのホールのカップが普段のツアー競技よりも端に切られ、グリーンを狙うショットはよりシビアに。日本ツアーの単独開催となった昨年、予選の36ホールで各方面のエッジから5yd以内にピンが立ったのは9ホールだったのが、ことしは26ホールに増えた。

厳しいピンポジションが選手を育てる(撮影/奥田泰也)

中でも石川は、手前や奥のエッジからも、左右のエッジからも距離がわずかな、より厳しいピン位置を好意的に受け止めた。「日本のツアーでもサイドのエッジから3yd、4ydというケースがあるが、そういう時には奥と手前が結構、許容されている」。ショットの左右のブレも、縦距離のブレも許さない設定は「やっぱり選手を育てる」と訴える。「選手が世界に出た時に違和感を抱えず、圧倒されないためには、高いクオリティのショットを求めるピンポジションに慣れる必要がある」。メンテナンスの行き届いた芝、質の高いセッティング。どちらが欠けても、トップレベルには行きつかない。

練習グリーンにカップ切るグリーンキーパーさんたち。若手のスタッフには欧州ツアーから「選手のために丁寧な仕事をしましょう」とアドバイスがあった(撮影/桂川洋一)

優れたツアー大会の演出には、確かに豊富な知識も経験も求められる。ただし、石川は本番用のカップが切られる試合前から、欧州ツアーが施した小さな変化を喜んでいた。キーパーの松本さんによると、練習用のパッティンググリーンに設けるカップは普段の6個から18個に増やすよう指示されたという。アプローチ練習場のカップもいつもの2個から今週は5個に。ターゲットが多いほど、選手の練習は充実する。「学ぶべきところは、たくさんあるよね」(石川)。改善点はなにも、すべてに莫大な時間やお金をかけなければならないとは言い切れない。(茨城県小美玉市/桂川洋一)

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