<金口木舌>報いるために

 奮闘する新入社員を見ると、過去の自分を思い出す。取材で何度も的外れな質問をしたが、取材先の多くはきちんと答えてくれた。批判する記事を書いても。人々に伝える大切さを理解していたのだろう

▼6日に発生した宮古島沖での陸上自衛隊ヘリ事故。ニュースで幹部の顔を見て絶句した。乗っていた坂本雄一前第8師団長は防衛省を担当した頃、陸上幕僚監部の広報室長だった。話しやすく、丁寧に取材に応じてくれた

▼事故から2週間が経過した。死亡が確認されたのは坂本さんを含めて5人。今も1人は海底の機体近く、残る4人の行方は分からない

▼身元確認や行方不明者の捜索は最優先だ。ただ、機体は陸地から見える海域に落ちた。予定の飛行経路は民間地上空を含む。事故原因も不明。不安を抱く市民に伝わる情報は不十分だ

▼亡くなった人を悼み、一刻も早く行方不明者が見つかることを願う。同時に説明が足りない部分などは指摘し、批判し、得られた情報は伝えたい。それが記者に向き合ってくれた故人への報いにもなる。

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