お好み焼店は多いですが、福山市本庄地区の住宅地の中に穴場のようなお好み焼店があるのを知っていますか。
その名は「お好み焼き だるま(以下、だるま)」。
しかも中華麺やうどんにこだわりがある、おいしいお好み焼や焼そば・焼うどんが食べられます。
中華麺は尾道ラーメンで有名なはせべ製麺のもの、うどんは手延麺の産地である鴨方町のかも川手延素麺のものを使用。
ほかにはない、独自性のあるお好み焼が食べられるのです。
そんな穴場のこだわりお好み焼店・だるまの魅力について、深掘りしていきましょう。
だるまは本庄の住宅地にある穴場のお好み焼店
だるまは、福山市本庄地区にある小さなお好み焼店です。
JR福山駅から西へおよそ1.3kmの場所にあり、店舗の周辺は住宅地。
はじめて訪れるとき、「本当にこの地区にお好み焼店があるのか?」と思うような場所にあります。
そんな場所にありながら、だるまには地元だけでなく全国からお客が来店するのです。
店内は、席数は全部で10。
鉄板のまわりにカウンター席が4脚、ほかに2人がけと4人がけのテーブル席が1卓ずつあります。
こぢんまりとした店内ですが、そのぶん気さくな店主との会話も弾み、和気あいあいとした雰囲気のなかで飲食できるのがだるまの特色です。
まるで隠れ家のような、落ち着いた気分で食事を楽しめます。
だるまのメニュー
2023年(令和5年)3月時点の情報。価格は消費税込
だるまはお好み焼店なので、もちろんメインメニューはお好み焼。
だるまのお好み焼は「重ね焼き」で、いわゆる広島お好み焼のスタイルです。
麺は、そば(中華麺)とうどんがあります。
だるまのお好み焼では、そばは尾道ラーメンで知られる尾道市のはせべ製麺の麺、うどんは浅口市鴨方町のかも川手延素麺の手延うどんを使用しているのが特徴です。
トッピングも豊富にラインナップし、牛すじやホルモンなどが人気。
またイカ・エビが入ったお好み焼「スペシャル」や、麺なしのお好み焼「野菜焼き」もあります。
お好み焼のほかに「焼そば」「焼うどん」も人気メニューです。
もちろん、だるまではお好み焼・焼そば・焼うどんの持ち帰りも可能。
持ち帰りも非常に人気です。
ほかにも、飲み物やおつまみ系の一品料理などがラインナップしています。
卓上にはマヨネーズや七味トウガラシのほか、瀬戸内レモン農園の「レモスコ」が置いてあるのがめずらしいです。
このほか、追加用のソースやコショウなどもあります。
イチオシ・人気のメニュー
だるまのイチオシメニューや、人気のメニューを紹介します。
「そば肉玉」は尾道・はせべ製麺の冷やし中華用の麺を使用!
一番人気は、基本の「そば肉玉」(750円)です。
薄く丸く広げた生地の上に魚粉、タップリのキャベツ、モヤシ、ぐんぐんイカ(イカ姿フライ)、天カス、豚バラ肉などを載せ、玉子でフタをしています。
だるまのお好み焼は、ボリュームがタップリで食べごたえ満点です。
調理中のお好み焼きは、まさに巨山のような風貌。
これを反転させて、蒸し焼きにしながらヘラで圧縮していきます。
調理中の山の姿からはだいぶ薄くなった印象ですが、実際にお好み焼を見ると、圧縮されてもかなりのボリュームです。
そして一番の特徴が、そば。
尾道ラーメン店に麺を多く卸しているはせべ製麺の冷やし中華用の中華麺を使っています。
強めの縮れがあり、やや黄色がかかった麺はところどころキツネ色の焼け目が付いて、見るからにおいしそう。
なお上にかかるソースは、店のオリジナル・ブレンド。
お好み焼をヘラで一口大にカットし、フーフーと冷ましながら口に入れると、シッカリと蒸されたタップリのキャベツの風味が広がります。
トロッと柔らかなキャベツの舌触りとともに、みずみずしさとやさしい甘味。
さらにモヤシの食感やみずみずしさ、ぐんぐんイカの風味、肉の味わいと香ばしさなどが複雑に入り組みます。
そしてそばは、外寄りの部分はパリッとした食感で香ばしく、内寄りの部分はモッチリとした弾力ある食感です。
それらに、ソースの甘酸っぱい味わいが加わります。
ボリューム満点のお好み焼ですがドンドンと食が進み、アッという間に平らげてしまいました。
麺にこだわり、ほかとは違った麺を使っているので、麺がとてもおいしかったです。
「うどん肉玉」は鴨方の”かも手”の手延うどんを使用!
「うどん肉玉」(750円)も人気があるメニューです。
そば肉玉の麺がうどんに変わったものですが、味わいがそば肉玉とは異なります。
使用しているうどんは、岡山県浅口市鴨方町にあるかも川手延素麺(通称:かも手)の手延うどん。
ちなみに鴨方町周辺は、江戸時代から手延麺の産地として知られています。
手延うどんは、平たい形状が特徴です。
艶やかな手延うどんが、炒められてところどころキツネ色になりパリパリになっていきます。
完成したうどん肉玉のお好み焼を、ヘラで一口大にカットして食べました。
そば肉玉同様にシッカリと蒸されたキャベツはトロッとした食感とともに、みずみずしさとやさしい甘さ。
そこにモヤシやぐんぐんイカ、豚肉の風味、甘酸っぱいソースの味わいが絡み合います。
そして手延うどんは、プルプルとした柔らかな独特の食感で、クセになる味わいです。
うどん肉玉は、そば肉玉と違った手延うどん独特の味わいを楽しめました。
「焼うどん」は上に玉子が載る!
「焼うどん」(700円)は、うどん肉玉と同じくかも川手延素麺の手延うどんを使っています。
具材はお好み焼と同じく、キャベツやモヤシ、ぐんぐんイカ、天カス、魚粉、豚バラ肉など。
ただし、お好み焼とはカットの仕方が違います。
またソースも店のオリジナル・ブレンドですが、お好み焼とは味わいが異なります。
だるまの焼うどんでは、最後に上へ玉子がトッピングされるのが特徴です。
基本的に店内飲食では生卵、持ち帰りでは目玉焼が載ります。
プルプルとした独特の食感の手延うどんに、ソースの甘辛い味わいやキャベツの食感とほんのりとした甘味、肉の甘味や天かすやイカ天の風味などが絡んできます。
途中で生卵を割って混ぜています。
すると、熱で玉子が炒り玉子みたいになってきました。
うどんや具材と玉子がよく絡んで、とてもおいしかったです。
「焼そば」も玉子載せ!
「焼そば」(700円)は、そば肉玉と同じはせべ製麺の冷やし中華用の中華麺を使用しています。
また具材は焼うどんと同じで、上に玉子が載ります。
店内飲食は生卵、持ち帰りは目玉焼です。
店内飲食の場合のみ、要望により玉子を目玉焼や炒り玉子風にもできます。
プリプリとした弾力のある食感の麺は、焼そばにしてもとてもおいしいです。
まさに穴場のような店で、独自のこだわりがあるお好み焼店・だるま。
だるまの店主・松田吉恵(まつだ よしえ)さんに話を聞きました。
だるまの店主・松田吉恵さんへインタビュー
まさに穴場のような店で、独自のこだわりがあるお好み焼店・だるま。
だるまの店主・松田吉恵(まつだ よしえ)さんに話を聞きました。
前身は母の運営していた老舗大衆食堂
──店の歴史を知りたい。
松田(敬称略)──
もともと当店がある場所には、私の母が運営していた「白梅食堂(しらうめ しょくどう)」という大衆食堂がありました。
白梅食堂は1977年(昭和52年)12月、福山市西町でお好み焼店として開業したんです。
開店の数年後に現在地へ店舗を移転し、お好み焼など鉄板焼料理に加え、セルフサービスのおかずなども提供し、お好み焼店と大衆食堂を合わせたような形態になりました。
現在は住宅地ですが、当時は近くに業者もあったんです。
しかし母が高齢となり、2010年(平成22年)5月に営業を終えました。
母の店舗を継承、新たにお好み焼店をオープン
──だるまを開業した経緯は?
松田──
私は仕事を辞め、母の介護をするようになりました。
その生活のなかで、夫から「お好み焼店をやってみたらどうだ」とすすめられたんです。
介護ばかりだと気が滅入るので、介護と両立できるような仕事をしたほうがいいのではないかという夫の考えからの提案でした。
母がやっていた白梅食堂だった建物があり、調理用鉄板もあります。
また店舗兼住宅の自営業なので融通が利き、介護との両立がしやすいという理由もありました。
考えた結果、店を始めようと決めたんです。
──お好み焼の修業は?
松田──
お好み焼のつくり方は、独学です。
開業するまでひたすらお好み焼をつくり、知人を招いて食べてもらい、アドバイスをもらうということを繰り返しました。
あとは開業後に店を運営しながら、お客様の声を反映するなどして試行錯誤していった感じですね。
店内の清掃やリフォーム、調理用鉄板の手入れなども私や家族でおこないました。
現在、鉄板のまわりに天板を取り付けてカウンター席にしていますが、もともとは天板は付いていなかったんです。
天板の取付も自分たちでやりました。
こうして2017年12月に、お好み焼店「だるま」を開業したんです。
開店から3年ほど経ったころから、安定してお客様が来るようになりましたね。
──店名の由来は?
松田──
母が運営したときの「白梅」という名前は少し固いかなと思ったのと、あくまでも継承したのは建物や鉄板で、味は継承していないので、別の店名にしようと思いました。
そこで何となく頭に振ってきた言葉が「だるま」。
平仮名3文字で老若男女にわかりやすいし、縁起がいい印象だったので「だるま」に決めました。
他店にない麺にこだわって差別化を
──店の特徴やこだわりを教えてほしい。
松田──
一番の特徴は、お好み焼や焼そば・焼うどんの麺ですね!
お好み焼店は多いので、店をはじめるなら何かしらの他店と差別化できる特徴が必要だと感じたことが麺にこだわったキッカケです。
当店の中華麺は、尾道ラーメンで知られる尾道市のはせべ製麺の麺を使っています。
紹介ではせべ製麺の社長と知り合ったことで、尾道ラーメンの麺を使ったらおもしろいんじゃないかと思いつきました。
それではせべ製麺さんの麺をいろいろ試したんですが、一番相性が良かったのが意外にも冷やし中華用の麺だったので、店で冷やし中華用の麺を使うことにしたんです。
うどんは、浅口市鴨方町にあるかも川手延素麺の手延うどんを使っています。
もともとかも川手延索麵の手延うどんが好きで、よく買って食べていたから。
お好み焼店で手延うどんを使っていなかったので、うどんで差別化するならこれだと決めていました。
はせべ製麺にかも川手延素麺という、地域に根付いた麺を使っているのが当店最大のポイントですね。
冷やし中華用の中華麺は生麺、手延うどんは乾麺で仕入れます。
それを前日に翌日分だけ茹で上げ、脂でほぐして1日寝かしてから使っているんです。
実は、手間暇かけています!
全国各地からお客が来店
──どんなお客が多い?
松田──
持ち帰りは地元のかたが多いですが、来店は地元から遠方のかたまで幅広いですね。
持ち帰るかたは、持ち帰りだけということも多いです。
少し冷めたお好み焼が好きだというかたや、少し時間が経って蒸されたような味わいのお好み焼が好きだというかたもいて、持ち帰りにこだわるようですね。
来店のかたは、本当に全国各地から来られます。
店内に日本地図を貼っていて、遠方のかたにはどこから来たかシールを貼ってもらっています。
それを見ると、本当に全国から来店されているのがわかります。
岡山県や京阪神周辺などの関西、東京など南関東からの来店がとくに多いですね。
福山の住宅地にひっそりとある店なのに、本当にうれしい限りです。
開店してしばらく経ったころ、常連のお客様からのおすすめでInstagramを始めました。
その効果なのかなと感じています。
今後の展望
──今後の展望や目標があれば、教えてほしい。
松田──
私の母のように、私もできる限り長く店を続けていきたいと思っています。
ひとつの目標が、80歳。
もちろん、できればもっと長くやっていきたいです。
目指すは、生涯現役ですかね(笑)。
住宅地にある穴場だが全国からお客が集まるお好み焼店・だるま
住宅地の中という少しわかりにくい場所にある小さなお好み焼店でありながら、全国からお客がやってくる店・だるま。
尾道・はせべ製麺の中華麺や、鴨方の手延うどんなどこだわりもあります。
さらにキャベツなどの具材がタップリで、ボリュームが満点。
まさに「穴場」といえるお好み焼店ではないでしょうか。
席数が多くなく、店主の松田さん一人で切り盛りしているので、来店や持ち帰りをする際はなるべく事前予約してください。