葉山漁協×ダイバー=地域活性化 不和解消、行政も後押し

 ダイビングでまちを盛り上げようと、葉山町漁業協同組合と地元のダイビングショップが連携している。漁協の船がダイバーを沖まで運び、漁師が潜るポイントを伝授。かつては漁業者に「ダイバーは密漁する」との反感もあったが、双方にメリットがあることから、町の後押しも手伝って関係改善が進んだ。

 「魚が産卵する様子を撮影できた」、「寒い海で長時間耐えた末にダンゴウオを見た」。「ダイビングショップナナ」(葉山町堀内)に集ったダイバーたちは、葉山の海の魅力をこう語る。

 「水深が浅く一度で長時間潜れ、ウミウシやダンゴウオなどの生き物をじっくり観察できる」とショップの代表佐藤輝さん(40)。関東地域のダイビングポイントとしては伊豆や三浦が有名で、葉山は「穴場」とも言われる。愛好者以外には広く知られていないが、交通の便も良く、横浜市内や都内から通う人も多い。

 町は以前からダイビングによる地域活性化を模索。2014年末、沖まで出て潜れるよう、ダイバー用の船の運航を漁協に打診した。

 「ダイバーは密漁者というイメージを持った漁師は多かった。以前は自分もそう思っていたね」と飯田實組合長は明かす。一方で、ダイバーが密漁を発見し通報するケースもあった。「組合が協力していい関係が築ければ」と町の申し出を受け入れた。

 漁協は昨年2月から週2回の運航を開始。ショップを通じて申し込んだダイバーを乗せた船を漁師が操縦し、魚のいるポイントもアドバイスする。ダイバー船が海上に出ることで、密漁の監視にもつながるという。佐藤さんは「親切な漁師さんばかり。密漁を疑われた以前とは大違い」と感激する。

 口コミで人気が広まり、昨夏から運航を週3回に増やした。漁協は町の後押しで県の地方創生交付金を活用して新しい船を購入、空気タンク置き場やシャワー設備も整備した。飯田組合長は「葉山の良さが知られ、多くの人が来てくれれば」と、まちのPR効果にも期待している。

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