各種がんの切除数が2年連続で抑制傾向、コロナ禍で早期がん診断ができていない可能性 横浜市立大学

横浜市立大学附属病院化学療法センターの研究グループは、日本人で患者数の多い10がん種について、2019年度以前と比べた場合、2020年度・2021年度と連続して切除患者数(外科切除+内視鏡切除)が大幅に抑制されていることを確認した。一方、10大がんに対する新規抗がん剤治療は2020年度に減少したものの2021年は過去最高数となっていた。この結果は、新型コロナパンデミック(コロナ禍)の影響で、切除可能な早期がん診断が適切に実施できていない可能性を示唆している。

研究グループは、全国のがん患者の7割をカバーする院内がん登録の全国集計データ(国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」)の提供を受け、日本人で患者数の多い10がん種(食道がん・胃がん・結腸がん・直腸がん・膵がん・非小細胞肺がん・乳がん・膀胱がん・前立腺がん・子宮頚がん、以下10大がん)を対象に解析を行った。

社会の高齢化に伴い、がん患者は本来増加傾向だが、2020年度に10大がんの新規患者数が大幅に減少し、2021年度にはほぼ2019年度と同数となった。治療別では、新規抗がん剤治療患者は2020年度に減少したが2021年度には大きく増加し、過去最高数となった。一方、手術切除患者数・内視鏡切除患者数は2020年度に大幅に減少し、2021年度にも2019年の水準を下回った。

本研究により、10大がんの新規患者数は2020年度には大幅に低下し、2021年度には増加傾向にあるものの2019年度を若干上回る程度であるということが分かる。また、治療別においても、新規抗がん剤治療患者が大幅に増加したものの手術切除患者数・内視鏡切除患者数がコロナ禍以前の2019年度の水準を下回っているという結果については、がん切除患者数の減少はコロナ禍による医療機関へのアクセス悪化、健康診断中止、受診控えによる早期がん診断数低下に起因すると考えられる。

早期がんの切除は根治を目指せる重要な治療法となり、低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)等のマススクリーニング※は死亡リスクを減少させることが以前から知られている。そのため、感染対策がなされていることが前提ではあるが、本研究が健康診断実施・受診の促進に繋がっていくことが期待される。

※マススクリーニングとは、低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)等のマススクリーニングにより受診者の死亡率を減少させることが、信頼性の高い研究で確認されており、世界各国で推奨されている。

論文情報:

【Journal of the American College of Surgeons】Impact of the COVID-19 Pandemic on Cancer Treatment: Nationwide Japanese Registration Until 2021

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