娘から「ママ、歌ってんで」と言われる関西CMソング女王 この道25年〜耳に残る、つい口ずさむフレーズ

関西人なら誰もが聞き覚えのあるCMソングを歌い続けている元気印の女性シンガーがいる。大阪在住の高岡陽子さん(44)は自身のユニット「SOIL」で活動しながら子ども2人のシングルマザーとしても奮闘中で、今年デビュー25周年を迎える。代表曲は南紀白浜アドベンチャーワールド「shine on you」。昨秋からはJリーグ、ガンバ大阪の新マスコット「モフレム」の応援ソングを歌い、認知度アップに貢献している。どんな人物なのか。

「関西CMソング女王」と聞いて身構えていると、前髪パッツンの笑顔が似合う女性が現れた。

「元気いっぱいなのが私の取りえなんです。好きなことやれて、みなさんに喜んでもらえる。こんな幸せなことありません」

大阪出身。3歳からクラシックピアノを始め、18歳まで本格的に取り組んだ。当時は「人前では、ほとんど歌ったことはなく、周囲にはピアノで大学に行くと思われていた」という。

「実は歌が大好きで、こっそり歌っていました。歌手を目指すと言うと母は”はぁ~”と驚いていました」

高校卒業後、難波にあったヤマハ音楽院大阪ポピュラー科ボーカル科に入学。発声の基本を学ぶ一方で、早くから教材用のレコーディングをしたり、イベントのバックコーラスに駆り出されるようになった。

「クラシックピアノを習っていたおかげで譜面が読める。初見で歌えたもんやから重宝がられたんやと思います」

やがて運命的な曲に出合う。関西人ならだれしも聞き覚えのある南紀白浜アドベンチャーワールドのCMソング「Always Together」が切り替わる際のボーカルに選ばれたのだ。

「小学生の頃からずっと聴いていた名曲。その後を歌うのかと思うとも感慨深いものがありました。もの凄く嬉しかったのと、もの凄くプレッシャーも感じました」

それが彼女の代表曲のひとつになっている「shine on you」。イルカショーにマッチするアップテンポなあの曲だ。そのとき、陽子さんは25歳。臨月だったそうで、無事に生まれた長男はいま高3、バスケに熱中しているそうだ。

また、アドベンチャーワールドのCMソングは名曲が多く、例年歴代のアーティストが一堂に会し、「パンダミュージックフェス」を開催。今年も11月に実施される見込みだ。

業界で憧れた存在は独特の柔らかな声で知られ、3000曲以上のCMソングを手がけたとされる木村恭子(故人)さん。「どのテレビをみても歌っていましたから。少しでも近づきたいと追い続けていました」

これまで陽子さんが携わった作品は美粧館、京阪電車、KYK(YKKではない、とんかつの方)、なか卯、有馬グランドホテル、ワールドウェディング「ジュレ」などなど。様々なCMソングを歌い続けてきた。

「はじめの頃はテレビで自分の声を聴くのは不思議な感じでしたが、いまは娘から”ママ、歌ってんで”と言われてます」

15秒という短い時間の中でいかに伝えるかが問われる仕事。ときにレコーディングの現場に行くまでCMの内容を知らされないときもあるそうだが、陽子さんの強みは初見力に加えて、その対応力だ。

「商品に合わせて、ここはちょっと明るく歌うとか、演歌調にしたりロック調にしたり。心がけているのはリクエストに応え、収録1回、短時間で終わらせること。そして何より、商品が売れると貢献していると思えて、うれしいです」

昨年10月からはガンバ大阪の新マスコット「モフレム」のテーマソングを担当。明るい歌声でPRに貢献している。もちろん、2019年5月に山里直樹さんと結成した男女ボーカルユニット「SOIL」でも精力的に活動し、6月25日にはテイクファイブ大阪でライブを開く。

今後の夢はどうなんだろう。マネージメント契約をしている株式会社「ヴィーナス」の古屋安弘代表が「関西CMソングの第一人者。歌唱力はもちろん、フレンドリーで明るくてトークもできる。もっと顔と名前も知っていただければ」と期待を寄せれば、陽子さんも「大好きな歌を歌い続け、作曲にもチャレンジしていきたい」と意気込む。

この道25年。いまだ瑞々しい陽子さん。これからも耳に残る、ついつい口ずさんでしまう歌声を届け続けてくれることだろう。

◇ライブ「贅沢SOIL」

6月25日(日)開場12時、開演13時、4000円。
場所=TAKE FIVE 大阪(大阪府吹田市内本町2-2-5 旭トゥーレB1F)
予約は06-6319-0625

(よろず~ニュース特約・チコ山本)

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