「ポストコロナ」論戦空振り 統一地方選 地方政治の危機露呈

 23日に幕を閉じた統一地方選は新型コロナウイルス感染拡大後初の大型地方選だった。傷ついた地域を再生し、ポストコロナの未来図をどう描くか。感染症法上の位置付けの「5類」移行を見据えた活発な論戦が期待されたが、多くで過去最低を更新した投票率や無投票選挙区の続出を見る限り、空振りに終わったというほかない。

 争点が明確な選挙戦だった。コロナ禍に加え、歴史的な物価高が市民生活を直撃。押し寄せる少子化、人口減少の波は地域の持続可能性を脅かす。にもかかわらず露呈した低調ぶりは、地方政治の危機そのものだと認識せねばなるまい。

 候補者自身、具体的な解決策で支持をたぐり寄せることができたか。コロナ禍が広がってからの3年余はもどかしい月日だったに違いない。だが、私たちは行動制限を伴う深刻な局面を脱し、マスク着用が個々の判断に委ねられるところまでたどり着いた。地域を歩き、声なき声をくみ取る原点にもう一度立ち返ってもらいたい。

 一方で「選ぶ側」も主権者としての務めを果たせただろうか。地方議員の劣化は地方行政のチェック機能を弱め、ひいては地方自治の形骸化を招く。自らを省みつつ、地域を共につくる気概を改めて呼び起こしたい。

 もっとも、これまでにない景色も見られた。一つは女性の躍進で、選挙戦となった岡山県議選9選挙区のうち四つ、岡山市議選4区のうち二つの区で女性候補がトップ当選を果たした。新たな勢力の台頭もあり、岡山市議選では議席のなかった政党が公認する新人が割って入った。

 「多様性」と言うには距離があろうとも、議会に緊張感を与え、論戦に厚みを加える契機となればいい。当選者一人一人が責務を自覚し、存在意義を高めることができれば、なり手不足解消の布石ともなるはずだ。

© 株式会社山陽新聞社