減らない闇バイト…まず対策すべきは実行する若者? 募集するプラットフォーマー? それとも大元の犯罪組織か?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、“闇バイト”について議論しました。

◆相次ぐ広域強盗事件、政府も闇バイト対策を急務

今年に入り、各地で広域強盗事件が相次ぎ、2021年以降、手口などから関連が疑われる窃盗などは、14都府県で50数件。その背景には、インターネット上で犯罪の実行役を募る「闇バイト」の存在があります。

警視庁が2022年1月から2023年1月までに取り調べた620人のうち、約46%がTwitterにある闇バイト募集にアクセスしていました。

この状況を受け、政府は官邸で犯罪対策閣僚会議を開き、サイバーパトロールを通じた闇バイト情報の削除など、闇バイトへの緊急対策プランを決定。岸田首相は「国民の安全・安心な暮らしを守り抜くことは政府の最大の責務」としています。

闇バイトの手口としては、大手求人サイトに架空の会社名で広告を掲載。仕事内容は「受取配送スタッフ」、「現場作業系」などと書かれ、「高額報酬」、「交通費支給」、「地域限定」などの言葉で勧誘しています。そして、こうした募集に応募すると、身分証の画像を送らせて個人情報を把握。応募者が家族などへの危害を恐れ、抜けられない状況を作り出しているということです。

なお、警察庁によると2022年に特殊詐欺だけで摘発されたのは2,469人。そのうち20歳未満は19.3%となる477人。なかでも高校生は131人、中学生は26人と若い世代も多くなっています。

◆規制を強化すべきは若者か? プラットフォーマーか?

弁護士の北川貴啓さんは、つい最近、若者から受けたという相談事例を紹介。それは、銀行口座を友人に売ってしまったところ、それがマネーロンダリングなどの犯罪に使われたというもの。

キャスターの堀潤は「(他人に)預金口座を売るというのは、どういう経緯で!?」と驚いていましたが、こうしたケースは実は多いといいます。今回紹介したケースでは、友人に「ちょっと必要なので貸してほしい」とせがまれて売ってしまったそうで、北川さんは「(若者は)その行為そのものの重要性、違法ということがわかっていない」と注意を促します。

闇バイトに関して、SNSには「お金をもらえるならやっちゃうんじゃない? (報酬が)200万円であれば、全然やる人いる」、「"バイト”などと銘打つから気軽な気持ちで乗ってしまう要素がある」、「闇バイトに手を出してしまうくらい若者がお金を持ってないことが問題」など、さまざまな意見が。

番組Twitterには「本当にお金に困っている人はその報酬が闇なのかどうか判断する余裕もない」、「闇バイトという軽いワードも悪い」といった声も。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、闇バイトの規制強化は当然としつつ「根本的には(闇バイトで人を)雇おうとしている側がいて、まずはそこの規制が最初だと思う。全てが若者の責任になっていくのは、また違う論点」と、問題は雇う側にあるという考えを示します。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「若者だけの問題に矮小化しているのは違う」と頷き、「政府の会議を見ていても、小中高生に非行防止の教育をやるべきと提言していて、やってもいいと思うが、若者だけの問題にしているのは全く違う」と主張します。

闇バイトの手口として使われる大手求人サイトに対し、「プラットフォーマーがあまりにも何の責任も追求されていないことが問題」との指摘も。架空の会社、実態のない会社が登録できてしまうこと自体が由々しき問題であるとし、それをこれまで平然とビジネスとして成り立っていたことに疑問を呈します。

それはSNSも同じで「一義的にはSNSのプラットフォーマーの責任。常にそれを利用する若者、ユーザーが悪いとされるのはおかしい」と大空さん。防止策がしっかりとなされているなら話は別ですが、それもあまり取られていないと前置き、「大手求人サイトにしてもSNSにしても、まずは防止策を行った上で、同時並行で啓発もやっていくべきではないか」と訴えます。

◆重要なのは若者への啓蒙、それとも支援か?

現在、政府が取り組んでいる対策としては、サイバーパトロールで闇バイトの募集書き込みを削除すること。これは今後AI(人工知能)の活用も検討していくとしています。さらに、名簿流出防止や悪質な電話転送事業者への対策に加え、テレグラムなど匿名性の高い通信アプリの悪用防止などが挙げられています。

東京都は去年の8月から闇バイト応募のために関連キーワードを検索した若者に警告動画を流すという取り組みを、全国で初めて開始。立正大学の小宮教授は、こうした対策に関して「2万円程度を得るために強盗に加担したら懲役刑になる」、「損得ベースで教えるなど、若者教育の工夫が必要」としています。

今後どういった対策を施していくべきなのか。北川さんはプラットフォーマーに対しては「行政が働きかけ、ガイドラインをしっかり設けることが大事」としつつ、一方で闇バイトに気軽に応募してしまう若者に自制心を持つよう呼びかけます。

たとえ貧困で困っていたとしてもそれは犯罪に加担することになるため、リテラシーの重要性を唱え、「やはり教育が大事。ネット・PCの扱いは注意しないといけないことを注意喚起していくことが重要」と述べます。

能條さんは「やはり闇バイトを作っている人たちにもっと責任を持っていくべき」と主張。闇バイトに手を出してしまう若者のなかにも戸惑いを持たずにやる者、戸惑いながらも実行する者などさまざまであり「もっと福祉的なところの支援をしながら(若者が)闇バイトに手を出さないようにしていかないと、『やってはいけない』とだけ言っていても、結局やってしまう人が出てくると思う」と案じます。

当番組のTwitterスペースに参加していた視聴者に、プラットフォーマーへの対策が優先か、闇バイトを運営する組織への対策が急務か聞いてみると、意見が双方分かれ、参加者のひとりに話を伺ってみると「プラットフォーマーは後の話だと思う。現状、一発逆転でなんとかなるとか、お金を持っている人は何かズルをしているといった価値観が横行しているので、それを正さないと闇バイトに流れていく人は止まらない。それをどうやって止めるのかを考えてほしい」といった意見がありました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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