300年以上の歴史を持つとされる富山県小矢部市下後亟(しもごぜ)地区の奇祭「酒とり祭」が23日、下後亟神明社で行われ、地元住民らが無病息災と五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願った。ふんどし鉢巻き姿の男衆が4年ぶりにフェイスシールドを着けずに参加。奇声を上げながら参拝客へお神酒をついで回り、境内は熱気に包まれた。
酒とり祭は市指定無形民俗文化財で、神明社の春季例祭。江戸時代に災厄が続き、大量のお神酒を供えて振る舞えば、無病息災と五穀豊穣がかなうとお告げがあったとされる。
神事と下後亟獅子舞保存会による演技に続き、地元の青年会員ら十数人が鳥居の下から拝殿へ駆け上がった。ひしゃくにお神酒を入れ、参道周辺に集まった参拝客の紙コップについで回った。一升瓶15本分がなくなるまで繰り返し、ひしゃくのお神酒を勢いよく宙にまく場面もあった。
新型コロナウイルス対策として、ひしゃくで参拝客に直接お神酒を飲んでもらう従来の形式は取りやめた。青年会長の荒田将幹(まさき)さん(28)は「マスクを外しての祭りはうれしい。伝統をつなぐことができた」と喜ぶ。下後亟区長の古林富士雄さん(69)は「若い世代のためにこれからも続けていきたい」と話した。