完成から十数年 高架橋なぜ車が通れない? 広島市佐伯区八幡東

建設から10年以上がたっても車が通れない市道駅前線の高架橋

 完成から十数年たっても車が通れない高架橋が広島市佐伯区八幡東にあるのはなぜなのか―。区内の会社員男性(55)から疑問が届いた。国道2号西広島バイパス入り口の渋滞緩和を目指す市道「駅前線」の一部で、通れるのは歩行者や自転車だけという。男性は「この先はどうなっているのだろう」と首をかしげる。高架橋が使えずにいる理由を探った。

 入り口をふさぐフェンス脇を通り、歩道を歩いてみる。犬の散歩をする人や、電動アシスト自転車で坂を上がる高校生。橋を上り切ると住宅団地「美鈴園」にたどり着いた。庭先にいた男性(88)に声を掛けると「もう何十年も前からある計画ですよ」と教えてくれた。

 市によると、市道の建設が決まったのは66年前の1957年。96年に八幡東―皆賀区間の977メートルで用地買収を始め、2011年には高架橋を含む八幡東側の305メートルが完成した。全体の開通によって西広島バイパスの入り口に向かう渋滞の解消につなげるはずが、残る672メートルで用地買収が難航した。

 共有林の所有者が海外にいたり、相続の手続きがされていなかったりと、所在を確認するのに時間を要した。中には関係地権者が約100人という複雑なケースも。交渉は長期化し、市職員の間でも使われない高架橋を「ジャンプ台」と例える声も漏れていた。

 市は完成した橋だけでも使えないか地元住民たちに相談したが「団地を抜ける車が増えて危険」と反対の意見が出た。確かに、団地内を歩くとその心配は分かる。小学生の通学路だが信号もなく細い道も多い。皆賀連合町内会の久保田詳三さん(76)は「一日も早く完成してほしい」としながらも「道路全体が開通しないと意味を持たない。フェンスを開けたくても開けられない」と強調する。

 計画に目に見える動きが出たのは20年。市が西広島バイパス側の皆賀地区の工事に着手した。現在は川に橋を設け、山を削って道路を造る作業をしている。区地域整備課は「できるところから着手したい」。用地交渉と並行しながら、25年度末の完成を目指す。総事業費は42億円で、22年度末までに29億円を費やした。

 事業着手から既に27年が過ぎた。地元住民からは「結果的に見通しが甘かった」との指摘もある。久保田さんはつぶやく。「道路工事は夢を与えるもの。期間が長すぎて、その夢を感じなくなったよね」

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