放射線治療に最先端機器 県立がんセンターが国内初導入 自動化に特化、患者の負担軽減

「エレクタ・ハーモニー」の内覧会に参加したセンター幹部ら

 栃木県立がんセンター放射線治療科は、高い安全性を誇る最先端放射治療装置「エレクタ・ハーモニー」を国内で初めて導入した。人為的なミス(ヒューマンエラー)防止技術として自動化に特化しており、患者への負担を軽減する効果がある。5日には70代男性の直腸がんに対する治療が行われた。

 「エレクタ・ハーモニー」は放射線治療装置の製造やシステム開発を手掛けるスウェーデンのエレクタ社製。総額5億2250万円。本体の大きさは縦2.8メートル、横2.8メートル、奥行き3.3メートル。

 治療室に入る前に自動で患者の顔を照合し、オーダーメードの治療計画を反映したビームの照射を準備する。誤って別の患者用の治療を適用することがなくなり、担当する医療スタッフの心理的な負担軽減も期待される。

 治療中は体の表面をセンサーで常にスキャンし、患者の体が動いたときには自動でビームを停止。体の位置を自動認識するため、従来使っていた治療位置を示す長い印も必要ない。

 CT画像を撮ることも可能。自動支援技術を生かし、従来は数日かかる治療計画を最短15分程度で作成する。治療当日の画像から体内の状態に合わせた計画を作れ、腫瘍を確実に狙うことができる。

 17日には同センター幹部ら20人が参加し、内覧会が開かれた。診療放射線技師で医学物理士の伊藤憲一(いとうけんいち)主査が実際に装置を動かし、機能を説明した。伊藤主査は「0.01ミリの精度で装置を制御して放射線を照射することで、より安全な治療が可能になった。今後、軌道に乗れば1日30〜40人程度に使用できる」と見通しを語った。

国内で初めて導入された「エレクタ・ハーモニー」=17日、宇都宮市の県立がんセンター
国内で初めて導入された「エレクタ・ハーモニー」=17日、宇都宮市の県立がんセンター
「エレクタ・ハーモニー」のモニター。体の表面をセンサーでスキャンした画像が映る。

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