トヨタのエバンスが今季初優勝「勝利に値する戦いだった」とラトバラ代表/WRC第4戦クロアチア

 4月23日、WRC世界ラリー選手権の2023年シーズン第4戦『クロアチア・ラリー』は最終日のデイ3が、クロアチアの首都ザグレブを起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR WRT)はエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合優勝、チームメイトのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合4位に。

 また、ロバンペラ組と好勝負を繰り広げたセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合5位でフィニッシュ。TGR WRCチャレンジプログラムより、4台目のトヨタGRヤリス・ラリー1で参戦した勝田貴元/アーロン・ジョンストン組も総合6位入賞を果たしている。

■WRC通算6勝目は567日ぶりの勝利

 クロアチア・ラリーの競技最終日は、ザグレブに置かれたサービスパークの北側エリアで、SS17からSS20の計4SS、距離にして54.48kmで争われた。デイ3は前日に続き好天に恵まれ、路面は全体的にドライコンディションだったが一部には湿っている区間もあった。また、このラリーの特徴のひとつでもある、インカットによって掻き出された泥で非常にトリッキーなコーナーも見られた。

 22日(土)のデイ2で総合首位に立ったエバンスは、総合2番手につけるオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)に対し25.4秒という充分なリードを築いていたため、最終日は確実性の高い走行でラリーを進めていった。オープニングのSS17で3番手タイムを記録し、ライバルとのギャップを30.5秒に拡げたウェールズ人ドライバーは、最終的には27秒差をつけて2021年のラリー・フィンランド以来となる優勝を果たした。

 この勝利でエバンスはWRC通算6勝目をマーク。TGR WRTでは5度目の優勝となっている。なお、コドライバーのマーティンは、2014年から2018年にかけて、今戦の1週間前に事故死したクレイグ・ブリーンとペアを組み、2016年のフィンランドでWRC初表彰台を獲得している。エバンスとマーティンは、表彰台に立ったラリーの仲間たちとともに、今回の結果をブリーンに捧げた。

2023年WRC第4戦クロアチア・ラリーで優勝したエルフィン・エバンス(右)/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)
今季3戦目の出場ラリーを総合5位で終えたセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第4戦クロアチア・ラリー

■ふたりの世界王者によるバトルは最年少チャンピオンに軍配

 オジエとロバンペラはデイ2で激しい総合4番手争いを展開し、オジエが2秒差でリードするかたちで最終日を迎えた。しかし、デイ3最初のSS17でベストタイムを刻んだロバンペラが総合4番手の座を奪い、さらにSS19でもベストタイムを記録。その差を6秒以上に拡げてみせる。

 22歳の史上最年少チャンピオンは、最終的に9.7秒差で“8冠王者”であるオジエを抑え総合4位を獲得した。なお、ボーナスの選手権ポイントが懸かる最終SS20の“パワーステージ”では、ロバンペラが2番手タイム、オジエが3番手タイム、6位で今戦を完走した勝田が4番手タイムを記録し、それぞれボーナスポイントを獲得している。

 シーズン第4戦を終えた時点でのドライバーズランキングは、オジエとエバンスが69点の同ポイントでトップに並び、ロバンペラは彼らと1ポイント差のランキング3位につけている。また、マニュファクチャラー選手権ではTGR WRTが依然トップを守り、ランキング2位のヒョンデとの差を29ポイントとした。

 なお、今大会でTGR WRTは、ブリーンが所属していたヒョンデチームとの連帯の意味も込め、通常3名まで登録可能であるポイント獲得対象ドライバーを、ロバンペラとオジエの2名に絞っていた。

 ラリー界全体から愛されたブリーンの追悼大会となったクロアチア・ラリーを終えたあと、TGR WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表は今大会を次のように振り返っている。

「ラリー界にとって厳しい1週間だったが、もっとも重要なのは、クレイグが望んでいたに違いない、安全にラリーを行い、良い戦いをすることができたことだ」

「私個人としては、エルフィンとスコットは、このような状況でこのラリーを制するにふさわしい、素晴らしいペアだったと思っている。彼らはクレイグの友人であり、スコットは以前クレイグのコドライバーとしてともに初表彰台を獲得した」

「それだけに、このラリーに臨むのは簡単なことではなかったはずだが、彼らは素晴らしい仕事をした。それは勝利に値する戦いだった。ふたたび優勝できたことは、彼らにとって大きな意味があると思う」

「また、カッレ(・ロバンペラ)とセブ(セバスチャン・オジエ)が金曜日に問題に遭遇しながらも、チームに充分なポイントをもたらしてくれたことをうれしく思う」

 TGR WRTがシーズン4勝目を狙うことになるWRCの次戦は、5月11日から14日にかけて、ポルトガル北部のマトジニョスを中心に開催される第5戦ラリー・ポルトガルだ。

総合4番手をかけて争った“ふたりのチャンピオン”。カッレ・ロバンペラ(左:4位)とセバスチャン・オジエ(右:5位) 2023年WRC第4戦クロアチア・ラリー
総合4位となったカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第4戦クロアチア・ラリー

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