NHRA参戦2年目で悲願達成、トニー・スチュワートがトップアルコール初優勝。ファニーとのW制覇に

 アメリカ最高峰NHRA(National Hot Rod Association/全米ホットロッド協会)が主催するNHRAルーカス・オイル・ドラッグレーシング・シリーズの名物イベント、2023年第4戦となる『NHRAフォーワイド・ナショナルズ』が4月14日~16日にラスベガス・モータースピードウェイで開催され、北米モータースポーツ界を代表する“殿堂入り男”ことトニー・スチュワートが、自らの率いるトニー・スチュワート・レーシング(TSR)の参戦2年目で悲願を達成。

 昨季より“トップアルコール・ドラッグスター”に挑戦中のスチュワート(モービル1・ドラッグスター)は、決勝最終ラウンドで時速269.62マイル、ゴールタイム5.324秒を記録し、キャリア通算4回目のスタートで念願のシリーズ初勝利を収め、同じくTSR所属のマット・ヘイガンも“ファニーカー”で早くも今季3勝目を飾るなど、チームにとって歴史的な“ダブル”を成し遂げた。

 前年度の2022年よりTOYOTA GAZOO Racingノースアメリカ(TGRNA)陣営から新型『トヨタGRスープラ・ファニーカー』がデビューしたことでも話題を集めたNHRAは、今季も3月初旬に開幕。早くも4レーンでの勝負が特徴となる、シャーロットを含めた年間2回の恒例イベント『フォーワイド・ナショナルズ』を迎えた。

 その昨季2022年より自身の名を冠したチームでNHRAに殴り込みを掛けたスチュワートは、今季も自身の婚約者であるリア・プルーエットを、出力1万1000馬力を超える最高峰トップフューエル・ドラッグスターに、そして同水準のパワーを誇るファニーカーに“マルチタイム・チャンピオン”のヘイガンを送り込む。

 昨秋のラスベガスで開催されたNHRAのデビュー戦で準優勝を飾っていたスチュワートだが、この日もマクフィリップス・レーシングがメンテナンスを手掛ける『モービル1・マクフィリップス・レーシング・トップアルコール・ドラッグスター』に乗り込むと、予選から270マイル台を連発。ファイナルこそ大台到達を逃したものの、その反応速度とゴールタイムにより、NHRAキャリアわずか4回目のスタートで記念すべき初勝利を収め、これでモータースポーツにおける43年連続の勝利とNASCAR、インディカーに続くNHRAでの勝利記録も手にした。

2023年も最高峰Top Fuel dragstersにリア・プルーエット(左)を、Funny Carにマット・ヘイガンを送り込む
NHRA参戦2年目のトニー・スチュワートは、今季も『Mobil 1 McPhillips Racing Top Alcohol Dragster』をドライブする

■「俺も勝った、お前も勝った、さあ次だ」

「去年の秋にここでレースをしたとき、決勝に進むことができただけでもうれしかったが、今日はリアに『今回は決勝に出られただけで満足しない。俺はこれ(優勝トロフィー)が欲しい』と言っていたんだ」と、満足げな表情でパートナー兼チームメイトとの会話を明かしたスチュワート。

「4ワイドのレースを存分に楽しんださ。正直なところ、最初の数ラウンドはヒートレースのように感じたし、それがショートトラックの感覚をもたらしているようにも思えた。好き嫌いは別として、いずれにせよクールな取り引きだった」と続けたスチュワート。

「この勝利が(最高峰の)プロシリーズ・クラスでの勝利じゃないことはわかっているが、本当に誇りに思っている。フィールドはこの週末を通じてずっとタイトで、昨年の秋もタイトだったからね。俺たちはレーサーであり、つねに勝ちたいと思っている。負けるのが好きなヤツなんていないさ」

 同じく2023年シーズン開幕から4戦3勝の圧倒的なスタートを切り、通算46回目の勝利を手にしたヘイガンは、代表であるスチュワートとウイニング・サークルで喜びを共有する、思い出に残る得難い瞬間を過ごした。

「僕もその輪に飛び込んで『トニーが勝った!! この男にプレッシャーなんて無縁だ』って感じだったね。トニーもみんなの歓声を浴びながら、もみくちゃになって僕のところに来て『俺も勝った、お前も勝った、さあ次だ』ってね。この勝利の輪をトニー・スチュワートと共有できたことは素晴らしいことだし、僕のキャリアの大きなハイライトになった」とヘイガン。

 同じフォーワイドの週末は、王者ブリタニー・フォース(モンスターエナジー・ドラッグスター)らを撃破したアントロン・ブラウン(マトコツールズ・トヨタ・ドラッグスター)がトップフューエル・ドラッグスター部門で今季初勝利を収め、主要部門のひとつであるプロストックでは、ダラス・グレン(RADトルクシステムズ・シボレー・カマロ)が連勝を飾っている。

ヘイガンも”Funny Car(ファニーカー)”で早くも今季3勝目を飾るなど、チームにとって歴史的な”ダブル”を達成。プルーエット(右上)は惜しくも予選敗退となった
「この勝利が(最高峰の)プロシリーズ・クラスでの勝利じゃないことはわかっているが、本当に誇りに思っている」とスチュワート

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