4大都市圏内のゴルフ場を買う「PGM」の田中耕太郎社長に聞いた

田中耕太郎PGM代表取締役社長

ゴルフ場運営大手のパシフィックゴルフマネージメント(PGM、東京都台東区)は、積極的なM&Aで事業規模を拡大してきた。この8年ほどの間に17のゴルフ場を傘下に収め、現在の保有ゴルフ場は146に達する。

近年、コロナ禍の中、若者や女性のゴルファーが増えており、ゴルフ場の様子が変わりつつある。PGMはどのように変わるのか。田中耕太郎代表取締役社長に現状や将来の展望などについてお聞きした。

売り手が多いゴルフ業界

-ゴルフ場の買収を積極的に行っておられます。狙いや今後の計画をお教え下さい。

会社の持続的な成長を考えればゴルフ場の買収は避けて通れない。一つのゴルフ場で収益や利益を出すのには限界がある。一日にプレーできる人数は決まっており、一ゴルフ場で青天井に売り上げを伸ばせるものではない。こういう環境下では数を増やしていくことが会社の拡大成長につながると考えている。もちろん、これからも保有ゴルフ場を増やしていきたいが、なんでも買収するというわけではない。売却したいという案件があれば、そのゴルフ場が将来的にしっかりと利益を確保できるのか、そうではないのかを精査し、その上で買収価格の提示があり、売り主との間で合意ができれば取得するということになる。

-通常M&Aは買い手が多く、売り手が少ないのですが、ゴルフ業界は状況が異なるのでしょうか。

日本のゴルフ場数は2200ほど。これは極めて多いと言える。米国は1万5000ほどあり別格なのだが、次に日本とかイギリス、カナダあたりになる。この狭い国土でこの数は多い。加えて日本のゴルファー数は全人口の7-8%といわれている。需給のバランスを考えると日本のゴルフ場は多過ぎるだろう。このため多くのゴルフ場が厳しい経営にさらされている。2200の半分ほどがコロナ前の時点では赤字だったのではないだろうか。こうした状況を踏まえると、ゴルフ場業界では売り手が多く、買い手が少ないといえるだろう。ノンコア事業としてゴルフ場の経営をしているオーナーさんは少なくなく、ゴルフ場経営を切り離していくという動きは今後もありそうだ。

-どのようなゴルフ場を買収されるのでしょうか。

基本的には東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏内のゴルフ場であれば、経営が成り立つだろう。この条件に合うゴルフ場は2200のうち半数あるかないかといったところで、こうした中のゴルフ場であれば買収を検討できる。


進行を妨げるようなバンカーはなくす

-コロナ禍で若いゴルファーや女性のゴルファーが増えています。定着するのか、あるいは離れていくのか。どのような見通しをお持ちですか。

確かにコロナ禍の特需のような感じで若い人や女性が増えている。現状はコロナ禍が収まりつつあり、5月には新型コロナウイルスが2類相当から5類に変わる。そうなるとコロナ前の状態に戻ることになるわけだが、ゴルフをやり始めた人たちが、全員ゴルフを止めるということはないだろう。ゴルフ業界はこれまでずっと若者と女性が減っていると言われてきた。いろんな対策を講じたが、何をやってもうまくいかなかった。それがコロナ禍で若者と女性が増えたのは、ゴルフ業界にとっては大変な起爆剤になる。今後はこうした若い人や女性を受け入れられるような対策や対応を取っていくことなるだろう。

-女性向けの改修などが目立ちます。

ティーの増設などはそれほどコストがかからずにできるし、このほか風呂やトイレの改修なども行っていくことなる。さらに女性に来ていただけるようなイベントなども活発化するだろう。PGMは昨年、女性向けにANGEL GOLFというサイトをリニューアルし、女性向けプランの紹介などを行っている。ドリンクサービスやお土産プレゼントなど特典付きのプランもある。

-PGMのゴルフ場ではバンカーをなくすなどコースの難易度を下げるような動きが見られます。これも若者や女性が増えたことへの対応でしょうか。

ゴルファーの大半はアマチュアで、100を切るスコアーで回れる人は恐らく全体の2ー3割しかいない。7割以上の人は100超えており、これが普通のアマチュアゴルファーだ。こういう人たちに合わすようにゴルフコースはできておらず、難しくしているところがある。これが進行時間を遅らせる原因にもなる。このため進行を妨げるようなバンカーなどはなくしていくのがいいのではないかと考え、全国のPGMゴルフ場に伝えている。ただコース設計者の理論などもあり、すべてのゴルフ場がそのようになるわけではない。

-プレー費が徐々に上昇してきていますね。今後の見通しをお教え下さい。

価格は市場の原理で決まる。需要が増えれば価格は上がるし、需要が減れば価格は下がる。コロナ禍で需要が戻ってきたから現在、価格が上がっている。さらにもう一つ。物価高がある。電気代は上がっているし、食材も上がっている。これを考えれば価格が上がるのは当たり前といえる。今後また需要が減るようなことがあれば価格は下がるという繰り返しだろう。

田中耕太郎PGM代表取締役社長

【田中耕太郎氏】
1985年、エスティティ開発入社
2004年、パシフィックゴルフマネージメント入社
2008年、パシフィックゴルフマネージメントセールス本部長
2009年、PGMホールディングス取締役兼パシフィックゴルフマネージメント取締役
2010年 、パシフィックゴルフマネージメント代表取締役社長(現任)

文:M&A Online

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