賃上げ非正規にも照準 イオンやUSJなど7%増額 大手待遇改善が中小に波及

今春の労使交渉では、各種調査機関の予測を大きく上回り、連合の初回集計の賃上げ率が29年ぶりに3%台を記録した。規模別でも「300人以上」が3.81%、「300人未満」が3.45%となり、懸念されていた中小企業への一定の波及を確認。今後は正社員にとどまらず、パートやアルバイトといった非正規労働者の待遇がどこまで改善するかが焦点になる。

日本最大の産業別労働組合で、流通や食品、レジャー・サービス、外食などの非正規労働者が多く加入するUAゼンセンがまとめた3月末時点の今回の春闘の妥結状況によると、短時間(パートタイム)組合員の賃上げ率は5.68%となり、正社員組合員の4.16%を上回った。特にベアなどの引上げ分だけでも4.74%を占めており、物価上昇分とされる4%を大きく超えている。

UAゼンセンがまとめた3月末妥結状況から

パートの賃上げでインパクトが大きいのは、流通大手のイオン(千葉県千葉市)の動き。グループ全体で約40万人が働くといわれているだけに、イオン労働組合連合会傘下の組合の賃上げ率が軒並み7%を超えている意味は小さくない。

正社員に先がけ、昨年9月にすでに国内店舗の準社員(パート)、アルバイトの時給を引き上げたのはユニクロなどを展開するファーストリテイリング。店舗スタッフに対する期待や職責、能力に応じた報酬に見直すため、既存のスタッフも含めて時給を1~3割引き上げた。今後は、スタッフから店長・経営者となるキャリアパスを維持しつつも、販売の専門職として最高の顧客サービスを追求するスタッフも同様に評価・育成し、優秀な人材の新規確保に繋げていく考えだ。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン運営のユー・エス・ジェイ(大阪府大阪市)は3月1日付けで、パート・アルバイトの時給・諸手当の増額に踏み切った。報酬の強化に加えて、福利厚生イベントを再開するなど、約1万人が在籍するパーク運営の原動力となっているクルーに対する包括的な投資を強化。報酬改定の具体的な中身として、最低時給を現行の1100円から1160円に増額し、時給の新たなレンジも1160~1690円に見直すなど、パート・アルバイトの給与・諸手当の月間支給額は平均で総額7%の増額となる見通しを示している。

ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランド(千葉県浦安市)は4月1日から、準社員(パート・アルバイト)を含む従業員の賃金を改定する。グループで働く全ての従業員が働きがいを感じ、これからも働きたい場所として選ばれ続けるように、基準賃金・時給を平均にして約7%引き上げる。

大手の賃上げばかり騒がれるが、中堅・中小企業も負けていない。インフラ工事業の第一カッター興業(神奈川県茅ヶ崎市)は、正社員の賃上げに合わせて4月分の給与から、パート・アルバイトをはじめ、嘱託社員や契約社員の時給を5%増額する。

第一カッター興業の発表資料から

在宅介護支援業のサンエスケアサービス(愛知県岩倉市)も4月1日から、正社員とパート社員の給与を増額。人事評価制度の見直しにより、3月31日時点で在籍するパート社員に対しては5月支給分の給与を、平均で3.5%、最大で9%引き上げる。

サンエスケアサービス発表資料から

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