4月23日にイタリア、モンツァで開催されたファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ（GTWCヨーロッパ）の2023年シーズン開幕戦。超高速サーキットを舞台に3時間の決勝レースを制したのは、BMWワークスドライバーのフィリップ・エング／マルコ・ウィットマン／ニック・イェロリー組が走らせる98号車BMW M4 GT3（ローヴェ・レーシング）で、姉妹車の998号車BMW M4 GT3とともにワン・ツー・フィニッシュを飾った。BMW車が同シリーズの“エンデュランス・カップ”で優勝したのは2018年のスパ24時間以来、5年ぶりだ。
M4 GT3は予選から好調だった。それを示すのがフロントロウ、セカンドロウともに独占した決勝グリッドであり、ポール・トゥ・ウインを飾った98号車を先頭に、バレンティーノ・ロッシを擁するチームWRTの46号車、同じくベルギーチームのエースカーである32号車、そして決勝で2位となったローヴェの998号車の計4台が上位を占めた。
決勝レース前には、BoP（バランス・オブ・パフォーマンス＝性能調整）の再設定によってプレ予選後に認められた10kgの車両重量削減が取り消されたBMW勢だったが、3時間レースの決勝中も優位性を保った。
その決勝では最初のスティントで2度セーフティカーが導入されるなか、98号車を駆るエングがスタートから首位を守る。一方2番手46号車BMWのスタートドライバーを務めたロッシは、2度目のリスタート時にマーロ・エンゲル駆る777号車メルセデスAMG GT3エボ（メルセデスAMG・チーム・アルマナー）にかわされ3番手に後退する。
また、スティント終盤には1コーナーでオーバーシュートし、その際にギアがニュートラルでスタックした影響で総合14番手までダウン。46号車の歯車はその後も噛み合わず、ルーティンのピットインでロッシからアウグスト・ファーフスに替わった直後に左リヤタイヤがパンクし、この影響でリタイアとなってしまう。
序盤のスティントでBMW勢の間に割って入った777号車メルセデスはピット作業の遅れによって後退し、代わって32号車BMWが2番手に浮上。GTWCヨーロッパのスプリント・カップ王者であるシャルル・ウィーツが98号車のウィットマンに接近するが、2度のDTMドイツ・ツーリングカ選手権チャンピオンはオーバーテイクを許さなかった。
各車3人目のドライバーが登場する3時間目もトップを守り続けた98号車は、そのままトップでフィニッシュを迎え開幕戦のウイナーに。対するWRTのエース車両はレース残り30分を切ったところでドリス・ファントールが緊急ピットイン。左フロントタイヤにトラブルが発生したため交換を余儀なくされる。これで32号車は総合7番手に後退し、2位の座を998号車に譲ることとなった。
BMWによるワン・ツー・スリー体制が崩れるなか、3番手には63号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2が浮上し、今季からランボルギーニのカスタマーチームとなったアイアン・リンクスが表彰台の一角を確保している。
総合4位はアウディ勢最上位となったサンテロック・ジュニア・チームの25号車アウディR8 LMSエボII。同5位に同じくアウディチームのトレゾア・オレンジ1の40号車が続き、ファントール／シェルドン・ファン・デル・リンデ／ウィーツ組32号車BMWは最終的に6位となった。
新車フェラーリ296 GT3は、AFコルセ・フランコルシャン・モータースの51号車が総合8位に。このひとつ後ろのポジションにダイナミック・GTフーバー・レーシングの54号車“992型”ポルシェ911 GT3 Rが続いた。メルセデスAMG GT3エボの最上位はメルセデスAMG・チーム・アコーディス87号車の総合13位だ。
プロカップ以外のクラスでは、総合7位に食い込んだコムトゥユー・レーシングの21号車アウディR8 LMSエボIIがゴールドカップを制したほか、同じくコムトゥユーの16号車アウディがシルバーカップウイナーに。プロ・アマカップはバーウェル・モータースポーツの78号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2が、ブロンズカップではピュア・レーシングの911号車ポルシェ911 GT3 Rがクラス優勝を飾っている。
ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・パワード・バイ・AWSの次戦第2戦はイギリス、ブランズハッチで5月13～14日開催される。当該イベントは週末に2度、60分レースが行われる“スプリント・カップ”の開幕ラウンドだ。
