豚熱で県が刑事告発 業者、感染疑い未報告 予防法違反容疑

 栃木県那須烏山市内の養豚場で2022年7月に発生し国内最多の殺処分となった豚熱(CSF)を巡り、相当数の豚の死亡など感染の疑いがあることを知りながら県への届け出を怠ったとして、県が家畜伝染病予防法違反の疑いで、農場を経営していた畜産大手「神明畜産」(東京都)と代表男性を県警に刑事告発したことが24日までに、関係者への取材で分かった。県は当時、複数の豚の死亡を匿名の情報提供で把握した。同社から報告はなく、悪質性が高いと判断したとみられる。捜査関係者によると、県警は同日までに告発を受理した。

 家畜伝染病予防法では、感染の疑いのある家畜が発生した際、都道府県への早期の報告を求めている。同法は違反した場合の罰則について、3年以下の懲役または300万円以下の罰金と規定している。関係者によると、県の告発状の提出は14日付。

 県は22年7月23日、那須烏山市内の養豚場1カ所で、豚熱を確認したと発表した。県は約1カ月半をかけて、発生した農場と関連農場で国内最多の計5万6298頭を殺処分した。

 県によると、豚熱発覚の端緒は同年7月21日、県にメールで寄せられた匿名の情報提供がきっかけだった。「6月に子豚が2800頭程度死んでいる」という内容で、県は情報提供の翌22日に立ち入り検査を実施して感染を確認した。

 発覚当初、農場側は「熱中症の疑いがあった」などと説明したとされる。関係者によると、短期間に大量の豚が死んだことを踏まえると県に報告するべき事案に該当するが、情報提供しなかったことを県が重く見たとみられる。

 東京商工リサーチ宇都宮支店によると、神明畜産は同年9月、関連2社とともに東京地裁に民事再生法適用を申請し、保全命令と監督命令を受けた。負債総額は3社で計574億6900万円に上り、畜産業としては和牛オーナー制度で経営破綻した安愚楽牧場に次いで過去2番目。23年3月、一部事業を除いて北海道の農業法人に吸収分割された。

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