ライカ、第42回ライツ・フォトグラフィカ・オークションを開催

ライカカメラ社は、第42回を迎える「Leitz Photographica Auction(ライツ・フォトグラフィカ・オークション)」を開催する。

今回は、2023年6月9日~10日にかけてドイツ・ウェッツラーで開催する。6月9日には「Modern Times」と題した写真作品のオークションを、そして10日には歴史的なカメラのオークションを開催する予定。

事前入札は

オンライン

、書面、電話にて受け付ける。オークション当日は会場での入札のほか、ライブオークションサイト(

www.leitz-auction.com

および

www.liveauctioneers.com

)でのリアルタイム入札も可能。

開催概要

  • 開催日時:2023年6月9日 18:00(中央ヨーロッパ夏時間)、2023年6月10日 11:00(中央ヨーロッパ夏時間)
  • 開催場所:ライツパーク(ドイツ・ウェッツラー)

今回は、2023年6月9日~10日にかけてウェッツラーにて開催する。アイコン的な写真家たちが撮影した写真と彼らが愛用したカメラにフォーカスを当てる。中でも写真家のジョン・バルマー、ウォーカー・エヴァンス、そしてテリー・オニールが撮影した写真作品とそのカメラが注目を集めているという。

バルマーとエヴァンスはともにブラックペイント仕上げのライカカメラで20世紀の歴史に残る重要な場面を捉えている。一方で、オニールが撮影した映画スターのポートレートは、栄華を極めたハリウッドの一端を切り撮っている。

また、アート愛好家は興味を惹かれるだろう、キング・ナードが彫刻を施した「ライカ MP "Planet Earth"」も出品される。

オークションハウスであるライツ・フォトグラフィカ・オークションは、ライカの社名を冠したオークションを年に2回主催し、ヴィンテージカメラと写真作品を取り扱っている。ヴィンテージカメラの場合、カメラ自体に宿る職人技に加えてその歴史的な重要性もまた興味の対象となるという。

ライカカメラ・クラシックス社の社長であり、傘下のオークションハウスであるライツ・フォトグラフィカ・オークションの社長も兼任するアレクサンダー・セドラク氏は、次のようにコメントしている。

セドラク氏:著名人が所有していたカメラは非常に人気が高いです。今回のオークションの焦点は、著名な写真家が愛用していたカメラとなるでしょう。

幅広いメーカーの歴史的な逸品が出品される中でも、オークションの主役はライカだという。

セドラク氏:ライカで世界を描くことは、それだけで魅力的です。しかし今回は"世界が描かれた"カメラもオークションに出品されます。

「キング・ナード」という別名でも知られるジョニー・ドウェルは、カスタム仕様のエングレービング(彫刻)を専門とするイギリス人アーティストだ。彼が「ライカMP」のトップとベースプレートを地球上の生物をモチーフにした特別なエングレービングで装飾したカメラが、6月10日のオークションに登場する。「アートとテクノロジーの関係」も今回のオークションのメインテーマとして掲げられている。

ルポルタージュ写真をカラー化した先駆者:ジョン・バルマー

ジョン・バルマー(1938-)は哀調を帯びたモノトーンだったフォトジャーナリズムを、カラーで豊かに彩った。イギリスの「サンデー・タイムズ・マガジン」のために彼が撮影した作品は、全国紙に挟み込まれる付録としては世界初のカラー版であり、ルポルタージュ写真における新たな時代の扉を開いた。

バルマーにとって、幼少期を過ごした故郷イングランド北部の工業地帯はインスピレーションの源だったという。「Manchester」や「Miners in Waldridge」などの作品は、ディテールに目を光らせるヒューマニストの観察者、というバルマーの名声を確立。いずれもオークション初日の6月9日に開催される「Modern Times」と題された写真作品のオークションに出品される。

そして、写真作品とともにバルマーが所有していたブラックペイントの「ライカM3」も出品される。

セドラク氏:ヴィンテージカメラコレクターの間では、数年前からライカのブラックペイントのカメラは絶大な人気を誇ります。著名人が所有していたことを考えると、この「ライカM3」はオークションのハイライトになるでしょう

このカメラは、同じくブラックペイントが施されたレンズ「ライカ ズミクロン f2/50mm」とセットでオークションに出品される。さらにバルマーの写真集「The North」も同じロットに含まれている。

Manchester, Johnn Bulmer
Leica M3 Black Paint outfit John Bulmer

レディメイド、ウォーカー・エヴァンスの「ライカM2」

このオークションのもうひとつのハイライトは、ウォーカー・エヴァンス(1903-1975)が所有していたブラックペイントの「ライカM2」だ。エヴァンスが1962年に購入して以来愛用し、35mmフィルムからより大判のフォーマットに切り替えるまで10年以上使い続けたものだという。

エヴァンスはアメリカ史上最高の写真家のひとりと考えられており、彼の作品はメトロポリタン美術館、ジョージ・イーストマン美術館、ポンピドゥーセンター、ニューヨーク近代美術館(MoMA)など、多数の美術館で展示されている。「Penny Pictures Display」という作品は、MoMAで開催された1938年の個展と1971年の回顧展の双方で展示された。

ライカカメラ・クラシックス社のフォトグラフィーエキスパート アンナ・ジム氏は、以下のようにコメントしている。

ジム氏:これはウォーカー・エヴァンスの最も有名な作品のひとつです。エヴァンスはアメリカ南部諸州を周遊した際に、サヴァナ市のとある写真スタジオのウィンドウディスプレイを撮影しました。〔既製品を表現の素材とする〕「レディメイド」手法で偶然生まれたこの写真のコラージュは非常にモダンでカジュアルなイメージで、ドキュメンタリーと芸術写真という区別に疑問を投げかけています。

エヴァンスは生涯を通じて、「ドキュメンタリー」という言葉は彼独自の芸術的な写真撮影スタイルを表現する仮の比喩に過ぎない、と考えていました。

エヴァンスのアプローチは当時革命的だと見なされ、ロバート・フランクやハリー・キャラハンといった後に続く世代の写真家たち、ベルント&ヒラ・ベッヒャーやトーマス・ルフなどポップアートの画家や同時代のアーティストにも影響を与えた。

「Penny Pictures Display」では1970年代の銀塩写真が出品される。これは元々、1974年からエヴァンスと一緒に仕事をしていたハリー・ランのコレクションに所蔵されていたものだという。

Leica M3 Black Paint Walker Evans
Penny Picture Display, Walker Evans

レンズの向こうのハリウッドスター

1977年、フェイ・ダナウェイはシドニー・ルメット監督の映画「ネットワーク」でアカデミー賞主演女優賞を獲得した。その晩ダナウェイは祝福の嵐に合い、パーティーをはしごして盛り上がった後、ようやくベッドに入ったのは午前3時。明朝にはフォトセッションがあったため、午前6時半にビバリーヒルズホテルのプールサイドに姿を現した。

今回のオークションでアンナ・ジムとともに写真作品を担当するカロライン・グシェルバウアー氏は、写真オークションのもうひとつのハイライトであるこの作品について次のようコメントしている。

グシェルバウアー氏:テリー・オニールが撮影したこの一枚は、キャリアの絶頂にいる彼女を描くと同時にショービジネス界の名声に隠された本質を暴き出しています。彼女がそれまで積み重ねてきた俳優というキャリアの頂点に、一夜にして突如登りつめることになった女性。この場面には少し憂鬱な気分も漂っています。オニールはこの写真を「The Morning After」と名づけ、これまでのアカデミー賞の写真の中で最高の一枚と呼んだのです。

テリー・オニール(1938-2019)は1970年代にロンドンからロサンゼルスへ移り住み、スターのポートレート写真家として名声を築いた。オニールはイギリス生まれの写真家で、亡くなる1年前にイギリスのライカとコラボレーションして35組の特別限定セット:「ライカMP」フィルムカメラ1台、「ライカ ズミルックスf1.4/50mm」レンズ1本、そしてオードリー・ヘップバーンの未発表写真1枚という構成をリリースした。

オニールが撮影した伝説的なフェイ・ダナウェイの写真は今回のオークションの「Modern Times」の一部として出品される。そして特別限定セットのうちの1セットは、6月10日のオークションに出品予定。

Leica MP Set Terry O'Neill
The Morning After, TerryT O'Neill

なお、次回の「Leitz Photographica Auction」は、2023年11月にウィーンで開催される予定。

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