大胆な変革で前へ進む日体大・藤田将弘監督「10年、20年と続く日体大バスケ部の文化を築き上げていくのが責務」

過去14度のインカレ制覇を誇る名門・日体大。近年は2008年の屈辱の2部降格から立ち直り、19年に1部復帰。そこから徐々に力を付けていき、昨年は21年ぶりの関東大学新人戦(ルーキーズトーナメント)優勝を飾った。この春には期待のルーキーも入学し、虎視眈々とタイトル獲得を狙う。

そんなチームは、新シーズンを前に大きな変化に踏み切った。それがロゴマーク、チームカラー、そしてユニフォームを含むウェア類のデザイン一新だ。チームを率いる藤田将弘監督に新シーズンの展望、そして変化に踏み切った経緯や思いを聞いた。【取材協力/スポルディング・ジャパン

新ロゴ、新ユニフォーム、新戦力。ポジティブな変化と共に前へ前へ!

──新チームが始動して少し経過しましたが、今年のスタイルは例年と比べていかがでしょうか?

「ライオンズのスタイルである速い展開に持ち込むところは変わりなくやっています。今年は4年生になる年だった小川麻斗(福岡第一)が千葉ジェッツとの契約に至ったということで、当初はどうなるのかなとも思っていました。ただ、彼が抜けたところをチャンスとして狙っている選手たちが気迫を持ってプレーしてくれているので、そういう面を含めて今は良い状態になろうとしているところ、という感じですね。1年生もレベルの高いところでやっていた経験がある選手たちなので、即戦力として期待したいです。

その中でも今年の一番の強みというとスピードですね。先ほど話したようにそれがうちのスタイルでもあるので、その色をより濃く出していければいいなと思っています。今年はインサイドの留学生が2人(ムトンボ・ジャンピエール〈東山〉とコネ・ボウゴウジィ・ディット・ハメード〈帝京長岡〉)になったので、その点でもタイムシェアをして集中力を高く保てる時間が長くなると期待しています」

──特に期待したい選手は誰でしょうか?

「1年生では小澤飛悠(中部大第一)ですね。今はまだあまり責任を負わせたくはないですが、彼は責任を負うべき逸材にはなっていくと思うので、大いに期待しています。あとは2年生の西部秀馬(東山)であったり、月岡煕(昌平)、石川響太郎(小林)、早田流星(福岡第一)たちは去年の新人戦で優勝したときに活躍したメンバーなので、今年も主力として使っていきたいですし、期待していますね」

新チームの主軸となる#7西部秀馬

──今年はユニフォームのデザインやカラーリングも一新されて、新たな決意と共に迎えた新シーズンだと思います。このタイミングで大きな変化に踏み切ったのはどうしてですか?

「ユニフォームやロゴっていうのはマークというのはチームの看板であり、精神になるものです。私はそういうところにも力を注いでいきたいという強い気持ちがありました。もちろん大きな変化だったので、決断に至るまでにはいろいろな理由がありましたが、中でも大きかったのがライオンズとしてのブランディングをしたいなという思いでした。みんなで同じものを着用することによってモチベーションが上がったり、帰属意識や一体感、連帯感が高まると思うんです。そこを、ライオンズとしてより強固なものにしていきたいという思いが僕の中にありました。

それでさまざまなメーカーさんとお話をさせていただく中で、スポルディングさんがその思いに対して一番協力的で、これから先も共に歩んでいけると思ったんです。実際にユニフォームやウェア類を作成していく中で、担当者さんと密にコミュニケーションを取らせていただいたので、私の中ではイメージ通りのものができたなという感じです。本当に協力的で良いものを作っていただけたので、すばらしかったです。加えて、アメリカのNCAAのようにカレッジスポーツを盛り上げたい思いもあり、アメリカで誕生し、歴史と実績のあるブランド“スポルディング”に魅力を感じました」

──カラーリングも昨年までのネイビー×ホワイトからブルー×オレンジに変更しました。その2色にはどんな思いが込められているのですか?

「まず、ブルーは日体大の大学カラーなので、採用しています。もう1色のオレンジに行き着くのには、色どうしの相性などもあったのですが、オレンジ色というのは非日常な色ですよね。エネルギッシュなカラーでもあるし、自然の中では木の幹や炎の色。それに、例えば食べ物であったらおいしそうに見えたり。ほかにも本能や落ち着きとか、人の五感をポジティブな方面で刺激する色がオレンジなのかなと思ったんです。今、オレンジ色ははやりのカラーではあると思いますが、そういうことよりも色の持つ意味やイメージがすごくよかった。それでブルー×オレンジの組み合わせにしたところ、想像通りの色に仕上がってくれましたね。ちなみにスポルディングさんのメインカラーもブラック、ホワイトと“オレンジ”だそうです」

──選手たちのリアクションはいかがでしたか?

「デザインについては、新しいものができ上がることに対しての喜びが選手たちの中では大きかったようです。先ほどカラーリングについてお答えしましたが、やはりブルー×オレンジの組み合わせには効果があったんだなと思いますね。着心地については実は今日(4月23日)の日筑定期戦が初めてユニフォームに袖を通すお披露目の日なので、試合が終わったら選手たちに聞いてみようかなと思います(笑)」

\--{新しいロゴとウェアたちと共に瞬間、瞬間を前向きに生きられるように}--

──藤田HCは「日本の大学バスケをアメリカのNCAAのようにしていきたい」という思いを持っていると伺いました。冒頭の小川選手のプロ転向というのは、ある意味ではNCAAに近付いているという見方もできます。

「そうですね。卒業を待たずにプロの世界に挑戦することに対しては、大学サイドとしてはポジティブな面もあれば、そうでない面もあります。もし、これから先にポジティブではない面が色濃く出ていくようであれば、何らかの制度を作っていかなければいけないとは思います。

4年先まで見据えて選手に声をかけているということと、選手個人の将来性というところのバランスは難しい部分で、今はまさにその狭間の時期という感じです。当然、選手に声をかけるときは日体大に必要な人材として大学に迎え入れているわけですし、彼らも私の許可で入学してきたわけではないです。大学入試や教授会を経て承認されて入ってきていて、中には奨学金をもらって入学してくれる学生もいます。そういう背景があるからこそ、道半ばで違うステージに行ってしまうというのは、私の心の中では財産を失ってしまったような気持ちにはなりますね。

でも、学生たちはBリーグでプレーしたいという夢を抱きながらバスケットをしていますし、そういう夢がある中で若くしてお声掛けいただけるというのはすばらしいこと。Bリーグと大学の双方が規定や規約などで何かを守っていかなければいけない時代はいずれ来ると思います」

守護神として日体大を支える#23ムトンボ・ジャンピエール

──今がまさに過渡期というわけですね。日体大としては2019年に1部に復帰して、今年で4年目になります。1部復帰後の歩みは順調ですか?

「私としては計画的にやってこられているので順調な歩みだと感じています。周りからは『少し遅かったね』『もう少し早く』というさまざまなご意見をいただきますが、私の中では今がベストです。上がっていくためにはチームとしての文化を作らなければならないですし、それを継承していく必要があります。その年だけのチーム作りではなくて、これから先の10年、20年と続く日体大バスケ部としての文化を築き上げていくのが我々の責務。時間をかけてしっかりと地に根を張って、強い幹を育てていくという思いで今は取り組んでいます。毎年ベストが尽くせたと実感するようにしていますね」

──今後、目指していく日体大の姿はどんなものでしょうか?

「競技としてはもちろん日本一というのがありますが、学生たちが『日体大を選んで、ここを卒業できてよかった』『みんなと一緒にバスケットができて良かった』と思われるチームになっていきたいです。その上で、そういう気持ちを抱ける仲間のみんなと優勝を目指す。この時間が大切だと思うんです。ゴールではなく、ゴールまでの道のりを大切にしたいなと思っています」

──昨年のインカレでは東海地区の中京大と名古屋学院大がベスト8に名を連ねました。年々、関東地区以外のレベルも上がってきていますが、大学バスケ全体の底上げという面ではどのように感じますか?

「だんだんと関東に集まるということだけではなくなってきていると思いますし、そうあってしかるべきこと。だからこそ、関東以外のチームがインカレの上位に入ってくるのはすばらしいですし、逆に関東の代表として我々も出場しているので負けられないという思いも強くなりましたね。

それから少し違う話ですが、見られる、見せるというところももっと意識していきたいです。試合のハイライトなどはもちろんですが、ロッカールームなどのコート外のところで彼らがどれだけアツい思いを持って過ごしているのかを皆さんに見ていただけるような仕掛けをしていきたいですね。人が何かに打ち込んでいる姿や思いを感じ取っていただけるようなシーンはぜひ見てほしいです」

──ありがとうございます。では最後に、今シーズンの展望や目標を教えてください。

「バスケットのところでは先ほども話した日本一を目指すことと、時間をもっと大事にしていきたいなと思います。この新しいロゴとウェアたちと共に瞬間、瞬間を前向きに生きられるようにしていきたいですね。今年は優勝を狙うべきチームになりつつあると思うので、優勝を奪還したい。選手にとっては『優勝したい』だと思うんですけど、僕にとっては“奪還”ですね」


新ロゴマークに込めた思い

昨年までは横向きのライオンをロゴにしていたのですが、今回は正面のライオンにしています。そこには前に向かって走りたいという思いを込めました。制作当時は意識的にその思いを込めたということはなかったのですが、無意識のうちに私の中で前に進むという思いがあったんだと思います。このロゴと共に、とにかく前へ前へ進んでいきたいですね。

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