「天才」「世界一」と呼ばれながら消えた「ある国」の6名

近年はSNSなどの発達もあり、10代の早い時期にスポットライトを浴びる選手たちが増えてきている。

しかしあまりに早い時期の評価というのは分からないもの。

ここでは、若い頃に「天才」「将来世界一になる」と言われながら伸び悩んだある国の選手たちを特集してみよう。

アデル・ターラブ(モロッコ代表/フランス)

ターラブが世界最高の選手になることを夢見たファンも少なくないだろう。

12歳の時から所属していたフランスのランスでプロデビューし、2007年にイングランドのトッテナムへ。当時チームメイトだったジャーメイン・ジーナスが「ジダンと契約したのかと思った」と驚くほどの逸材だった。

当時は若かった彼はQPRへローン移籍。ここでその巨大な才能を爆発させ、魔法のようなドリブルと天才的なプレースタイルでサッカーファンを魅了した。

だが感情の起伏の激しさや遅刻などの問題行動が頻発し、次第に立場を失ってしまう。後年、丸くなったプレーヤーとして活躍したが、かつての輝きはなく普通の選手になっていた。

モハメド・イハターレン(モロッコ/オランダ)

7歳でPSVの下部組織に引き抜かれた少年は、幼少期から「天才」「新たなスナイデル」などと呼ばれた。

17歳でプロデビューし、19歳でユヴェントス移籍。久保建英が27位だった『footballtalentscout』による「世界の10代サッカー選手トップ50」で4位に入るなど、その潜在能力は圧倒的だった。

だが2019年、父親を亡くした頃に重い鬱病を発症。現役引退するのではないかと囁かれるなど、そのキラキラとした輝きは急速に失われていった。

最近は悪名高い犯罪組織との関わりも伝えられ、2023年に2度目の逮捕をされるなど20代前半にしてキャリアは破綻状態にある。

イブラヒム・アフェライ (モロッコ/オランダ代表)

アフェライに「消えた」というは失礼かもしれないが、その期待の大きさを考えれば残念に思う人も多いだろう。

PSV時代の2004年に17歳という若さでデビューし、2005年に19歳にしてオランダ代表に初招集された。

「PSVで一緒にプレーしたなかで最高だったのは、絶対的にイビ(アフェライの愛称)だ。全ての練習でスターだったし、常に居残り練習もしていたよ。彼は断トツで最高だったね」と語るのは元同僚のオラ・トイヴォネン。

国内で圧倒的な実績を残し、2010-11シーズン途中に満を持してバルセロナへ移籍する。しかし当時世界最高だったチームにフィットできず、キャリアは急下降した。

そして2020年、34歳にして引退。「僕が望んでいたことは起きなかった。だけど今は幸せだ。遅かれ早かれこの時が来るのは分かっていた。それは美しいものだった」と振り返っている。

ザカリア・バカリ(モロッコ/ベルギー代表)

逸材が揃っていたベルギー育成年代の選手の中でもバカリは際立っていた。

PSV時代の2013年、17歳で迎えたオランダでのリーグ初出場でハットトリックという衝撃的なデビュー。同年にはベルギーのA代表でデビューを果たした。

モロッコ系の選手特有の繊細なドリブル、年齢を感じさせない決定力は10代のそれではなかった。当然ビッグクラブが放っておくことはなく、プレミアリーグのクラブと争奪戦のうえバレンシアに移籍する。

しかしそれ以降の彼が大きなインパクトを残したことはない。現在はオランダの下位クラブであるRKCでプレーする。

イスマイル・アイサティ(モロッコ代表/オランダ)

アフェライと共に天才アタッカーとして期待されたのがアイサティだ。

2005-06シーズン、17歳の時にPSVでデビュー。そのシーズンのUEFAチャンピオンズリーグではあのミランを撃破する原動力となり、その才能が世に広く知れ渡った。

英紙『ワールドサッカー』は2007年11月号で「最もエキサイティングな10代新星50人」を発表し、アイサティは2位にランクイン(1位はサディック・アダムズ)。

さらに19歳でPSVからアヤックスに移籍するというウルトラCも経験したが、その後は怪我や病気もあって大成しなかった。

ちなみに元リヴァプールのウサマ・アサイディは名前が似ていたためよく間違えられたが、こちらも伸び悩んでいる。

アキム・マストゥール(モロッコ代表/イタリア)

このテーマで彼ほど相応しい人間はいないだろう。

イタリア生まれのモロッコ人、アキム・マストゥール。かつてミランで天才として期待されていた神童だ。

ミランの下部組織で輝く才能を見せつけ、弱冠15歳にしてベンチ入り。圧倒的なテクニックを披露した動画が世界に拡散されると、天才少年として世界中で騒がれた。

その後クラブ最年少でプロ契約、16歳でモロッコ代表にデビューしたが、ミランではトップデビューを飾れず。以降は様々なクラブを渡り歩くも出場すらままならず、失踪も騒がれた。

マストゥールは近年、「マストゥールであることは簡単じゃないよ。ずっとスポットライトを浴びてきた。それが励みになることもあるけど、その一方で圧力でもある」と吐露した。

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24歳の彼は現在、モロッコの2部リーグでプレーしている。

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