衆参補選2勝3敗の可能性もあった! 「岩盤支持層」はどこへ向かうのか?|和田政宗 今回の衆参補選の結果を経て、解散総選挙は早いのではないかとの観測も流れているが、もし次の衆院選において、維新と立憲で候補者調整などが行われれば、自民党はかなりの厳しい結果を覚悟しなければならない――。(サムネイルは茂木敏充氏Twitterより)

千葉5区は20%以上の自民支持層が逃げた

4月23日に行われた衆参補選・統一地方選は、自民党にとって厳しい結果となった。

衆参補選は4勝1敗となったが、参院大分選挙区では341票差の勝利、衆院千葉5区でも僅差での勝利など、2勝3敗となってもおかしくなかった。衆院千葉5区は、野党候補が乱立していなければ野党候補に勝利された可能性が強いし、衆院和歌山1区においては、初めて維新に議席を獲得された。

今回の選挙から分かることは、自民党の支持者離れである。千葉5区において当選した英利アルフィヤ候補は、NHKの出口調査によれば、自民党支持層の60%余りからしか支持を得ていない。昨年の参院選千葉選挙区においては、自民候補2人の合計で自民支持層の80%台後半の支持を得ていたから、20%以上の自民支持層が逃げたことになる。

これは、衆院和歌山1区においてもそうだ。門博文候補は、自民党の支持層の70%台半ばの支持に留まった。昨年の参院選和歌山選挙区では、自民候補は自民支持層から90%余りの支持を得ているから、こちらも20%近くの自民支持層が逃げたことになる。

では、自民支持層が逃げた理由は何か。各種出口調査や世論調査からは、防衛費増額における増税や、異次元の少子化対策における社会保険料引き上げについて、反対の声が多いことが分かる。そして、この中には、アベノミクスを支持してきた自民党支持者が含まれる。

私は全国各地に街頭演説などで応援に入った際、安倍政権を強く支持してきた自民党支持者の方々から以下の点を指摘された。安倍晋三元総理は、防衛費増額については増税ではなく防衛国債発行を提唱していたこと、そして、消費税増税で経済にマイナス効果をもたらしてしまったことから、働く人や企業の負担が増え実質増税ともいえる社会保険料引き上げについても安倍政権であったらこうならないであろうという思いである。

まだ異次元の少子化対策の財源については何ら決定されているものではないが、社会保険料の引き上げが軸ではないかと報道されており、社会保険料の引き上げはあり得ないとの考えは自民党支持者の中にも広がっている。

さらに、日本学術会議法改正案の今国会提出が見送られたことに対する失望も自民党支持者の中で強い。安倍政権、菅政権における既得権改革を支持してきた人からは、改革の後退と弱気の政権であるとみなされている。

選挙前の約2倍となった維新の強さ

これら安倍政権を強く支持してきた自民党支持層は、安倍政権においては「岩盤支持層」であり、内閣支持率を支え、各種選挙の際にも自民党を支えてきた。

しかし、こうした方々が自民党支持から逃げていることは極めて恐い。昨年の参院選における参政党の議席獲得は、こうした自民党支持層の一部が自民党から離れ参政党を支持したことから起きており、今回、衆院和歌山1区においても、自民党支持層の20%は維新候補を支持した。

このような傾向は統一地方選の結果にも表れている。維新は、所属地方議員600人以上の達成を掲げ、達成できない場合には馬場伸幸代表が辞任するとしていた。当初は達成は困難ではないかとみられていたが、終わってみれば合計774人となり、選挙前の約2倍となった。

吉村洋文大阪府知事を東京にも応援演説で投入するなどし、東京の区市町議選では70人を擁立し67人が当選するという驚異ともいえる結果を得た。神奈川においても県議選や横浜市議選で初めて議席を獲得するなど躍進した。維新が関西のみならず、首都圏においても基盤を築きつつあることは、自民党として警戒しなければならない。

地方議員が多く誕生すれば、その活動を足がかりに各選挙区において国会議員を誕生させることができる。維新が躍進したのは、イメージ戦略、ブランディングが効果を発揮している。維新の共同代表を務める吉村洋文大阪府知事の清新なイメージと、改革を言い続ける姿勢は、平成24(2012)年の衆院選で一気に54議席を獲得した日本維新の会ブームを上回る支持を集める勢いとなっている。

参政党の基盤はまだ決して強くはないが

さらに、参政党も統一地方選で新たに100人が当選し、所属地方議員数は124人となった。街頭などでの徹底した露出戦略や、自民党から離れた保守層などから支持を得て躍進した。しかし、参政党の基盤は現在は決して強いものではなく、どう足場固めをしていくかが重要となる。

例えば、衆参両院で最大36人を誇った「みんなの党」は、結党2年後の統一地方選において、道府県議選で41人、政令市議選で40人を誕生させている。一方、参政党は、道府県議4人、政令市議3人に過ぎない。まだ国会議員をあちこちで誕生させるまでの勢いにはなっていない。

こうした中、自民党はどのように基盤を強化することが必要なのか。それはやはり、地道な活動により地域における支持の足腰を強くすることであると考える。平成24(2012)年の衆院選以降、自民党は国政選挙においても地方選においても、ほぼ追い風の中での戦いであった。「自民党」と旗を掲げ、街頭活動をしていれば当選するという以前の第三極的な戦い方が多くなってしまった。

しかし、これは風が変われば一気に吹っ飛んでしまう戦い方であり、今回の統一地方選ではそうした候補より、地道に「どぶ板的活動」をしてきた議員が多くの得票を得て当選した。維新の牙城となっている大阪を中心とする地域において自民各議員が議席を取り返すのにもこうした地道な活動が重要であるし、自民党が第三極の躍進を食い止めるためには、全国的にこうした活動が必要だ。

今回の衆参補選の結果を経て、解散総選挙は早いのではないかとの観測も流れているが、もし次の衆院選において、維新と立憲で候補者調整などが行われれば、自民党はかなりの厳しい結果を覚悟しなければならなくなる。繰り返しになるが、自民党は地道で丁寧な活動を今一度しっかり構築することが重要である。自民党を中心とする政権を維持していくための正念場だ。

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和田政宗

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