40歳で発達障害と診断、画家として生きる福井県の女性が自叙伝 劣等感や子育ての苦労、自身の性格…前向きになれた経緯つづる

発達障害の診断後に画家として活動を始めた経緯などを自叙伝にまとめた辻順子さん

 福井県坂井市坂井町の画家、辻順子さん(48)が、自身の発達障害や絵を描き続けている経験を本にまとめた。「自分は価値がない人間だと思ってきたが、絵を描くことで私らしく生きていいんだと思えるようになった」。同じような障害に悩む子どもや親たちに読んでほしいと願っている。福井市美術館で開いている個展で販売している。

 専業主婦だった辻さんは40歳の時に発達障害と診断された。障害について知ってもらおうと、2019年4月、診断前の苦悩や障害の特徴などをつづった自叙伝を制作した。

 自叙伝は大きな反響を呼び、初めて自分の存在を認められた気がしたという。同年6月には地元の文化祭に趣味の絵を出品。創作意欲が湧き上がり、同8月に初めて個展を開いた。「絵を買いたい」という人も現れた。

 現在は年に数回、個展を開く。独特のカラフルな色合いは「Jun Color(ジュンカラー)」と呼ばれる。「障害が分かったから、人と違う理由に納得ができて、自分ができることをやろうと画家という道を歩めた。分かっていなかったら、私はこの世にいないかもしれない」

 画家として前向きに生きられるようになった経緯を改めて形にしたいと、2冊目を書き上げた。劣等感でいっぱいだった学生時代や家庭環境、両親や兄から見た辻さん、子育ての苦労、自身の性格、絵を始めてからの出会いなどを記している。

 辻さんは読み書きが苦手な「ディスレクシア」で、指で文字を押さえないと読めない。個展を通して知り合った、学校の保健室で勤務経験があるマチコさん(福井県坂井市)が、今回の本作りに協力してくれた。

⇒ディスレクシアの子どもの負担軽減へタイピング習得用アプリ開発

 22年の文部科学省の調査によると、公立小中学校の通常学級に在籍している発達障害の児童生徒は推計8.8%。学生時代に不登校を経験している辻さんは「みんな違って当たり前。努力で解決できないこともある。私の経験が子どもたちの参考になれば」と話している。

 自叙伝には辻さんの作品も掲載している。46ページ、1500円(送料別)。福井市美術館での個展は4月30日まで。問い合わせはメールアドレスdonguri.acorn.530@gmail.com

© 株式会社福井新聞社