キイトルーダ、腎細胞がん術後補助療法で有効性を示す。第3相で主要評価項目達成

4月8日、メルク社の抗PD-1阻害剤キイトルーダ(pembrolizumab)が、腎細胞癌(RCC)術後治療を対象とした第3相KEYNOTE-564で主要目標達成、有効性が示されました。同剤は、3月末にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前術後治療を対象で米国FDAから非承認通知を受け取っております。

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進行性腎臓がんの手術後の早期段階での使用への有効性

キイトルーダは、ファイザー社のInlyta(Axitinib)と並んで、進行性腎臓がんの第一選択薬として、すでにFDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていますが、今回、そのキイトルーダ、手術後のさらに早期の段階での使用の有効性が示されました。
メルク社が4月8日木曜日に発表したところによると、キイトルーダ単剤療法は、初期の腎細胞がん患者が腎臓を摘出した後の無病生存期間で、プラセボを上回りました。

第3相Keynote-564試験の中間解析で示された無病生存期間の延長は、統計的に有意であり、臨床的にも意味のあるものであったと、メルク社は述べています。メルク・リサーチ・ラボラトリーズのチーフ・メディカル・オフィサーであるロイ・ベインズ医学博士は声明の中で、以下のように述べています。

「PD-1阻害剤が、腎細胞がん患者のいわゆるアジュバント(術後補助)において、腫瘍の再発を防ぐ効果を示したのは初めてである」

詳細な結果はまだ発表されていませんが、メルク社は承認申請を当局に提出すると述べています。また、本試験では、主要な副次評価項目である、キイトルーダによるアジュバント治療が患者の延命につながるかどうかについても引き続き検討します。

オプジーボ併用療法に対抗する強力な武器に

キイトルーダは、2年前にInlytaとの併用療法によるファーストライン治療としてFDAの承認を得て、腎細胞がんの治療分野に参入しています。数週間前、メルク社は、キートルーダを、エーザイと提携しているもう一つのチロシンキナーゼ阻害剤であるLenvima(レンビマ;lenvatinib、レンバチニブ)と併用できることを示す新しいデータを発表しました。

この併用により、ファイザーの標準治療薬であるSUTENT (スーテント;sunitinib malate、スニチニブ)と比較して、死亡リスクが34%減少しました。

今回の結果により、メルク社はブリストル・マイヤーズ・ スクイブ社のOpdivo(オプジーボ;nivolumab、ニボルマブ)のCTLA4免疫療法のYervoy(ヤーボイ;ipilimumab、イピリムマブ)との併用、もしくはExelixis社のチロシンキナーゼ阻害薬Cabometyx(カボメティクス;cabozantinib、カボザンチニブ)との併用に対抗する新たな武器を得ることができたと言えます。

期待されるがん免疫のアジュバント療法市場での有効性。潜在的市場を目指し競争も激化

PD-1/L1阻害剤の開発企業は、次の成長段階に進むために、手術の前後を問わず、より早い段階での効果を示すことを目指しています。腎細胞がんのアジュバント(術後補助)を対象としている臨床試験だけでも、ロシュはTecentriq(テセントリク;Atezolizumab、アテゾリズマブ)のIMmotion010試験を、アストラゼネカはImfinzi(イミフィンジ、Durvalumab、デュルバルマブ )単剤療法と自社の抗CTLA4抗体tremelimumabとの併用、ブリストル・マイヤーズ ・スクイブ社は、オプジーボとオプジーボ・ヤーボイの併用療法をプラセボと比較するCheckMate-914試験を実施しています。

メルク社のキイトルーダは現在、腫瘍を完全に除去した後のメラノーマを対象としたアジュバントの適応があります。同社は最近、Keynote-054試験において、この薬の適用により、中央値3.5年の追跡調査の結果、65.3%の患者が転移性疾患を発症せずに済んだことを示しています。

注目されるFDAの判断は?

しかしながら、先月FDAがトリプルネガティブ乳がんの手術前と手術後の両方に対してのキイトルーダの適用申請を却下しています。FDAはこれまで、キイトルーダのがん再発抑制効果に関する試験データが未熟で、ネオアジュバントとアジュバントの効果を区別できない試験デザインになっていると懸念を示していました。

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