地方選惨敗後の「共産党声明」が“ヤバすぎる”|松崎いたる 統一地方選挙で惨敗した日本共産党。だが、選挙翌日に出された「声明」は驚くべきものだった。もはやできないとわかっていながら、突き進むしかない“玉砕政党”の深刻すぎる実態!『日本共産党 暗黒の百年史』の著者で元共産党員の松崎いたる氏による「こんなに変だよ日本共産党」第4弾!

91議席減でも他人事

統一地方選挙が終わった。案の定、日本共産党は敗北した。

4年前と比べて、東京の区議選で13議席減、一般市議選挙で55議席減、町村議選挙で23議席減で合計91議席減という大幅後退だった。

選挙結果が確定した4月24日に発表された党中央委員会常任幹部会の声明「統一地方選挙後半戦の結果について」では、「多くの候補者を落選させたことは、悔しく残念であり、おわびを申し上げます」としおらしいことを言っている。しかし、誰ひとりとして幹部が敗戦の責任を取ろうとしないところが、この党らしいところだ。

だいたい「私たちは、今回の統一地方選挙の結果を、日本共産党の封じ込めをはかる大逆流との生きた攻防のプロセスのなかでとらえることが大切だと考えています」(同声明)などと、他人事のような態度なのだ。

「生きた攻防のプロセス」というのは、ひと昔前まで党内でよく言われてきた「階級闘争の弁証法」の言い直しに過ぎない。共産党員以外の人にも分かるように〝通訳〟すると、「がんばっても負けることもあるから、落ち込むな」くらいの意味になる。

だが、今回の敗北の原因は「攻防のプロセス」などという言い訳はまったく通用しない。個々の地域の選挙の勝敗は、その地域ごとの要因があり、落選は、それぞれの候補者、選挙対策担当者の責任が大きいだろう。しかし、今回の選挙では、全国ほとんどの地域で、得票を減らし、議席を減らしているのだから、個々の選対に原因があったとはとても言えない。志位和夫委員長をはじめとする党中央の指導部にこそ敗因があるのだ。

党を見限る岩盤支持者たち

「日本共産党の封じ込めをはかる大逆流」も、志位指導部自らが起こしている。党首を党員による直接選挙で選ぶことを主張した党員を問答無用に除名した問題だ。

この除名問題でこれまで固い党支持者だった人たちが、党を見限っている。

西郷南海子氏は、「安保関連法に反対するママの会」発起人としてたびたび「しんぶん赤旗」に登場し、共産党議員らへの応援の弁を発表してきた。その西郷氏が統一地方選前半戦(知事選、県議選)投票日翌日の4月10日、ツイッターにこんな投稿をした。

「西郷南海子@minako_saigo 実は今回、わたしは共産党に入れませんでした。規約・除名問題からです。『規約に同意して入党しているだろう!』と言うのは『校則分かってて入学してるだろう!』と似ています。中から変えるというのも無理な場合があります」。

除名問題についての党の反論も踏まえての主張だ。共産党に期待している人にとって「除名」こそが裏切り行為であることを志位指導部は理解しようとしていない。

「話し合い」を放棄しておきながら「話し合い」を要求

共産党は中国や北朝鮮による軍事的脅威について、「憲法9条の精神による話し合いで解決を」と主張し、防衛力の強化に反対する政策を掲げている。しかも、「大軍拡反対」を地方選挙の争点にまでしようとした。

国政と地方政治は関係ないとは言えないにしても、地方選挙で、地方議員候補が国政上の問題である「防衛力」の是非に力を入れれば入れるほど、肝心の地方に関する政策はおろそかになる。「軍事費削って、教育にまわせ」というのは共産党のおなじみのスローガンだが、住民からすれば、「軍事ばかり語らないで、もっと地元地域のことを考えてほしい」という本音だろう。

しかも「外交が大事だ」「話し合いで解決しろ」と言っている共産党が、異論を唱える党員と話し合いもせずに除名にしてしまった。また、もともと、中国共産党や朝鮮労働党とは、〝兄弟党〟を自称するような友好的な関係にあったが、日本共産党は現在、両党との関係を断ち、「話し合い」を放棄している。自分たちがしようとしない「話し合い」を一方的に政府に要求している共産党の身勝手さを有権者たちはちゃんと見ているのではないか。

とんでもないホラ吹き

こうした分析を拒否したままだから、素直に負けを認めることもできない。

声明は「わが党が獲得した得票率は、4年前の比較では後退しましたが、22年の参議院選挙の比例代表の得票率との比較で前進していることは重要です」と述べ、「22年の参議院選挙の比例得票率と今回の選挙で得た得票率を比較すると、道府県議選では7・2%から12・0%へ、政令市議選では7・5%から10・7%へ、区市町村議選では7・2%から8・1%へ、それぞれ伸ばすことができました」などと〝成果〟を強調している。

しかし、地方選挙の結果を国政選挙の結果で測るのは無理がありすぎるだろう。候補者の数と組み合わせ、有権者の意識……、どれをとっても国政選挙と地方選挙は違うのだ。政党支持の度合いを見る指標としても、両者を比較するのは不適切だ。政党名を書いて投票することもできる参院の比例選挙では有権者は政党への意識も大きいが、地方選では政党よりも候補者個人が強く意識される。地方選で共産党候補への得票率が参院比例票よりも増えたということは、逆から言えば、政党を意識する比例選挙になれば、共産党は得票を減らすことになるということでもある。

そうした数字のカラクリを隠したまま、声明は党員たちに向けて「今後の前進・躍進にむけた足掛かりとなるものです」などと強弁するのだから、とんでもないホラ吹きだ。

「130%の党づくり」というむちゃぶり

もっとも声明には「私たちは、最大の教訓にすべきは、党の自力の問題にあると考えています」との反省の弁に見える言葉もある。だがこれも志位指導部が反省しているのではない。〝党に自力がないから選挙に負けた。だから党員たちはもっと党勢拡大をがんばって自力をつけるようにしろ〟という末端の党員に向けたメッセージになっている。

志位指導部は党員たちにどんな党勢拡大を要求しているのか。

党員、赤旗(日刊紙・日曜版) 読者を4年前よりも130%増加させるという目標だ。しかもこの目標を来年1月に予定されている第29回 党大会までに達成させるという。

しかしこの「130%の党づくり」はまったく成功していない。今回の声明でも現状は「4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者」であることを認めざるを得ない。ここからどうやってわずか半年余りで130%を実現できるのか? 声明はその具体的な方策を示すことはできない。ただ「統一地方選挙の結果は、「130%の党づくり」の緊急で死活的な重要性を、明らかにするものとなりました」とか、「選挙の後退の悔しさは、党勢拡大で晴らそうではありませんか」などというから文句を叫ぶだけなのだ。

そもそも「130%の党」づくりなどというのは土台無理な話だ。人口減少の時代において、共産党のみならず、どんな組織も人集めに苦労している。工場や商店では労働力が不足して外国人労働者に頼らざるを得ない。大学は新入生が集まらず定員割れが常態化している。新聞や雑誌も購読者が減り、部数減や廃刊を余儀なくされている。そんな時代に共産党だけ、党員や赤旗読者が増えるという〝魔法〟があるわけがない。そんなことくらい、〝科学的〟社会主義の党ならわかりそうなものだ。

驚愕の「赤旗投書欄」

できないとわかっていながら、党の方針を信じて突き進むしかないのが今の共産党の実態だ。

選挙結果を伝える4月24日のしんぶん赤旗の投書欄を見て、私は驚いた。投書の主は埼玉県在住の76歳の男性党員である。見出しは「大学の入学式 民青お手伝い」。

冒頭部分を引用すると「民青同盟への加入を訴える宣伝を地元大学の入学式に行いました。スーツ姿の新入生に100枚を超えるパンフを配布し、対話も積極的に。『入学時にはどれほどのお金を?』『政治に望むことは?』などなど」。

投書の結びは「民青が社会進歩のために活動する若者の集団であることを伝え、信念をもって大学生活を送れるよう励ましました」とある。

民青(日本民主青年同盟)は、日本共産党を相談相手とする青年組織とされる。実態は共産党の下部組織だ。若年者を党員にする前に民青に加盟させ、党の綱領・規約を学ばせるのである。

その民青の同盟員拡大に76歳の後期高齢者が参加しているのが、今の党の実情だということだろう。だが、そんなことをすればするほど、若者たちは民青や共産党から遠ざかっていくだけだ。そうした現実さえ、高齢党員たちには見えないのだ。

赤旗は廃刊、党名変更のすすめ

共産党が人口減少社会、超高齢化社会の中で生き残ろうとするなら、そうした社会の現実に即した活動に改めていく必要があるだろう。

高齢化によって活動の担い手が不足している問題には、活動量そのものを減らす必要がある。そのためにはしんぶん赤旗の宅配をやめることだ。それが嫌なら廃刊するしかない。

また、ビラ配り、ポスター張りなどを党員の無償ボランティアだけに頼るのではなく、有償で業者に委託することも考えるべきだ。資金が必要になるが、政党助成金を受け取るようにすればいい。

そして何と言っても、若い人たちに注目してもらえるように党名を変更すべきだろう。百年使い古された「共産党」の名を捨てることが絶対に必要だ。

こうした改革は、選挙で選ばれた党首でしか実行できないかもしれない。いずれにせよ、自己改革を拒否する党には未来はないことを、志位委員長は肝に銘じるべきだ。

松崎いたる

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