舞台【こと~築地寿司物語~】シリーズ最新作『明日への轍』いよいよ開幕 明日を信じて生きる、寿司がつなぐ絆。

シリーズ5作目となる今作【こと~築地寿司物語~明日への轍】は2作目、3作目と鳳恵弥と夫婦役を演じて 大好評を得た極楽とんぼの山本圭壱が復活。シリーズ1作目より皆勤賞出演(3、4作目は日替わりゲスト)で主演の鳳とは10数年来の付き合いプライベートでも親交の深い元AKB48の市川美織や特捜戦隊デカレンジャーの林剛史も作品を盛り上げる。

開演前のアナウンスが終わると、ニュースを読む声が。内容は株価の暴落、バブルが弾けた時代、築地玉寿司も例外ではなく、このバブル崩壊のショックを受けている。借金が返せない、銀行の人が来る、どうしたらいいんだ、と頭を抱える孝二朗(林剛史)。過去公演を何度か観ている観客は、もう察しがつくはず、「うわ〜」とびっくり。サプライズな登場、この物語の主人公・こと(鳳恵弥)。亡くなったはずなのに…と驚く息子。早速、ゲキを飛ばす。そして場面は変わり、グッと過去へ。「築地玉寿司」の前身である「玉寿司」は、初代・中野里栄蔵が1924(大正13)年に創業。栄蔵(山本圭壱)とその妻・こと。常連が賑やかに集う元気な寿司屋。

そして、子供も元気いっぱい、順風満帆な様子。しかし、子供が急逝、激しく落ち込み、悲しむ栄蔵、こと。時代は戦争へ。

店の要の板前・小野寺茂(亀吉)が兵隊に。そんな折に今度は栄蔵が急に病で亡くなる。そして東京大空襲、店はもちろん、東京は、築地は焼け野原と化した。

焼け跡から栄蔵の包丁が見つかった。握るしめること、再起を誓い、奮闘する、と言うのが大体の流れ。

早々に店のシーンでリアル4代目がやってきて(笑)、寿司を食べる、つまり、フィクションの祖父と祖母、リアル孫の共演でゲネプロにも関わらず、客席から笑いが起きる。この舞台ならではのお楽しみシーン。元気いっぱいで野球が大好きな長男が手の施しようもなく亡くなるシーンでは、ことの慟哭が胸に刺さる。

だが、どうにか立ち直った矢先に栄蔵が胸を押さえて苦しみ、亡くなる。ことは栄蔵が酒を飲んで寝てしまったのだと思い込み、体を揺すってわかる、夫の死。ここで立ち直れない、ということもありうるが、周囲の人々や子供たちの存在で、ことは立ち上がる。そしてことは自らを奮い立たせる。また、戦後、板場に立つも「女の握った寿司なんか食えるか」と言って出ていく客も。その一方で脚を悪くした復員兵と思しき客が寿司を食べて感動する。

かつて栄蔵の寿司を食べた客だった。その客がことに礼を言う。そういったやりとりは心が熱くなり、温まる。時代は流れ、銀座に出店するエピソード、また、末広手巻の誕生話、昨年の公演でも取り上げられていたが、何度観ても感心する。

また、登場人物たち、この作品は再演というのはない。築地玉寿司の歴史をあらゆる方向から見せる。よって、第一弾から観劇していても、”同じ”ではないので、新しい発見がある。前回(第4弾)はコロナ禍真っ只中で4代目が苦悩する姿から始まったが、今回はバブルが弾けた時代から(懐かしい髪型も!)。そして舞台で出される寿司は、もちろん、本物の築地玉寿司のお寿司!!キャストがお寿司を食べるシーンはリアルに美味しそう(笑)。上演時間は休憩なしの約2時間。

ミュージカルではないが、主題歌「明日はきっと」、挿入歌「To Reach」は作曲は木根尚登、作詞は鳳恵弥。元気が出る楽曲で客席から手拍子。創業100年を迎える老舗・築地玉寿司、次の100年に向けて!なお、当時の味を楽しめる『栄蔵握り』は江戸前寿司の本来の味。特に煮穴子、酢で締めた小肌、づけ鮪はぜひ!

ゲネプロの後に簡単な会見があった。コメントは以下の通り。

中野里陽平(4代目)
「今作はこれまでの100年の歴史がまたギュッと詰まった感じで濃厚な物語でした。私たちもこのストーリーは大切にこの舞台もずっと応援していきたいと思います。」

園田英樹(総監修)
「玉寿司の物語は2作目の作演出に続き、関わらせて頂くのは2作品目となるのですが、この物語が面白いのは1つの100年の物語の中で、日本の変化、日本そのものが見えてくる。こういう物語はずっと続いていくといいなと今回も関わらせて頂きました。」

溝口雄大(秀平役)
「今回はこのシリーズ5作目ということですが、僕は初参加でさらにこの、隣にいらっしゃいますけど、4代目、実際にいらっしゃる方を演じるということで緊張もしましたが、とても勉強になりました」

亀吉(小野寺茂役)
『僕は1作目から皆勤賞で参加をさせて頂いているのですが、毎回違う役柄を演じさせて頂くことで、本当にこの物語にどっぷり浸かれているように感じています。今回は本当に良い脚本で、稽古前に読ませて頂いた時にもう号泣してしまいました。』

黒江心温(福山幸子役)
『私はこの作品が初めての舞台なのですが、すごくやりやすいというか、本当に沢山のことが学べて、この舞台が最初で良かったなと、いい作品なのでもっとたくさんの方に観て頂きたいなと思います』

水瀬紗彩耶(福山佳代役)
『今回は初めて台本を読んだ時も思ったのですが、昭和の人の強さというか力を合わせて困難を乗り越えていくとかいうのが周りにはあまりなくって、こうして作品に参加をさせてもらえることで、沁みてくるというか、私も実はけっこうネガティブな性格なんですけど、この物語を読んで、セリフを発して、そしてみんなの姿をみていると明日も頑張ろう!という元気を貰えています』

佐藤茜(一徳役)
『ことさんと栄蔵さんの息子役ということなのですが、とても難しい役柄でした。ですが、その人生でその後のことさんと栄蔵さんの礎になったというか、築地のみんなに愛される存在として役を全う出来たらと思っています』

林剛史(孝二朗役)
『ことさんに通じるものというか、僕は母子家庭で育ったのですが、なんだかことさんを通じて改めて母親は強いなというのを感じています。そういう意味では今回は残念ながら来れないのですが、母親にこの作品を観てもらえたら本当に喜んでくれただろうなと思って、そこに届くように演じていきます。』

市川美織(弥生役)
『大人になった弥生役の市川美織です。幼年役を演じる子供弥生ちゃんにいつ背を抜かれるかとヒヤヒヤしながら本番を迎えましたがまだ大丈夫です。私はこの作品の第1作目に弥生ちゃんを演じさせて頂いて、その時には鳳さんとも10年ぶりの共演を果たさせて頂きました。2作目は別の役柄でしたので、弥生ちゃん役は7年ぶりとなります。それこそ私も3作目、4作目はゲスト出演でしたが地味にシリーズ皆勤賞継続中です。』

山本圭壱(栄蔵役)
『寿組リハーサルはやっと終わったと言うことで、今日の夜に司組のリハーサルを終えると明日からは遂に8公演となります。是非、毎公演を観て頂きたいと思います。舞台は1回たりとも同じ公演は御座いません。え~何故かと言えば、今回も私もたくさん喋っておりますので、えー色々毎公演違うことを言ってみたりとか(笑)でも、鳳さんの稽古を見ていると、ある泣き崩れるシーンがあるのですが、鳳さんは稽古でも毎回しっかり泣くんです。しかも同じポイントで、同じ熱量で、それを見ていると、なんかもう凄すぎて、何が本当の姿何だかわからなくなるみたいな、女は怖ぇなと(笑)。』

鳳恵弥(こと役・脚本・演出)
『本日はこんなに多くの皆様にご観劇を頂きまして有難う御座います。この作品も7年目を迎えまして5作目となりますが、コロナはもちろん沢山のことを乗り越えて、本当にみんな家族のような。まぁ、山本さんはプライベートでは、新しい家族を得て幸せそうですが、私も家族が増えたようで勝手に嬉しいです。さておき、この作品は本当にたくさんの方に支えられていると実感しています。この作品は人、食、町、幸せから悲しみまで多くの事柄に支えられてこの世の中は成り立っていて、人の人生は出来ているそんなことが伝えられるのではないかと思っています。作品を通じて、皆さんそれぞれの今日を大切に思い、迎えられる明日を楽しみに感じて頂けましたら嬉しいです。』

イントロダクション
東京大空襲の翌朝、焼け野原に立つ女性”こと”は日本初の女寿司店店主にして自ら板場に立って店を切り
盛りし、まもなく100年目を迎える築地玉寿司の礎を築いた女性。
愛する夫を亡くし、店を支える板前を戦地に取られ、店さえも容赦ない無差別爆撃に燃やされた彼女を支え
たのは夫の最後の言葉「玉寿司を頼むよ」の一言だった。
日本橋からの移転後、東京の食を支え80余年、世界の築地と呼ばれるまでになった築地市場、この地で戦
後の焼け野原から女手一つで明るく強く一家を支え、夫との約束ののれんを子供に、そして孫に引き継いだ実際
にあった真実の愛と絆の物語。NHKスペシャルでも伝説の女板前として取り上げられ大変な話題になって参り
ました。モデルとなった築地玉寿司の全面協力のもと、日本人の強さと暖かさをぎゅーっと詰めこんで日本の全ての世代に贈ります。

<2019年公演レポ>

<2022年公演レポ>

概要
日程・会場:令和5年4月27日(木)~30日(日) 築地ブディストホール
主演/脚本/演出:鳳恵弥
総監修:園田英樹
出演
山本圭壱・市川美織・林剛史・佐藤茜・亀吉・水瀬紗彩耶・黒江心温・溝口雄大
主催:舞台【こと~築地寿司物語~】製作委員会
公演ツイッター:https://twitter.com/koto_sushistory
築地玉寿司公式サイト:https://www.tamasushi.co.jp
舞台撮影:編集部
会見写真:主催より

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