<金口木舌>くわえたスプーンの色は

 韓国に「さじ階級」という俗語がある。生まれた時にくわえていたスプーンは金か銀か、それとも銅か。親の職業や経済力でスプーンの色は決まる。本人の努力だけではいかんともし難い境遇を言い表している

▼似た言葉は日本にもある。大手出版社・小学館による2021年の「大辞泉が選ぶ新語大賞」は「親ガチャ」。販売機から何が出るか分からないカプセル玩具の中身を親に例えた。子どもは親を選べない

▼23日は統一地方選と同時に衆参両院議員の補選もあった。閣僚経験者の息子が選挙前に家系図をインターネットに掲示して批判を浴びた。金色のスプーンを誇示したかったか

▼世襲政治家の岸田文雄首相は息子を秘書官に据えている。妻はこのほど公費で訪米した。どんな話をしたのか。成果はあったか。会見を開いてはどうだろう

▼芸能人の中には「親の七光り」と揶揄(やゆ)されるのを嫌って出自を隠し、才能磨きに腐心する人もいる。政治家も力があればスプーンの色を誇る必要はない。見せかけだけなら、そのうちメッキがはがれてしまう。

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