菊地凛子が体現 半ば人生を諦めて生きてきた女性の思いと孤独 「658km、陽子の旅」予告

2023年7月28日より劇場公開される、「バベル」で米アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされ、その後も国際的な活躍を続ける菊地凛子の日本映画単独初主演映画「658km、陽子の旅」の、本予告映像が公開された。

映像は、父の出棺まであと12時間という状況で、主人公の陽子が、20年以上会うことのなかった父との別れのために、東京から故郷の青森を目指す様子が切り取られている。ヒッチハイクをして見ず知らずの人の助けで車に乗せてもらったり、自ら歩いたりと、一夜の出会いと別れを重ねながら寒空の東北を歩んでいく陽子。「自分には何もないんだって」と吐露するセリフに、なかば人生を諦めて生きてきた陽子の思いと孤独がにじみ出た予告編となっている。

「658km、陽子の旅」は、青森県弘前市出身で42歳独身の陽子を描いた作品。夢破れ人生を諦め、惰性で日々を過ごしていた就職氷河期世代のフリーター陽子は、かつて夢への挑戦を反対されて20年以上断絶していた父が、突然亡くなった知らせを受ける。従兄・茂の一家が葬儀のため弘前へ帰る車に無理やり乗せられ、しぶしぶ一緒に帰ることになる陽子だが、途中で茂の一家に置き去りにされてしまう。陽子は逡巡しながらもヒッチハイクで弘前に向かう。北上する一夜の旅での、さまざまな人々との出会いにより、時を止めていた陽子の心が動きだす。

監督を務めるのは、2001年の劇場デビュー作「空の穴」で、当時新人の菊地をヒロインに抜擢した熊切和嘉。ヒッチハイクで東北を旅する主人公の陽子役を、「菊地凛子しかいない」とオファー。菊地は「自分を見出してくれた熊切監督ならば」とオファーを快諾した。菊地は、初冬の東北を舞台に過酷な状況に身を置く主人公を、全シーンノーメイクで演じ切り、ロスジェネ(ロスト・ジェネレーション)とも呼ばれるこの世代が背負うリアルを体現している。

【作品情報】
658km、陽子の旅
2023年7月28日(金)ユーロスペース、テアトル新宿他全国順次公開
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2023「658km、陽子の旅」製作委員会

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