覚せい剤で5度目の逮捕「なんとか帰ってほしくて…」 女優・三田佳子の次男が法廷で語った売人との“いびつ”な関係

早口の回答を弁護人に注意される場面も(画:Minami)

昨年10月21日に覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕された、女優・三田佳子の次男、高橋祐也被告(43)の裁判が21日東京地裁で開かれた。1月に行われた初公判では、起訴事実を認めたが、弁護人は責任能力を争う姿勢をしめし、第3回公判となるこの日は被告人質問が行われた。

公判前、刑務官に付き添われて入廷、着席した高橋被告は、うつむき加減に「うんうん」と何かを確認するかのようにうなずく、下を向く、手を見つめるなど、年齢相応とは言い難い、やや落ち着きのない印象。すっかり以前の精悍(せいかん)な印象は薄れ、頼りなさも宿る目つきは、関係者でなくとも心配になってしまうほど。

被告人質問とは、文字通り被告人が弁護人、検察官、裁判官の質問に答え、自ら容疑事実を話していく裁判の手続きである。この日、まずは弁護人から、覚せい剤を入手するまでの経緯について質問が続いた。高橋容疑者は時折早口になり、弁護人からゆっくり、はっきり話すよう促されながら、逮捕にいたるまでの経緯について答えていく。

うつむき加減で着席する高橋被告(画:Minami)

「なんで貸すの?」

高橋被告によれば、今から1年ほど前、「芸能プロダクションのおじいさん」からバーの出店を考えている「オオヒナタ」と名乗る男性を紹介され、程なくして月1回程度酒を飲みに出掛ける仲になったという(高橋被告は当時飲食店を経営)。

被告が逮捕される4カ月前頃、初めて自宅に来たというオオヒナタ。ふとした瞬間に、彼の体に描かれた入れ墨を見とめた高橋被告は「ヤクザだと恐怖を覚え」、以降、「金を貸してくれ」と強く言われるようになり、求められるがまま金を貸すようになった。5万円、10万円…返してもらうことはいちどもなかったという。「なんで貸すの?」。法廷に居た者の多くが思った疑問を担当弁護人が投げかける。高橋被告の「困っているんだと思った」という妙な親切心からその関係は続く。

「捕まるのがイヤだから、やっていないよ」

「裕ちゃん、もうやってないの?」。ある日、呑みに出掛けた先の居酒屋、注射を打つしぐさでオオヒナタが聞いてきた。「捕まるのがイヤだから、やっていないよ」と答えた高橋被告。さらに後日、自宅に来たオオヒナタが突然覚せい剤を打ち始め、同時に購入を勧められる。急な展開に、なすすべもなく流される高橋容疑者だったが購入は断り、「なんとか帰ってほしくて」また3万円を渡すのであった。

以後も連絡が来ては金を貸すという関係は続いたというが、当時飲食店を経営していた高橋被告ではあったが、その財力に限界もある。両親に金の無心をすることもあり、時には実家近くでオオヒナタに金銭を渡したこともあったようだ。

「後悔して慚愧(ざんき)の念に堪えない」

昨年の9月24日、自宅で酒を飲み、就寝していた高橋被告の元にオオヒナタが突然やってくる。机の上にドンと置かれる覚せい剤のパケセット(0.07mg×2袋、0.3mg×1袋)。「クスリをやるわけにはいかない」。取りあえず高橋被告はオオヒナタに4万5000円を渡して帰ってもらうが、パケは置かれたまま。無理やり買わされた形となった薬物を「捨てよう」と思っていたが、「目の前にあると苦しくなり」程なくして、パケとともに置かれたガラスパイプを用いて、通称「炙(あぶ)り」と呼ばれる方法で使用してしまう。この後、関係者による通報で逮捕。薬物による逮捕は今回で5度目、保護観察付き5年の執行猶予中だった。

第三者から見れば、この日高橋被告が話した状況は異常事態そのもので、いくつかの疑問もわいた。検察官、裁判官からの質問にも、金を無心され、目の前で覚せい剤を使用されて、なぜどこにも相談しなかったのか、というものがあった。確かに、反省し、執行猶予中であればなおのこと。高橋被告は「両親に心配をかけたくなかった」「自分で何とかしたかった」とその理由を話したが、結局薬物の誘惑には勝てなかったということか。

ジャケット姿にエナメル質の青いスリッパを着用(画:Minami)

今回の事件について、「後悔して慚愧(ざんき)の念に堪えない」「(薬物は)やめ続けたいと常に思っている」と話していたが本心なのだろう。金があり、薬物の使用歴がある有名人は売人の格好の餌食。あの手この手で仕掛けられる誘惑を断ち切ることは、われわれの想像以上にハードルが高いのかもしれない。

冒頭の通り、弁護士人は高橋被告の責任能力を争っており、4月中に出るという精神科医による精神鑑定の鑑定請求を行う方針。次回期日は6月に決められた。

© 弁護士JP株式会社