B3プレーオフ・セミファイナル展望 - B2昇格を果たすのは岩手か、埼玉か、静岡か横浜EXか

4月28日(金)から、B2昇格権がかかったB3プレーオフ・セミファイナルが始まる。勝ち残っているのはレギュラーシーズン1位の岩手ビッグブルズ、2位の埼玉ブロンコス、3位のベルテックス静岡、5位の横浜エクセレンスの4チーム。いずれも来シーズンのB2ライセンス交付を受けており、レギュラーシーズンで上位のチームが全試合をホームで戦う2戦先勝の3試合シリーズで、勝ったチームはプレーオフ・ファイナル進出とともにB2昇格がかなう。

堅固なディフェンスを大きな武器とする岩手は、クォーターファイナルで豊田合成スコーピオンズを2試合とも60点台に抑えて2連勝(GAME1が79-68、GAME2が86-61)。埼玉は食い下がるトライフープ岡山と2試合とも一桁点差の勝負(GAME1が80-73、GAME2が98-91)となったが、やはり連勝で4強入りを果たした。

静岡は新規参入チームの東京ユナイテッドバスケットボールクラブとの激戦2試合をきわどく乗り切ってのセミファイナル進出。GAME1では前半17点差のビハインドを背負う大苦戦を68-65と3点差でしのぎ、GAME2も緊迫した接戦を85-82で乗り切った。横浜エクセレンスはクォーターファイナル唯一のアップセット勝ち。レギュラーシーズン4位の鹿児島を相手に、アウェイでのGAME1を104-98、GAME2を86-77で獲り昇格への望みをつないだ。

さて、いよいよ正念場のセミファイナルで、4チームはどんな戦いを見せるだろうか。岩手-横浜EX、埼玉-静岡のそれぞれのマッチアップを、シーズンのデータから展望してみたい。

B3最強ディフェンスとB3最強オフェンスの激突
岩手ビッグブルズ vs. 横浜エクセレンス
試合日程: 4/29(土)15:00-/4/30(日)12:30-/5/1(月・祝)19:00-
試合会場: 盛岡タカヤアリーナ
通算成績: 岩手45勝7敗(勝率.865)、ホーム25勝1敗(勝率.962)
横浜EX40勝12敗(勝率.769)、アウェイ19勝7敗(勝率.731)
直接対決: 岩手3勝-横浜EX1勝(岩手のホームでは岩手が2勝)
12/17 岩手86-83横浜EX(岩手がホーム)
12/18 岩手96-72横浜EX(岩手がホーム)
2/3 横浜EX67-89岩手(横浜EXがホーム)
2/4 横浜EX98-96岩手(横浜EXがホーム)
直近10試合:岩手8勝2敗 / 横浜EX9勝1敗 ※クォーターファイナルを除く

岩手と横浜EXは少なくともデータ上は好対照なチームだ。岩手は平均失点66.0というリーグトップのディフェンス力が大きな特徴であり、横浜EXはディフェンスを重視しながらも、平均得点91.2のリーグトップのオフェンス力で勝利をつかんできた。

直接対決は、ホームでもアウェイでも1試合は1ポゼッションを争う大接戦、もう1試合は一方的な展開だった。そして接戦では星を分け、一方的な展開の試合はどちらも岩手が勝っている。

横浜武道館で行われた直近の対戦は1勝1敗。GAME1は岩手が試合開始から6分半近く横浜EXに得点を許さず、13-0のランで一気に主導権を握り、89-67と22点差をつけて勝利した。しかし翌日のGAME2では横浜EXがオフェンス力で上回り勝利。開始早々に快進撃を展開したのも横浜EXの方で、最初の約3分間で13-2と勢いに乗り第1Q終了時点で30得点を奪った。最終的にはシーズン平均を上回る98得点を奪い1ポゼッション差の勝負を制している。

横浜武道館での2試合における両チームの序盤の戦いぶりは、セミファイナルの勝負の行方を占う一つのカギになりそうだ。岩手がペースをつかむには、フルコートプレスにしてもゾーンにしても、意図するディフェンスが効果を挙げることが重要になる。それは結果的に岩手のオフェンスを勢いづかせる要素にもなるのだ。特にクリスチャン・ドゥーリトルが大暴れするようだと岩手は大いに優位だろう。岩手が2ケタ点差で勝った直接対決の2試合で、ドゥーリトルは平均36.0得点、15.0リバウンドという驚異のアベレージを残しているのだ。

クリスチャン・ドゥーリトル(左)とジョーダン・フェイゾン(右)。両者のパフォーマンスもこの対戦の重要な要素になりそうだ(写真/©月刊バスケットボール)

横浜EXにとっても、最重要事項はディフェンスだと思われる。なぜなら、失点を防ぐことで岩手のトランジション・ディフェンスをやりづらくさせることができるからだ。ベースラインからのインバウンドプレーで強度の高いフルコートプレスを敷く機会を摘み取れると同時に、リバウンドからハイペースなオフェンスに持ち込めるとすれば、ハーフコート・ゲームでも岩手が望ましいディフェンスをできる可能性は低くなる。

横浜EXでは今シーズンのブロック王となったジョーダン・フェイゾン(平均1.27本)がどのようなプレーをするかも興味深い。フェイゾンは上記の点差が開いた2試合でいずれもファウルアウトしており、特に横浜武道館での22点差の敗北ではわずか12分31秒しかプレーできず5得点に終わっている。しかし接戦となった2試合では一つずつしかファウルを犯さず、フィールドゴール22本中14本を沈めて平均18.5得点を記録しているのだ。

\--{実力拮抗、カギはリバウンドか? - 埼玉ブロンコス vs. ベルテックス静岡}--

実力拮抗、カギはリバウンドか?
埼玉ブロンコス vs. ベルテックス静岡
試合日程: 4/28(金)18:30-/4/29(土)14:00-/5/1(月・祝)18:30-
試合会場: 浦和駒場体育館
通算成績: 埼玉43勝9敗(勝率.827)、ホーム22勝4敗(勝率.846)
静岡41勝11敗(勝率.788)、アウェイ21勝5敗(勝率.808)
直接対決: 埼玉2勝-静岡0勝(いずれも静岡のホーム)
3/11 静岡83-91埼玉
3/12 静岡83-91埼玉
直近10試合:埼玉9勝1敗 / 静岡6勝4敗 ※クォーターファイナルを除く

今シーズンはレギュラーシーズンで両チームの対戦が2度しかなく、埼玉のホームで行われるのはこのセミファイナルが初めての機会だ。実績としてはアウェイの埼玉が2勝しており、データ上は非常に優位に見える。ただし2試合とも83-91の8点差という結末で、両チームの地力に大きな差があるわけではない。

一つのカギはリバウンドではないだろうか。2度の直接対決ではいずれも埼玉が上回った(初戦47-43、2戦目39-30)。平均12.23本でレギュラーシーズンのリバウンド王となったライアン・ワトキンソンこそ1桁台にとどまったが、埼玉はガード陣も含めこの側面への意識が高い。地の利がある埼玉に静岡がリバウンドで圧倒されるようだと、リーグ2位の3P成功率(42.26%)を誇るグラント・シットンらの長距離砲が当たりだす可能性が高まるのは間違いない。

レギュラーシーズンのリバウンド王ライアン・ワトキンソン(写真/©月刊バスケットボール)

そうなると埼玉のリーグ2位のオフェンス力(平均90.2得点)が爆発する可能性がありそうだ。埼玉は3Pショットが成功率(35.0%)、成功数(10.9本)ともリーグトップであり、またターンオーバーがプレーオフ進出チーム中最も少ない(平均11.7本)。リバウンドをベースにこんな数字がそのまま並ぶようなら埼玉ペースだ。

ただ、静岡はアウェイで平均失点がホームよりも低い(アウェイが平均67.8、ホームが73.0)。引き締まったディフェンスがリバウンド面にも好影響をもたらし、埼玉のオフェンスの自信をくじくことができるようならシリーズは面白くなる。また、埼玉との直接対決で連敗を喫した時期は前後に岩手、横浜EXと対戦した時期で、この3節は1勝5敗と今シーズン最も低迷した時期だった。その時期を脱して、クォーターファイナルでも接戦を勝ち切った現時点ではチーム状況も違っている。

このシリーズは、80点台半ば以上の勝負になれば埼玉に分があり、それ以下ならば静岡のアップセットの可能性が高まるのではないだろうか。もしもリバウンドで静岡が対抗できれば、埼玉の優位性を示すデータは崩れていく可能性がある。静岡としてはキャプテン岡田雄三のリーダーシップ、プレーオフで当たっているケニー・ローソン、そしてレギュラーシーズンでチームトップの平均16.7得点を稼いだアレクシス・エールセネルらのビッグゲームも望みたいところだろう。

アウェイでのビッグゲームに臨むベルテックス静岡。キャプテン岡田雄三のリーダーシップも重要な意義を持ってきそうだ(写真/©月刊バスケットボール)

© 日本文化出版株式会社