社説:人口3割減 「縮む日本」を直視せよ

 50年後の日本の人口が、8700万人になるとの将来推計を厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した。

 2056年に1億人を割り込み、70年には20年時点より3割も減るという。5年前の前回推計とほぼ同じで、急速な少子高齢化は弱まる気配がない。

 人口減少は、年金や医療などの社会保障をはじめ、自治体サービスや経済活動など幅広い分野に多大な影響が及ぶ。

 現状の維持が厳しくなる先行きを直視し、「縮む日本」を前提とした社会や制度の再構築に向け、有効な戦略を立てるべきだ。

 推計によると、働き手の中核となる15~64歳の生産年齢人口は、20年の約7500万人から70年に約4500万人となり、50年間で4割減る見通しという。少子化で総人口よりも減少幅が大きい。

 人手不足は、農業や建設、物流などすでに多くの現場で顕著である。さらに今後は医療や介護、道路や橋のインフラ維持などの担い手確保が厳しくなり、身近なサービスが低下する恐れもある。

 貴重な人材をいかに配分するか。デジタル技術の活用による自動化や省力化を進めるのはもとより、必要な業務を選び、優先順位をつけて重点化、効率化を図るような工夫も欠かせない。

 65歳以上の高齢者は70年には約3300万人に増え、人口の4割を占めることになる。

 現在の公的年金制度は、現役世代が支払う保険料を高齢者への給付に回す仕組みだ。医療や介護も高齢者の費用の多くを、現役世代が負担している。

 高度成長期は高齢者1人を現役世代が約10人で支えていたが、20年は約2人、高齢者が最多に近づく40年は1.6人に減り、重い負担がのしかかる。

 仮に今後の少子化対策が成功しても、人口減の速さを緩めるにすぎない。政府は小刻みに給付を減らし、負担を増やす社会保障の制度調整を続けるが、場当たりの対応は限界にきている。持続可能な仕組みへの抜本改革が必要だ。

 総人口には、3カ月以上日本に住む技能実習生や留学生ら外国人が含まれる。今回の推計では、総人口に占める外国人の割合が20年の約2%から、70年には10人に1人に上昇するとしている。そのため、人口減少のペースは緩和されるとの推定を織り込んだ。

 だが、円安など不透明な要素も多い。海外の人材に日本を選んでもらうには、中長期的な労働や居住の環境整備が求められる。

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