<金口木舌>PAC3は万能か?

 既視感がある。それでいて以前と少しずれているような違和感も覚える。北朝鮮の「軍事偵察衛星」の打ち上げ予告を受け、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が県内に展開されるのを見て、11年前を思い出す

▼2012年、北朝鮮の「衛星」打ち上げ予告を受けて宮古島と石垣島にPAC3が展開された。「有事」を思わせる物々しさ。島の日常を塗り替えていく様が記憶に残る

▼落下してくる破片を迎撃できるのか、「万々が一」とされたリスクへの対処として適切なのかなどの疑問は今も変わらない

▼当時、宮古島市上野だけだった先島諸島の自衛隊拠点は、石垣島や与那国島にも拡大した。今回、港湾や空港の使用に際して国の組織らしからぬ粗(あら)が目立つ。もはや部隊配備は完了した。地元に対するこまやかな気遣いはいらなくなったということなのだろうか

▼PAC3などの迎撃システムは極限状態での命綱かもしれないが、住民の安全を託せるほど万能ではない。打たせないための外交努力が最も大事なのは、いつの時代も変わらない。

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