筑波&日体の新主将、田中万衣羽と矢野里美が求めるチーム像

4月23日に毎年恒例の日筑定期戦が開催された。立ち上がりからロースコアとなった女子本戦は要所で得点を積み上げた日体大が勝利(58-38)。日体大は大学界屈指のスキルを持つ小野寺佑奈や攻防でチームを支える木村瑞希、スピーディーなプレーが魅力の宮城楽子など、ポテンシャルを秘めた布陣をそろえる。対する筑波大も抜群のスピードを誇るPG田中万衣羽、柔軟なプレーでインサイドを支える粟谷真帆、日本代表も経験した朝比奈あずさといったタレントを擁する。試合後、両チームのキャプテン(筑波大:田中万衣羽/日体大:矢野里美)に自チームのことや相手チームのこと、1年の目標など、さまざまな思いを語ってもらった。

学年に関係なく一丸となって戦うチームを

──まずは試合の感想を教えてください。

田中

出だしのところから、自分たちの持ち味であるハードなディフェンスからのブレイクができなくて、逆に日体にそれをやられて流れを持っていかれたので、自分たちのバスケットを徹底できなかった部分がありました。ノーマークのシュートが入らなかったのもそうですが、相手にコンテストされた状態のシュートも多かったので、しっかりとしたシュートを作り出せなかったのも課題です。

矢野

とりあえず勝てたことはよかったんですけど、自分たちのディフェンスや決め切るべきシュートを落としてしまったので、課題はまだまだ山積みという感じです。今日は100点中40点くらいです。

──お互いのチームの印象はいかがでしたか?

田中

日体は今日、留学生があまり試合に出ていなかったですが、サイズがなくてもリバウンドやルーズとボールなどの基本的なところをすごく頑張れているし、高さがない分、走るところをしっかりできるチームだなと感じました。

矢野

筑波は留学生はいないチームですが、平均身長が私たちより高いです。加えてスピードがあったり、個々の能力が高かったり。ディフェンスをハードにやってくるチームというのが印象ですね。

筑波大を率いる田中はスピーディーなゲームメイクが持ち味

──今年のチームの強みはどんなところでしょうか?

矢野

今年は去年からメインで試合に出ていた選手が少ないので、フレッシュなチームになります。その分、基礎的なところや泥臭いところをオフェンスでもディフェンスでも徹底するというのが今年の強みであり、そこで戦っていきたいと思っています。

田中

私たちの強みはまず、層の厚さです。出てくる選手それぞれが力の差をなく流れをつないでいけるところ、プレー面で言えばアーリーでどんどん攻めて、今年はテンポを速くして機動力を武器にして戦っていこうと思っています。

──矢野選手は3年生でキャプテンを務めていますが、お二人は以前から面識はあったりしましたか?

矢野

正直、話したこととかはあんまりないです(笑)。でも、高校の頃から田中さんのことを知っていました。有名だったので。

田中

え、そうなんだ!(笑)

矢野

私は千葉経済大附高出身なので田中さんとは県とかも違うんですけど(田中は三重県・四日市商高出身)、練習試合をさせてもらったことがあって、大学でも筑波でプレーしているのを知っていたんです。当時からめちゃくちゃ速かったです(笑)

田中

え! 千葉経ってめっちゃ練習試合してたよね。

矢野

そうでしたね!

田中

でも、個人的に千葉経には苦手意識がありました。ボールマンプレッシャーとかをとにかく一生懸命にすごく頑張るチームだったので、『うわー、やだー』って感じでした(笑)

矢野は3年生ながら日体大を率いる立場に

──では、そこで既に会っていたのですね(笑)。大学生活はお互いにどんな感じですか?

田中

筑波は一人暮らしがメインです。学生寮もあってそこは安く借りられるんですけど、寮食とかはないですね。なので、家事とかも自分たちで全部やっていて、食事の面なんかは自分たちで栄養士さんのセミナーを受講したりして、各自やっている感じです。

矢野

日体は寮にほかの部活の学生もいるので、食事は栄養素なんかも計算されたものが出てきます。それはすごく助かっていますね。

田中

ちなみに、日体は結構走っていますか?

矢野

あ、走ってますね(笑)。試合が入ってくる期間はそこまで走り込んではいないんですけど、試合がない時期はシャトルランやコートの往復、3メンなどの走るメニューが増えますね。筑波の選手ってみんな仲の良いイメージがあるんですけど、やっぱりそうなんですか?

田中

超仲良いと思う! 筑波は厳しい上下関係とかもなくて。やるときはやるけど、自分たちの考えとしてはコート内で1年生が意見を言いやすいような環境作りをしたいと思っているから、4年生も積極的に1年生に声をかけたり、私生活でも遊びに誘ったりもするし、ご飯もよく行くかな。

矢野

そうなんですか、イメージどおり(笑)。日体もみんなのイメージほど上下関係とかが厳しくなくて、そこも大事にしつつ、学年関係なく意見を言える環境を作るのは上級生の役割として、目標にしています。多分イメージ以上に仲が良いと思います(笑)。

──新1年生もチームに加わりましたが、ルーキーたちに期待しているのはどんなことでしょうか?

田中

フレッシュにやりたいことをやってほしいです。ベンチからの出場が多いと思うんですけど、コートに入ってきたときには1年生らしくどんどんチャレンジする姿勢を大切にしてほしくて、流れを変えるプレーとか、そういうところを期待しています。失敗しても私たちが何とかするから思い切りやってほしいです。

矢野

今日もまだプレータイムは多くはないんですけど、ここからトーナメントやリーグ戦にかけて出場時間も増えてくると思います。田中さんと同じ意見ですが、エネルギッシュにミスを恐れずチャレンジしてもらいたいです。

キレのあるプレーで日体大の動力となる小野寺

──全学年を含めて期待する選手は誰でしょうか?

田中

やっぱり#14朝比奈(あずさ/185cm)ですね。今日は日本代表の合宿で不在でしたが彼女の存在は大きいです。プレーはもちろん、朝比奈の良いところは後輩にしっかりと声をかけたり悪い時間帯でも踏ん張れるところなので、一緒にやっていく上でそういうチームを引っ張るというところにも期待したいです。

矢野

私たちは4年の#3小野寺(佑奈/157cm)さんですね。役職的には自分がキャプテンをさせてもらっていますが、練習のときから小野寺さんはプレーで示してくれるので、それはチームにとってとてもプラスです。

──逆に相手チームで警戒している選手は?

田中

やっぱり小野寺さんですね。今日もそうでしたが、日体のオフェンスは小野寺さんを起点に始まります。そこにどうアジャストしていくのかが試合の勝敗にもつながってくると思うので、止めたい選手です。

矢野

日体的にも朝比奈さん。背が高くてインサイドも強いけど、3Pシュートなどのアウトサイドのプレーもあります。留学生がマッチアップしても、アウトサイドからやられちゃうところもあるので、何とか止めていきたいです。

──今年の日筑定期戦は久しぶりの有観客開催でしたが、いかがでしたか?

矢野

無観客だと普段は盛り上がるところでも盛り上がらなかったりというのがあったので、観客が入った中で良いプレーが出たときの盛り上がりや応援の声ですごく背中を押されたし、楽しかったです。

田中

コロナ禍でまず自分たちがこうしてバスケをさせてもらえているのが当たり前じゃないことだと学びましたし、だからこそ有観客でやれることに感謝しています。自分たちが良いときも悪いときも一緒に戦っているという感じで応援してくださるので、幸せですね。

──では最後に、新シーズンへの抱負をお願いします。

田中

今年は「スマイル大作戦」というスローガンを掲げています。自分たちの学年は今まであまりチームを引っ張るという経験がなくて、試合に出場した時間も少ない子が多いんです。そういう側面があるので、プレー面以外の雰囲気作りなどでもどんどん後輩を引っ張っていく。学年が違っても意見が言い合える仲の良さを作って、チーム全体で戦っていきたいと思っています。

矢野

今年は「主体性」と「当たり前にこだわる」というのをテーマに掲げています。自分たちも去年からプレータイムが多い選手があまりいないので、自分たちから前のめりにやっていくという意味での「主体性」。「当たり前にこだわる」という部分についてはルーズボールやボックスアウトなどの基本的なところやコミュニケーションなどで、チームでつながることを当たり前にできるように。そういう面をこだわりつつ結果を残していきたいです。

筑波大の田中万衣羽、日体大の矢野里美、両キャプテンに話を聞いた

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