渡邊雄太帰国会見全文「間違いなくベストシーズンだった」W杯欠場の可能性も言及

ワールドカップには出場できない可能性もと言及

4月28日、今季の戦いを終えた渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)が帰国会見に臨み、「間違いなく自分のベストシーズンだった」とネッツでのシーズンを振り返った。

渡邊がネッツと保証なしの契約を交わすという情報が入ったのは昨年8月末。その後、見事ロスターを勝ち取ってシーズンを迎えるとベンチから出場し、3Pシュート、ディフェンスとチームに不可欠なピースとして活躍とした。チームは昨年12月上旬からの12連勝などで一気に上昇したが、2月のデッドラインでビッグトレードが起こるとまったく違うチームとなり、終盤は渡邊の出場機会も減った。それでも、過去最多となる58試合に出場し、アベレージもベストリザルトを残した。

今回の帰国会見では、シーズンで感じたこと、課題、ワールドカップについてなど、多岐に渡る質問に答えてくれた。以下が、記者会見での質疑応答である。

「皆さん、おはようございます。渡邊雄太です。無事今シーズンも大きなケガをすることもなく、終えることができて、昨日の夜、日本に帰ってきました。いろいろあったシーズンだったんで、いろいろ思うこともありますけど自分にとって本当に良いシーズンだったと思いますし、過去の4年間に比べてこの5年目が間違いなく自分のベストシーズンだったという風に思っています。もちろん全然満足してないですし、自分はもっともっと上を目指してやっていきますけど、とりあえず本当に一つ大きく成長できたなと感じられたシーズンだったんで、自分にとって中身の濃い良いシーズン年だったと思っています」

デュラント、アービングらと勝負どころで

プレーできたのは「すごく幸せな時間でした」

――久しぶりに日本に帰ってきましたが、やりたいなどありますか?

「数週間して日本にいるんで、家族であったり友達に会ったり、おいしいものを食べたり、楽しめたらいいなと思っています」

――5シーズン目の今季、保証なしの契約で始まり、厳しい戦いを勝ち抜いてきました。開幕ロスターを勝ち取るまで、どんな思いだったのでしょうか?

「まず、トレーニングキャンプの時は本当に正直すごく大変で、もちろん自分があの段階でチームに入れるかわからなかったので部屋を借りることができませんでした。普通のホテルの部屋があって、奥さん(久慈暁子夫人)と約2ヶ月いましたね。奥さんは途中仕事で日本に帰ったりもしましたけど、僕に関しても2ヵ月、この先どうなるんだろうっていう不安と闘いながら、9月から10月のキャンプが始まるまで過ごしていたので、正直本当すごく大変でしたけど。トレーニングキャンプに入って、自分のパフォーマンスはすごくいいなというふうに思っていましたし、試合が始まっても、ちょっとまだ波はあったんですけど、手応えが自分の中であったんで、やっぱり今までの経験が生きてきているなと感じたのと、このチームで自分の居場所が見つけられるんじゃないかなっていうふうには感じました」

――開幕ロスターを掴んで11月、素晴らしいスタートを切れました。3Pシュート成功率は、その月57.6%と高かったですね。シーズン前半を振り返っていただけますか?

「意識していたことは、とにかく自分の役割に徹しようということ。これは、今シーズンに限らず。どのシーズンでもそうだったんですけど、できないことを無理にやるのではなく、当時はケビン・デュラント(現サンズ)やカイリー・アービング(現マーベリックス)など、何でもできる選手がいてくれたんで、自分はできることを徹底しようと思っていました。ディフェンスをしっかり全力でやることと、オフェンスではKDだったり、カイリーがいるので、自分が空いたら思い切り打とつと意識しながらやっていたんですけど、57%は出来すぎな数字だったので(笑) さすがにキープできないだと思っていたけど、シーズン終わっても45%近(44.4%)決められたのは、40%以上を目標としてやっていたので、一つクリアできたと思っています。反面、今シーズンのあの感じだったら、それこそ50%ぐらいでシーズン通していけたんじゃないかなという気持ちもちょっとあったりもするんでそこは悔しいですけど、ただ昔からずっとテレビの前で見ていたKDだったり、カイリーと一緒に、同じコートに立って、勝負を左右するような時間帯でも彼らと一緒にプレーできたというのは、自分にとってすごく幸せな時間でした」

――2月のトレードデッドラインでは、デュラント、アービングが共に出ていってしまい、まったく違うチームになりました。そういった中で、なかなか出場機会が得られませんでした。

「トレードがあったことは、しようがないことなので。正直もし彼らがチームに残っていたら、まだプレイしていたかなというのはあるのですけど、ただトレードで来た選手は本当にいい人たちですぐに打ち解けて、彼らとバスケをするのもすごく楽しかったです。自分のプレータイムがなくなったのは、チーム状況としてウイングの選手がチームにやって来たのでしようがないと思っていました。トレード前はしっかり活躍することもできていたので、こういう世界だからと割り切って、過去4年間は試合に出られてない時間のほうが多かったので、同じことやり続けようと気持ちを切り替えて、いつでもまた試合にいろんな状況でもしかしたら出るかもしれないからということで、常に準備を怠らないようにしようっていうのを心がけながら、毎日生活していました」

「自分が出て活躍してチームを勝たせるような存在になりたい」

――ポストシーズンのファーストラウンでは、強敵セブンティシクサーズと対戦しました。出番も限られましたが、戦う中で見えたもの、こういう選手でありたいなどのイメージはあったでしょうか?

「やっぱり次はあそこに自分が出て活躍して、チームを勝たせるような存在になりたいと本当強く思いました。去年、ラプターズで同じシクサーズを相手にプレイオフに出た時は、初めて間近でプレイオフを経験した時に、やっぱりまだこの舞台に立つには力が足らないかなと思いました。でも今シーズンは、いつでも自分が行ける準備ができていましたし、チーム状況もあるのでわがままは当然言えないですけど、ここで自分を出してもらえたらっていう場面がいくつもあったので、精神的にも自分が成長していると感じられたポストシーズンでした。

もちろん4連敗というのは本当にすごく悔しい終わり方でしたし、自分自身も1戦目の最後に少しだけしか出ていないので、本当に悔しい終わり方だったんですけど、自分の中で成長として見えたものもありました。同時にまだ力が足りてないから出られてないという現状は変わらないのでそういう意味では意味のあった4試合だったかなと思っています」

――今季全体を通しての、忘れられない瞬間などがあったら教えてください。

「何個か思い付くんですけど、一番自分の中で印象深かったのはトロントでの試合で僕が残り10秒ぐらいで逆転のシュートを決めた試合ですね(2022年12月16日、4Q残り15秒で逆転3Pシュートを成功)。理由はいろいろあって、ケガから復帰して、すぐ3試合目だったというのと、去年プレイしていたアリーナだったのと。当然あそこにいる人たちはもうトロント・ラプターズのファンなんですけど、ある意味、恩返しができたんじゃないかなと思いました。お世話になったトロントで自分が成長した姿を、チームメイトだったり、コーチだったり、ファンに対しても見せられたんじゃないかなという部分があります。

何よりうれしかったのが、カイリーが信頼してパスをくれたということですね。彼の力だったらドライブに行ってレイアップできたと思うんです。確かスコッティ・バーンズがブロックに行っていて、それを交わしてノーマークだった僕を見つけてくれてパスをくれました。その後、また追いつかれて最後、またカイリーで逆転というすごく劇的な試合というのもあるので、いろいろな意味もあってあの試合は強く思い出に残っている試合ですね」

――夏にはワールドカップがあります。日本代表としての渡邊選手にも期待したいのでうが、大会、そして代表に向けて思いをお聞かせいただけますか?

「現状その自分の中では、もちろんワールドカップ出るつもりでいます。ただ僕はフリーエージェントでワールドカップ前後は新しいチームが決まるかどうかという時間なので、最悪出られないことも覚悟しておかなければいけないのかなと思っています。

自分の中ではそこに向けてまずしっかりと体を作っていって、高校卒業してからアメリカにいてなかなか日本のファンの皆さんの前でプレーできる機会というのはないので、そういった意味ではすごく楽しみにしています。日本開催ということもあって盛り上がると思っているのでやっぱりワールドカップ出たいなと思っています」

――過去5年でベストシーズンという言葉がありましたが、どんなところでそう感じるのか、できれば一言で表していただけますか。

「一言で表すのはいろいろありすぎて、なかなか難しいですね(笑) 先程も言いましたが中身の濃いシーズンでした。違いというと、さっきも少し話を出したんですけどやっぱりその試合がもろに勝敗が直結するような時間帯で、ああいうスーパースターたちと肩を並べてプレイして、その中で信頼を得てパスをもらえたというのは、これまでのシーズンではなかったことなので。自分のワンプレー、一つのミスがチームの勝敗を決めるみたいなヒリヒリする時間帯で、出られるというのは何よりもうれしかったので、その分プレッシャーも大きかったですけど、本当に小さいときから目標にしてきたNBAで、ああいうシーンをイメージしながら練習してきたので、それが一つ形になったシーズンだったのかなと思いました」

今季の思い出深いシーンと語ったラプターズ戦はInstagramにも投稿

出場時間が削られる中で感じた“苦しさ”

“頑張った先に何かご褒美が”と信じていた

――トレードデッドライン後、チームがいろいろと変わる中でのモチベーションはどんなものだったのでしょうか?

「正直モチベーションを保つのはすごく大変というのはもう事実です。チームによっていろいろあると思うんですけど、ブルックリン・ネッツでもステイレディーというグループ、試合に出ていない選手たちが練習前に集まったり、練習後に残ったりして人数が多かったら5対5だったり、少ない時は1対1だったりをするグループがあるんです。最初僕はそこに入ることはなくてトレード後はほぼ毎日そのグループで、キャム・トーマスだったり、パティ・ミルズだったりと一緒にやってきたんですけど、そこは正直最初自分にとってすごく苦しかったというか、今まで試合に出られていた分、今までやってきたことをまた一からやらなきゃいけないのかというしんどさはすごくあったんですけど。

たださっきも言ったように自分にとってもそれが今まで当たり前だったんで、試合に出られないっていう状況の中で腐らずにやってきた結果が、今シーズンのトレード前のあれだと僕は思っているんで。だから今もまた一からやり直しという風に思ったんですけど、また頑張った先には来シーズンかはわかりませんが、何かしらのご褒美が出て自分に返ってくるんだっていうふうにしてやるようにはしていました」

――昨年の四国インターハイでは開会式に出て選手たちに声をかけるというシーンがありましたね。5シーズン目という節目のシーズンを終えて、子供たちに何を伝えたいか教えてください。

「自分が小さい時にずっとNBAを夢見て目指して、年齢を重ねていき中学2、3年くらいになると、NBAというと、ちょっとバカにされるような状態もあったりして。そういう中でも自分は信念を曲げずに、そこだけを目標にしてやり続けてきたんで、今、別にNBAでなくてもいいんですけど、目標や夢に向かって誰が何と言おうと夢を持ち続けるということを子どもたちには大切にしてほしいなと思っています。

僕も諦めない、諦めなかったからこそ今があると思っているので、小さい子どもたちにも夢を持つだけじゃない、持つだけではなくて、落ち続けるっていうことを大切にしてほしいなと思います」

――クロージングラインナップに出たことは大きな経験とおっしゃっていましたが、具体的にはどんなところが違うのか、また何が足らないと感じたのかを教えて下さい。

「48分の試合の中で、1ポゼッション1ポゼッション、1ショット1ショットが大事になってくるのはもちろんなんですけど、残りの5分以降とか、そういう時間帯は、やっぱりその一つのシュートだったり、一つのミスだったり、リバウンド、アシストが勝敗に直結するようなプレイになってくるので、そこでのあのプレッシャーの中で、自分を出せる楽しさというか、しかも、昔からテレビで見ていたKDやカイリーが同じユニフォームを着てプレーしているということ、あのヒリヒリした感覚は初めて味わえた感覚でしたね。

その時間帯で出た時に、自分の中での役割ができるなと感じられた反面、まだディフェンスの面では強度を上げられるなと感じていました。あからさまに僕を狙ってくるという時間帯があったので。そこで自分が狙われてもしっかりと対応することと、その時間帯で僕が対応するのは相手のエースなので、そこで抑えるだけのディフェンス力というのは、付けていかなければいけない技術かなという風には思ってます」

――デュラント、カイリーの名前が出ていますが、一流選手はここが違うと感じたことはありますか?

「練習の初日から、彼らはスーパースターと言われるのは理由があるんだなとわかって、カイリーもそうですし、特にKDなんですけど、彼はチーム練習でも個人練習でも一切ダラダラした瞬間がないんです。毎試合もほぼフルで出ている選手なので個人練習の時間の長短はありますが、ドリブルにしてもパスにしてもシュートにしても、やると決めた時間の中で一瞬でも気を抜いたり、ダラダラした瞬間は1回も見なかった。あれだけ身長と技術があればNBAで活躍できるのはあたりまえだと言う人がいるかもしれないですけど、その裏には努力があるんだなと改めて今シーズン、彼と一緒に生活できて、感じた部分でした。本当にあそこまで自分の練習を大切にする人は、ちょっと見てこなかったかなっていうぐらい本当に彼のワークアウトには圧倒されまし」

――地元香川のファンにメッセージをお願いします。

「いつも本当にたくさんの方々に応援していただいて、それがいつも僕の力になってるんで、今後もぜひ応援していただければなと思います。今回も僕も香川にはしばらく帰ろうかなと思っていて、香川でゆっくりできたらなと思っています」

「自分がしっかりやらないと奥さんに迷惑をかけるので

しっかりやらなきゃいけないと思いました」

――大活躍だった11、12月はアシストでも目立つシーンがありました。その部分でのご自身の評価、周囲の評価を教えて下さい。また、3&Dという言われ方をしますが、それ以外でアピールしたいところは何でしょうか?

「アシストに関して、元々僕はもうパスはそこまで下手ではないと思っているんですけど、ただやっぱりNBAの中だと、どうしても自分がボールを持って仕掛けるだったりとか、そういう時間帯はほとんどなかったりして、特にそのアシストがよく見られたというのは、3ポイントも一緒なんですけど、彼らにディフェンスが集中することによって、自分がボールを持っている時でもすごく落ち着いてやれたというか、一つ一つの判断をしっかりやれたんじゃないかなと思っています。

あとはこの3ポイントが警戒される分、次のアクションを起こしやすくなったというのも一つ大きな理由かなと思います。どうしても3ポイントが入ってないと、ディフェンスも引き気味に守られて次のアクションを起こしづらいけど、3ポイントがあれだけの高確率で入っていたからドライブだったりとか、そこからディフェンスを引き付けてパス出したり、次のアクションを起こしやすくなっていました。3ポイントが決められたことが良い方向に繋がったんじゃないかと思います。

周りの評価はチームのオフェンスのコーチにシーズンの最初の方で、オフェンスの能力が高いというか、オフェンスがすごくいいけど、シーズン序盤のインタビューでも言ったんですけど、トレーニングキャンプではKDとマッチアップすることが多かったので、ディフェンスはもうちょっと頑張らないとなと言われて、KDなのでそれは理不尽だと思ったんですけど(笑) オフボールで出してヘルプだったり、そういうのは得意なんですけど、1対1でエースを守る力はまだなくて、コーチが言うことは合っている。相手チームのエースを守れるようなディフェンダーにならないといけないので、そこを強化できるようにこれから頑張って行けないと思います」

――ディフェンスが課題という話がありましたが、来季以降、どこを磨いていきたいですか?

「今シーズン、一番はっきり見えたのが、やっぱり自分はまだまだそのチームメイトに依存するなということ。それはある程度誰でもそうだと思うんですけど、自分はそこに依存しすぎていて、元々そんな一対一が上手い選手だとは思ってないんで。

ただその中でも自分でもうちょっとショットクリエイトできるようにならないと、トレードでチームが変わった時に今年みたいに試合に出られないという状況になってしまいます。プレーの幅は、もうちょっと広げていかないと今年は3ポイントに関してもキャッチ&シュートは決めていたけど、ドリブルからの3ポイントで決められるかとか、ムービングから決められるようにならないと。今後の課題だと思います。ただ必要以上にやる必要はないと思っていて、自分の役割は最低限やりつつ、使うかどうかは別にして引き出しがあるかないかは大きな違いになると思うので。

やれるけどやらないのか、できないからやらないのかはまったく話が変わるので、そこは自分の中で成長したいポイントとしてオフシーズンを過ごしたいと思います。どういうチームに行ってもどういうチームメイトがいてもある程度プレイタイムをもらえるような選手になっていきたいなと思います」

――今シーズンは、家庭を持たれてのシーズンでしが、そのことがこの先のビジョンなど、影響した部分はありますか?

「そこは今シーズン、自分がまたしっかりやらなきゃいけないなと思えたことでもありました。支える家族が増えたということで、自分がちょっといやらしい話ですけどもお金稼いで、家庭に入れなきゃいけないっていうのもありますし、やっぱり自分たちがこの結婚を発表した時に、あまりネガティブな声も正直あったりで、おそらく僕が感じた以上に奥さんの方が、アスリートの奥さんになるということで、いろいろプレッシャーもあったと思います。これもおそらくですけど、僕がパフォーマンス悪くなった場合、標的はおそらく奥さんになるという不安が自分の中でもあったんで、そういう意味でも、自分がしっかりやらないと奥さんに迷惑をかけるので、しっかりやらなきゃいけないと思いました。

波があった中でも、今までの中で間違いなくベストシーズンだったんで、そういったような奥さんを安心させることができたんじゃないかなと思っていて、本当に今シーズンはいろいろなところですごく助けてもらったんで、最初のシーズン、一緒にできてよかったなと思っています」

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