首位独走の千葉ジェッツを支える攻防の要、原修太の進化

ジェッツの強力ディフェンスの要に

毎シーズン、リーグにはブレイクアウトシーズンを過ごす選手がいる。Bリーグの最たる例は横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝だが、B1首位を独走する千葉ジェッツにも、大きくステップアップした選手がいる。

在籍8シーズン目の原修太だ。

今季は1試合平均10.1得点と、キャリア初の平均2桁得点を記録し、プレータイムもキャリアハイの平均28分9秒。アシストやショット試投数も軒並みキャリアハイで、自慢のフィジカルを生かしたディフェンスでも千葉Jの要となっている。

ジョン・パトリックHCも「プレシーズンからそうですけど、相手のゴートゥガイが1番でも2番でも3番でも4番でも、原をつけるとその選手のリズムを崩してくれます。チームのためにいつも全力でディフェンスをやってくれるので信頼しています」と原により大きなロールを与えてきた。

4月29日のアルバルク東京戦は東地区の1位、2位対決と、チャンピオンシップを占う上でも重要なゲームとなったが、ここでも原のディフェンスが勝敗を左右することとなる。

A東京の司令塔を務める191cmのジャスティン・コブスにマッチアップした原は、コブスに激しく体をぶつけながら、A東京全体のオフェンスをスローダウン。コブス自身には14得点を高いショット成功率で許したものの、デイニアス・アドマイティスHCも「千葉はペリメーターのウィング陣がコンタクトもある非常にフィジカルなディフェンスをするチーム。特に原選手が我々のポイントガードにマッチアップして、そこから封じ込めてきました」と、苦戦を強いられた様子。

セバスチャン・サイズやライアン・ロシターといった手強いビッグマンたちに対して、ジョン・ムーニーが起点となってインサイドの攻防を制したことももちろん千葉J勝利(89-75)の要因だったが、そもそもビッグマンにボールをエントリーする前に原を筆頭としたウィングディフェンダーが立ちはだかったことで、A東京は不用意なミスを連発。いまいち波に乗ることができなかった。まさに、パトリックHCが語っていた原の“起点つぶし”が効いたわけだ。

パトリックHCは原の活躍をかつての教え子に重ねているようで、「昔、私がトヨタ自動車のヘッドコーチをやっていたときに見ていた渡邉拓馬(現京都GM)と同じ感じの役割を彼には与えていて、ヨーロッパで見ていたトーマス・ウォクップ(オリンピアコス)のような感じでもある。原は日本でもそうだけど、ヨーロッパでも活躍できるくらいのディフェンス力を持っています。(チームのディフェンスの)手本になる選手なので非常に助かっています」と、この日も高い評価を与えている。

数字にハッキリと表れるオフェンスの成長

また、前述したスタッツのように、オフェンス面についても大きな進歩を見せている。この試合は7得点、1アシストと特筆すべき数字は残していないが、A東京がリズムをつかみかけた場面での得点など、数字以上に価値のある得点を決めていた。在籍9シーズン目でチーム最古参の西村文男は、そんな原をルーキー時代から見てきた選手。その西村は原の活躍について「より今年のスタイルの方が原には合っている」と前置きしつつ「元々、彼はどうすれば生き残っていけるのか、どうすれば活躍できるのかを考えながらやってきた選手なので、成長というか、元々ポテンシャルもあった中で、年齢も重ねて脂も乗ってきたことでそれを発揮してきているんだと思います。今年の方がより自由に点を取りにいっているし、その意識も高くなっています。それで結果が出てきているのかなというイメージです」と分析する。

オフェンスでの原のスタッツをさらに細かく見てみると、ここまでの総得点は567得点で、昨季までの最大だったら2020-21シーズン(357得点)を200以上上回っている。さらに、西村の「自由に点を取りにいっている」という言葉通り、フィールドゴール試投数461、成功数198はいずれも昨季の倍近い数字(同232、102)。3Pシュートに関しては昨季から3倍近く放ちながら成功率もアップさせている(89本/30.3%→254本/33.1%)。フリースローの試投数やファウルドローン(ファウルを受けた回数)も倍増しており、いかに原がアグレッシブに攻めているのかが分かる。

選手の貢献度を数値化した±の数値もクリストファー・スミス(+591)に次ぐ+554となっており、単純計算で原がプレーしている時間帯は平均10点も相手よりリードしていることになる。

攻防に優れたパフォーマンスを残す原は、間違いなく今季のブレイクアウト選手の1人。NBAで例えるのなら、その活躍はリーグ屈指のパワーガードとして1〜4番までをハイレベルに守り昨季、最優秀守備選手賞を受賞したセルティックスのマーカス・スマートのようだ。残す3試合、そしてチャンピオンシップでも原の活躍から目が離せない。

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