情報があふれているこの世の中で、調べものをするときはインターネット検索が便利ですよね。
調べれば何でも出てきて、すべてがわかる気がします。
しかし本当にそうでしょうか。
意外と地元のひとしか知らない、インターネット上にない情報や埋もれて見つからない場合もありますよね。
観光地 倉敷美観地区にはそんな情報がたくさん。
メジャーな情報もコアなものも教えてもらいながら倉敷美観地区を巡りたいなら「倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会(以下、KWG)」を訪ねるのが一番です。
豆知識を知っているとより観光が楽しくなるもの。
毎日実施されている定期観光便のツアーに、倉敷出身の筆者が参加しました。
筆者にとって倉敷美観地区は庭のような存在ですが、初めて知ることがたくさんでしたよ。
倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会とは
倉敷美観地区でボランティアの観光ガイドをしている倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会(KWG)。
活動は1990年からと、30年以上の歴史があります。
2023年4月現在、42名のガイドが在籍しており、うち18名が英語での案内も可能。
倉敷美観地区にはKWGとは別のガイドがいます。
KWGの特徴は「青い帽子、青いシャツやジャケット」です。
活動開始から2023年2月までに約38万人もの観光客を案内してきた実績があります。
ガイドはボランティアですが、「試験」にクリアしなければデビューできません。
▼デビューするまでのステップ
- 入会希望届を提出
- 2か月間の研修を受講
- 実地試験:ボランティアガイドのメンバーを観光客に見立て、観光案内
- 筆記試験
- 月1回の定例会で承認
- 承認の翌月にデビュー
研修中は、ボランティアガイドとして活躍している先輩のツアーに計8回参加をします。
デビューするまで時間も労力も必要です。
晴れてガイドになれても、1か月に5回以上のガイドをし、月1度の定例会に参加をしなければなりません。
ボランティアですが、プロ級の厳しさ。
熱意がないとできませんね。
ツアーについて
KWGのツアーは大きく分けて三つあります。
- 定期便ガイド・・・無料
- ふれあい ・・・無料
- 予約ガイド ・・・有料
それぞれ紹介します。
定期便ガイド
定期便ガイドの特徴をまとめます。
定期便ガイドはある程度決まったコースでおこなわれます。
集合場所は倉敷館観光案内所です。
ふれあい
ふれあいは定期便ガイドと開始時間・所要時間は同じです。
異なる点は、ガイド自らが観光客に声をかけて、ツアーをおこなうこと。
声がけの場所は決まっていないので、当然ツアーの出発地点やルートもさまざまです。
予約ガイド
予約制のツアーで、対象は一般客のほか、ツアー会社に参加するひとびとです。
所要時間やコースは自由に設定できるので、希望するものがあるなら予約ガイドがおすすめ。
定期便ガイドに参加しました
倉敷館観光案内所からスタートする、定期便ガイドに参加しました。
ガイドはKWGの会長 髙橋泰雄(たかはし やすお)さん。
福岡から来られた2名のかたと一緒に巡りました。
「大正6年に建てられた倉敷観光案内所は、町役場としてスタートしました。目の前に倉敷川が流れていますね。こちらは昔海水が流れていたんですよ」と話す髙橋会長。
倉敷の歴史に触れながら、細かい部分に目を向けます。
「観光地 倉敷美観地区で唯一、観光とは関係のない事業をする大山日ノ丸証券倉敷支店」と小ネタを披露しながら紹介したのは黒板。
「当面の相場見通し」を毎月手書きで書かれているそうです。
確かに観光地には無縁そうな内容ですが、わかりやすくまとめられ、何より字の美しさに感動します。
大原孝四郎(おおはら こうしろう)の別荘として建てられた新渓園を巡ったときには、日本庭園の敷石の豆知識を教えてもらいました。
丸い形をした石の正体は石臼(いしうす)なんだそう。
使い込んで溝が浅くなった石臼を捨てるのはもったいないと、敷石にしたのだとか。
ツアー日は月曜日で、大原美術館は休館日でした。
髙橋会長は臨機応変に、外から見える範囲での案内を。
定期便ガイドはルートが決まっているものの、ガイドや日によって案内内容が変わるようです。
ツアーの後半は倉敷アイビースクエアへ。
かつて紡績工場だった倉敷アイビースクエアは現在、複合施設になっていますが、当時の面影は多く残っています。
たとえば昔は作業場で、現在は広場となっているところ。
床面の石の部分には、重たい機械が置かれていたそうです。
他にも驚きと感動の連続の案内を受けましたが、紹介はこれくらいにしましょう。
巡るだけではなかなか気付けない細かい点にも目を向け、知識を得ると、倉敷美観地区がより魅力的な町に感じられました。
地元のひとも知らない情報を多く知るKWGのガイド。
会長 髙橋泰雄さんに話を聞きました。
観光地 倉敷美観地区に訪れる観光客を案内する、倉敷地区ウェルカム観光ガイド連絡会(KWG)。
日本人だけでなく外国人も案内しています。
ボランティアですが、意識・ツアー内容はプロそのもの。
会長の髙橋泰雄(たかはし やすお)さんにインタビューをしました。
どんなお客様にも対応したい
──お客様の年齢層は幅広いのですか?
髙橋(敬称略)──
ご高齢のかたから小学生までいます。
お客様によって町の見方や求めているものが違うので、相手に合わせて案内しています。
予約ガイドだと柔軟な対応が必要です。
たとえば小学生を案内するときは、頭を使いますね。
大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)や児島虎次郎(こじま とらじろう)などの歴史を交えつつ、興味を持ちそうな話もします。
クイズの用意もして、楽しんでいただけるよう工夫していますよ。
ガイドをし過ぎないことも大切ですね。
お客様との会話を楽しみながらガイドをしています。
今まででもっとも印象に残ったガイドは20分で案内するよう旅行会社から依頼されたときですね。
通常1時間かけて巡りたいコースをどう短縮するか。
旅行会社の担当のかたを本番前に案内して、3回目でOKをもらいました。
しかし私たちは、まだより良い案内ができると思って。
満足できるまで繰り返し練習をし、磨きをかけました。
どのようなかたやパターンにも対応できるようにしたいですし、知らないものがあればすぐ勉強します。
よりよいガイドをするために勉強を欠かさない
──勉強は欠かせないですか?
髙橋──
勉強はずっとしないといけませんね。
ガイドをしてわからないことがあると、すぐ図書館に行って資料を探していますよ。
英語対応のガイドは、カナダのかたから月2回英語を教わっています。
2019年に1年間で1,200名ほどの外国人観光客を案内しました。
2,000名を超えるのを目標としているので、英語の勉強も頑張ります。
ボランティアでもプロ意識を持つ大切さ
──どのような想いで活動をされていますか?
髙橋──
活動はボランティアですが、プロ意識を持たなければならないと思っています。
お客様に楽しんでいただき、おもてなしをしなければなりません。
相手のかたに喜んでいただくには、まず自分が楽しむのが大切ですね。
我々の活動の原動力は「みんなに喜んでいただきたい想い」と「自分も倉敷美観地区に興味がある」点です。
好きだと勉強も楽しくできます。
ガイドを終えたときに、拍手や「また倉敷に来ます!」と言っていただけると大変うれしいですね。
活動の原動力になっています。
他には、ガイド自身の健康のためにもなるんですよ。
平均年齢が70歳なので、ひとと会って話をして、勉強もして、老化防止に。
今後の目標
──今後の目標はありますか?
髙橋──
我々の存在を知っていただけるよう、PRにもっと力を入れたいですね。
これまでホームページで宣伝していたのですが、2022年からはInstagramを始めました。
Instagramのサロンを立ち上げて、自分たちで写真を撮って投稿しています。
まだうまく扱えていないんですけどね。頑張っています。
多くのかたを案内して、ガイドみんながしっかり活動できるようにしたいです。
おわりに
取材を通して、本当に無料でいいのかと思うほどツアーの内容は充実し、ガイドすることへの意識の高さに驚かされました。
相手の喜ぶ姿を見たいからと、自分の時間と労力を使って案内をするKWGのみなさん。
高い意識と熱い想いを持って、理念の「尽くして求めず」を実行されています。
なかなかみんなが真似をできることではないとツアーに参加し、感じました。
ノルマはありませんが、将来出会う観光客へより良いガイドをするために勉強も欠かせません。
実際に、定期観光便に参加すると、倉敷美観地区がより魅力的に感じ、紹介された施設に足を運びたくなりました。
何気なく見える景色や建物にもすべてに意味、歴史があると気付くこともできます。
たった1回のツアーで得られる情報量はインターネット検索だけではなかなか追いつかないどころか、見つからないかもしれません。
倉敷をより深く知り、好きになりたいかたはぜひ参加してみてくださいね。