SUP水難事故、神奈川県内で急増 「沖から帰れず」9割、準備・知識不足も

「安全意識の高いところで学んでほしい」と訴える安さん=葉山町一色のSUPスクール「パドル葉山」

 ボードの上に立ち、パドルをこいで水上を進むスタンドアップパドルボード(SUP)の人気が年々高まる中、県内で事故が急増している。県警では暖かくなる5月のゴールデンウイーク(GW)や夏場に向けて警戒を強めている。各関係団体も独自にインストラクターの資格制度を設けるなど対策にも乗り出している。

 県警地域総務課によると、2022年の水難発生件数は37件と前年とほぼ変わらなかったが、そのうちSUPは前年から3倍増となる9件を占めた。SUP中の水難者数も過去最高の21人に上り、うち2人が死亡する事故につながった。

 昨年8月に横須賀市の津久井浜沖で亡くなった50代の男性は、前日にインターネットでボードなどを購入していた。ボードと足をつなぐ「リーシュコード」を装着せず、ライフジャケットも着用していなかった。同11月に鎌倉市の七里ケ浜沖で亡くなった60代の男性もライフジャケットを装着していなかった。

 海上保安庁によると、事故の内容別では風浪などの影響で沖合に流され、自力で帰れなくなるケースが9割近くを占めるという。県警地域総務課の担当者は「どこでもできる手軽さから愛好家が増えているが、適切な準備を怠り、技能と知識不足から残念な事故につながった」と強調する。県警ではライフジャケットの着用や単独行動を控えるリーフレットを作製し、SUPスクールなどを通じて注意喚起を促しているという。

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