開門問題に終止符を

 新たな段階に入るのだろうか。この春、諫早湾干拓をめぐる訴訟で、開門の強制執行を認めないとする判決が最高裁で確定。農水省は大臣談話で、今後も訴訟が乱立すれば「地域の分断の解消が遠のく」として、国や自治体、農・漁業関係者らによる「話し合いの場」の設定を提案したのだ▲国は対立の長期化を招いた“張本人”のはずだが、どの口が言うのか。そんな思いはあるが、有明海と周辺地域の未来を切り開くための協議には大いに賛同したい▲開門派が先日、諫早市で開いた集会でも対話に向けた意見が交わされた。「近くの神社でもいい。地域の祭りなどを干拓地や漁業者のみんなで寄り添って始められないか」「しがらみのない若者も交えて懇談会を開けないか」▲非開門派の集まりへの参加を促すような声も。「これまで(諫干)事業推進派が開く地域活性化イベントなどには足を踏み出せなかったが、何はともあれ、接する機会をもつことは大事なのかな」▲かつて取材現場で出会った人たちは開門派も非開門派も、豊かな海と分断のない地域の再生を心から望んでいた。開門か否か、この一点を除けば市民の思いは同じなのだ▲漁業者は高齢化し、有明海の伝統漁法も衰退の危機にある。腹を割った話し合いで解決策を何とか導き出してほしい。(真)

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