“悲劇を繰り返さない” 通園バスに設置義務化「置き去り防止装置」の仕組みとは?

暑さが本格化するこれからの時期、特に注意が必要です。車の中に子どもが置き去りにされるのを防ぐため、幼稚園や保育所で対策が進められています。

お母さんに見送られ、子どもたちが乗り込むバス。愛媛県松山市のコイノニア幼稚園では4月、2台の通園バスに“ある安全装置”が取り付けられました。

エンジンを切ると車内に流れるアナウンス。バスの一番後ろにあるボタンを押すと…

先生や運転手がバスの一番後ろまで移動する必要が生まれ、子どもの置き去りを防ぐという仕組みです。

コイノニア幼稚園 教諭 「機械が付かなくても確認することは当たり前でしたけど、機械が付くことによって二重で安心ではあります」

また、助手席の後ろにある非常ボタン。万が一、子どもが取り残されてしまった場合、これを押すことで車の外に大きな音が流れ、中にいることを知らせてくれます。

幼稚園と保育所などの通園バスを対象に、4月から1年間の猶予付きで設置が義務化された置き去り防止装置。

背景には、全国で相次いだ痛ましい事故がありました。おととし7月には福岡県の保育所で5歳の男の子が、去年9月には静岡県の幼稚園で3歳の女の子が、いずれも送迎バスに取り残され、熱中症のため命を落としました。

置き去り防止装置を導入したコイノニア幼稚園の三好園長は、大人による見守りが一番重要だと強調します。

コイノニア幼稚園 三好久美子園長 「私たち関係者がしっかりと子ども一人一人を取り残さないように見守ることが一番大事だと思っていますが、さらに装置による確認によって安心感は増したと思います」

では、実際にエンジンを切ったバスの車内はどうなっているのでしょうか。記者が乗ってみました。

記者 「かなり蒸し暑いですね。30分程度停車した後なんですけれども、かなり蒸し蒸ししていて、息苦しさを感じます」

この日は4月で、曇っているため外の温度は20度前後とそれほど高くないものの、わずか30分で車内の温度は30℃近くまで上昇していました。

暑さが厳しくなるこれからの時期、エアコンが効いていない車内の温度はさらに上がり、リスクが高まります。

安全装置は、見落としを防ぐためセンサーで人を検知するタイプもあります。取り付け業者が作業を行ったのは、松山東雲学園付属幼稚園の通園バス。車内に人がいるのを超音波式のセンサーが感知すると警告音が流れる仕組みになっていて、バスの外側に取り付けられたスピーカーから大きな音が流れて異常を知らせてくれます。

松山東雲学園付属幼稚園 田中洋子園長 「安心感の1つにはなると思います。今まで通り目で確かめる、複数の目で確認することは大切にしていきたい」

装置を販売している業者は、設置が義務化された4月以降、問い合わせが殺到していると話します。

設置業者 デンソーサービス西条事業部 安藤朋晃部長 「2月から問い合わせはあったが、やはり4月から義務化されたこともあり、そこからは毎日問合せがある状況。4月だけで60台の受注をもらって40台の取り付けが完了した」

これから気温が高くなっていく季節。国は6月末までの機械の設置完了を目標とするよう、全国の自治体に呼びかけています。

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