ハンセン病文学 心打つ言葉を今に 詩集70年ぶり復刊 東京で企画展

企画展に合わせて復刊された詩集「いのちの芽」

 瀬戸内市の長島愛生園や邑久光明園など全国8カ所のハンセン病療養所に入所する73人が参加し、1953年に刊行した初の合同詩集「いのちの芽」をテーマにした企画展が、東京都東村山市の国立ハンセン病資料館で開かれている。70年ぶりに詩集を復刊したほか、作品を紹介し、隔離政策の不条理に直面しながらも社会への希望や連帯を求める入所者たちの思いを今に伝えている。7日まで。

 「いのちの芽」は、療養所の詩サークルと交流があった詩人・大江満雄(1906~91年)の呼びかけで作成された。愛生園と光明園からはそれぞれ11人が計66作品を寄せている。企画展は刊行から70年の節目を記念し、22人の25作品を紹介。発刊を巡る大江と入所者とのやりとりを記した自筆書簡など関連資料も並べている。

 愛生園に入所した志樹逸馬さん(17~59年)の作品「芽」は詩集のタイトルに通じるテーマを扱った。〈腐敗する大地のかなしみを吸って 明日への希(こいねが)いにもえる〉との表現から将来への希望がうかがえる。

 光明園の入所者だった堂崎しげるさん(23~2002年)は「玉」と名付けた作品に前向きな思いを込めた。〈発掘されたら いつでも ピカピカ光りたい そう思って懸命に 私は何物かを磨いている〉

 詩集の刊行は、患者の強制隔離政策を継続するための「らい予防法」制定を巡り全国の療養所入所者が反対運動を繰り広げていた時期。治療薬の登場でハンセン病が治る時代を迎え、自らの境遇を「宿命」と諦めるのではなく、未来は変革できるものと捉える人たちが詩を寄せている。木村哲也学芸員は「ハンセン病文学の『新生面』に位置づけられる。いずれも心を打つ作品で、それらから何か一つでも自分にとって大切な言葉を見つけてほしい」と話す。

 入場無料。詩集は2千部限定で来館者に無料配布している。問い合わせは同資料館(042―396―2909)。

© 株式会社山陽新聞社