「僕の心のヤバイやつ」堀江瞬 インタビュー

「今は“外部の声”よりも“内部の声”を考えるのが先です」

重度の“中二病”を抱えた陰キャ男子・市川京太郎と、スタイル抜群で天真爛漫な陽キャの山田杏奈。ある日、山田の意外な一面を目撃した市川は、次第に彼女から目が離せなくなり…。じれったいほどゆっくりと近づく中学生の男女の姿を描いた「僕の心のヤバイやつ」。「応援したい」、「甘酸っぱい」と評判を呼び、コミックス累計発行部数が300万部を突破している青春初恋ラブコメが、アニメ化され、テレビ朝日系で現在放送中だ。市川を演じるのは、繊細な演技に定評がある堀江瞬。今回は、堀江に市川の役作りや市川との共通点について語ってもらった。

――原作はご存じでしたか?

「知っていました。ファンの方から原作コミックを送っていただいたことがあったんです。『今後、アニメ化されるとしたら、ぜひこの子(市川)の声を堀江さんにやってほしい』って。それが原作との出合いです。読んでみて、新しいタイプのラブコメだと思いました。ひねくれ者の市川と、はつらつとした王道・女の子の山田の組み合わせがすごく斬新に感じられたんです」

――しかも、ヒロインの山田は“陽キャ”で天真爛漫で、どこか少年のようなところがありますよね。

「そうですね。山田は、“陽キャ”であってもギャルではない。その人物像も新しいなと思いました」

――実際に原作本を読まれて、“市川を演じたい”と思われましたか?

「普段からあまり、“この役をやりたい”と思いながら作品を読むことはないんです。期待してもそうならないことも多いですし、できる限り自分を傷つけたくないので…(笑)。作品に触れる時は、情報をすごくシャットダウンするんです。“僕がオーディションで落ちたあの作品のあのキャラクター、キャストはあの人になったんだ…”という情報を見ても、すぐにシャットダウン(笑)。それに、この作品がアニメ化されるとしたら、市川は絶対に女性の方が演じるだろうなとも思っていました」

――それはなぜですか?

「市川は、声変わり前である描写がはっきりあるからです。僕が市川を演じるとしたら、声変わりをした後だろうと思っていました。なので、一次審査のテープオーディションに受かってスタジオオーディションに行った時も、まったく期待していなかったんです。合格のお知らせを頂いた時は、うれしいというより呆然としてしまいました。声変わり前の少年の繊細さやナイーブさを、もう声変わりしてしまった僕が表現できるのだろうかと…」

――堀江さんは幼いタイプの少年役も多く演じていらっしゃるので、意外です。

「確かに、幼いタイプの子を演じさせていただくことも多いですが、地声はハスキーなんです。声変わり前のあの感じって、成人した男が演じるとどうしても“養殖もの”になってしまいます。女性の方が演じても、それは決して天然ではないんですけど…。ただ、やっぱり男が出す幼少期の男の子の声と、女性が出すそれは圧倒的に違うんです。市川を演じる上では、できる限り自然に近い声で演じたいと思っていました。そこで、声そのものを変えて演じるのではなく、声の出し方を変えるようにしました。自分の変声期前の感覚を思い出したり、小学生の男の子がやっているYouTubeを見たり。なるべく本当のローティーンの男の子の声に近づけるよう、研究して演じています」

――「僕の心のヤバイやつ」のように原作がある作品では、既にファンの中に声のイメージが形作られていることも。そうした意味で、気を付けていらっしゃることはありますか?

「昔は“みんなは、このキャラクターが出す声をどんなものだと思っているんだろう。どういう声を求めているんだろう”とすごく気にしていました。でも最近は、あまり気にしなくなりました。今は“外部の声”よりも“内部の声”を考えるのが先です。“こういう子だから、こう考えていて、こんな声なんだな”って。最近は、そういったお芝居の組み立てにハマっているんです。それが、今の僕のやり方に合っているのかなと」

――市川は重度の“中二病”。原作の序盤を読んだ時は、“危ない子なのかな?”と思ったのですが…。

「市川は純粋ですよね。とはいえ、心がプラスに傾いている人間ではなくて、そこは僕と似ているので共感できます。ただ、市川はネガティブに向いている気持ちをいったん置いて、行動に移すことができます。困っている山田(羊宮妃那)を助けるため、自分の自転車をバーンと投げるとか。その後、自分がどう思われるか気にしないんです。その行動力は僕と全然違っていて、カッコいい子だと思います」

――そんな市川ですが、山田と近づくうち、まとっていた殻を脱いでいきます。

「山田ももちろんかわいいんですけど、物語が進むと、市川もめちゃくちゃかわいく思えてくるんです。やっぱり頑張っているからでしょうね。男が見ても、みんな“市川、かわいい”ってなると思います。それが、この作品の面白いところです」

――市川は山田を「違う世界の人間」と表現しますが、それでも2人はどんどん近づいていきます。

「2人の根底に“近づきたい”、“交わりたい”っていう気持ちがあるからでしょうね。最初は、その気持ちが“好き”という感情だと自覚していなかったとしても、何か気になって、仲良くなってみたいと思っています。恋愛ではなく友情であっても、仲良くなりたいと思えば、違う世界の人だと感じても、一歩踏み込んでみようと思うものですよね」

――堀江さんご自身もそうですか?

「僕は、人と本当に接していなくて…(笑)。アフレコが終わったらすぐに帰っちゃうんです」

【プロフィール】

堀江瞬(ほりえ しゅん)

5月25日、大阪府生まれ。AB型。7月スタートのアニメ「彼女、お借りします」第3期(TBS系)に出演。テレビアニメ新シリーズ「ポケットモンスター」(テレビ東京系)などに出演中。

【作品情報】

「僕の心のヤバイやつ」
5月6日
テレビ朝日系
毎週土曜 深夜1:30~2:00

原作は、累計発行部数300万部を突破している桜井のりおの人気漫画。重度の中二病を抱えた市川(堀江)と、スタイル抜群のクラスメイト・山田(羊宮)が近づく様子を丁寧に描く。自転車の2人乗り、職業見学などの学校行事で距離を縮める2人の初恋の行方は!?

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取材・文/仲川僚子 撮影/興梠真穂 ヘアメイク/竹内奈奈(M’s hair&make-up) スタイリング/青木紀一郎 衣装協力/ALBERTO FASCIANI/ディファレントリー池袋東武店、DRESS HIPPY/ノーネーム

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